「日本一リスクが高い」活断層とアナウンスしても地域住民は「知らなかった」 地震と防災「周知」の課題とは
日本では大地震はどこでも起きる可能性がある。どこでどの程度の規模の地震が起こりうるか、国の地震対策本部は「活断層地震」のリスク評価を公開している。だが、住民への周知には大きな課題があるという。
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リスクをどう注意喚起するか
今後起こりうるかもしれない地震については、リスク評価やシミュレーションをもとに、住民への周知も行われている。
「地震のリスクが高いことがわかっていても、住民に注意喚起することは非常に難しい」
そう話すのは、産業技術総合研究所(産総研)の活断層・火山研究部門で副研究部門長を務める宮下由香里さんだ。
宮下さんが難しさを実感したのは、2016年4月の熊本地震に際してだった。
熊本地震は、阿蘇山付近から八代海にいたる布田川(ふたがわ)断層帯と日奈久(ひなぐ)断層帯の一部がズレ動いて発生した。
国の地震調査研究推進本部(地震本部)が13年に日奈久断層帯(八代海区間)の今後30年以内の地震発生確率を公表した際、数値は最大で16%だった。
「当時、日本一地震発生確率の高い活断層でした」(宮下さん、以下同)
「そんな活断層があるとは知らなかった」
地震発生確率の公表にともない、熊本県は地域防災計画を改定。市町村も被害想定やハザードマップを刷新した。地震の危険性が高いことは回覧板などで個々の住民に伝えられた。15年には、西日本新聞が「日奈久断層帯、発生確率は全国一」と報じ、リスクの高さを強調した。熊本地震が発生したのは、その翌年、16年のことだ。
だが、震災後、現地を調査した宮下さんは、シビアな現実と向き合うことになる。
事前に周知活動を行ったにもかかわらず、「そんな危険な活断層があるとは知らなかった」という住民が多かったのだ。
「九州は地震が少ないので、危機感を持っていただけなかったのかもしれません。注意喚起について、難しい課題を突きつけられました」
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地震本部は、日本列島に数千存在するといわれる活断層の中から全国114を指定して「主要活断層帯」の長期評価(地震の長期的な発生の予測)を行い、危険度がわかりやすいように、「S」「A」「Z」「X」の四つのランクに分けて注意をうながしている。今後30年以内の地震発生確率が3%以上は「Sランク」、0.1~3%未満は「Aランク」、0.1%未満は「Zランク」、不明(すぐに地震が起きることが否定できない)は「Xランク」だ。
現在のところ、確率が最も高いのは糸魚川-静岡構造線断層帯の中北部区間(長野県安曇野市から同県茅野市)で、今後30年の地震発生確率は14~30%とされている。断層帯の上には長野市に次ぐ県内2位の人口の松本市や、県内全市町村で最も人口密度の高い岡谷市がある。
その次に高いのは、同じ糸魚川-静岡構造線断層帯の北部区間(同県小谷村から同県安曇野市)で、0.009~16%。
熊本地震前にわかっていたら
熊本地震を引き起こした日奈久断層帯(八代海区間)は、現在も3番目にリスクが高い(ほぼ0~16%)。宮下さんらは熊本地震で割れ残った布田川断層帯と合わせて調査を行ってきた。
「この二つの断層は、日本で一番詳しく調べられた活断層だと思います」
活断層を掘削調査して、過去の地震の周期が判明すると、次の地震の時期を推定できる。
「熊本地震後、さまざまな地点で布田川断層帯(布田川区間)の調査を行ったところ、約2000年に1回、地震を起こしてきたことがわかった。これが熊本地震前にわかっていたら、注意喚起の仕方も違っていたかもしれません」