決算レポート:エヌビディア(2026年1月期3Qは「Blackwell」本格出荷で業績好調)

本レポートに掲載した銘柄:エヌビディア(NVDA、NASDAQ)

1.エヌビディアの2026年1月期3Qは62.5%増収、64.7%営業増益。

 エヌビディアの2026年1月期3Q(2025年8-10月期、以下今3Q)は、売上高570.06億ドル(前年比62.5%増)、営業利益360.10億ドル(同64.7%増)となりました。今2Q比でも売上高22.0%増、営業利益26.6%増となりました。

 今3Qは、今2Q決算発表時の会社側ガイダンス、売上高540億ドル(同53.9%増)、営業利益336.80億ドル(同54.0%増)を上回りました。新型AI半導体「Blackwell」(2025年後半に出荷開始となった「Blackwell Ultra」を含む)が好調で大幅増収増益となりました。1年前に主力だった「H100」「H200」に対して「Blackwell」は価格が高いため、単価上昇が好業績の要因となったと思われます。

 会社側によれば、コンピュート(AI用GPU)売上高430.28億ドルのうち「H100」「H200」等の「Hopper」は今3Q約20億ドルでした。これ以外の約410億ドルが「Blackwell」になりますが、このうち3分の2が最新型の「GB300」(「Blackwell Ultra」2個とGrace(エヌビディア製CPU)1個を組み合わせたもの)で、これまで主流だった「GB200」を抜きました。

 市場別売上高を見ると、データセンター向けは今2Q410.96億ドル(前年比56.4%増)から今3Q512.15億ドル(同66.4%増)へ増加しました。このうち、コンピュートは今2Q338.44億ドル(同49.7%増)→今3Q430.28億ドル(同55.7%増)と増加しました。また、AIシステムのネットワーク機能強化に伴って、ネットワーキング(通信機器等)が今2Q72.52億ドル(同97.7%増)→今3Q81.87億ドル(同2.62倍)と伸びました。

 今3Qの売上総利益率は73.4%となり今2Q72.4%から改善しました。

表1 エヌビディアの業績

株価 180.64ドル(2025年11月20日) 時価総額 4,394,429百万ドル(2025年11月20日) 発行済株数 24,483百万株(完全希薄化後、Diluted) 発行済株数 24,327百万株(完全希薄化前、Basic) 単位:百万ドル、%、倍 出所:会社資料より楽天証券作成。 注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。 注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。

注3:会社予想は予想レンジのレンジ平均値。

表2 エヌビディアの市場別売上高(四半期)

単位:百万ドル、% 出所:会社資料より楽天証券作成

表3 地域別売上高

単位:100万円 出所:会社資料より楽天証券作成。

注:2026年1月期3Qより従来の仕向け先別売上高から本社所在地別売上高に変更された。

表4 エヌビディア:四半期業績の詳細

単位:100万ドル 出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

2.「Blackwell」の好調が続こう。「Rubin」は2026年後半に本格出荷へ。

 会社側の今4Q業績ガイダンスは、売上高650億ドル±2%、売上総利益率74.8%(GAAP(一般に公正妥当と認められた会計原則)ベース、エヌビディアは米国会計基準、以下同様)、研究開発費を含む販管費67億ドル、営業外収支は5億ドルのプラス、税率17%±1%です。

 ここから計算すると、会社側の今4Q業績ガイダンスは、売上高650億ドル(前年比65.3%増)、営業利益419.20億ドル(同74.4%増)となります。また、当面は「GB300」の好調が続くと思われますが、2026年後半には次世代機「Rubin」が本格出荷になる予定です。

 これらの要因を考慮して、楽天証券では、2026年1月期を売上高2,128億ドル(前年比63.1%増)、営業利益1,280億ドル(同57.1%増)、2027年1月期を売上高3,140億ドル(同47.6%増)、営業利益1,990億ドル(同55.5%増)と予想します。

 会社側は2026年1月期、2027年1月期の「Blackwell」「Rubin」売上高の合計が約5,000億ドルになるとしています。これはエヌビディアの現在の受注に基づく予想ですが、私はそれよりも控えめな予想をしました。

 今のエヌビディアを取り巻く環境とエヌビディアの開発力、販売力を考えると、今期、来期と好業績が続くと予想されますが、リスクもあります。

1)2026年にTSMCが先端分野のウェハ価格を5~10%値上げする見込み。

 2026年にTSMCが先端分野(5ナノ未満)のウェハ価格を5~10%値上げする見込みと報道されています。エヌビディアは「H100」「H200」はTSMC4ナノ(5ナノの拡張版)で生産していますが、「Rubin」からはTSMC3ナノに移行すると思われます。この微細化の進展と値上げが重なることになります。会社側は70%台半ばの売上総利益率を目指していますが、実現のハードルは高いと思われます。

2)「Rubin」の価格がいくらになるか不明。

 前述したように、今3Qの大幅増収増益は「H100」「H200」に対して「GB200」「GB300」の価格が上昇したことによるものが大きいと思われます。日本での税込み価格は、「H100」500万円台前半、「H200」500万円台後半、「B200」700万円台後半です(大手IT企業のAIサーバー見積もりシミュレーターにおける料金目安より)。ここから推定すると「GB200」は日本で売れば900万円前後、「GB300」は900~1,000万円と思われます。「H100」と「GB300」は推定で単価が2倍近く上昇していることになります。ただし、「Blackwell」が発表された2024年3月の時点では、「Blackwell GPU」は1個3~4万ドルとされていました。今の価格はこのときよりも安くなっており、コストパフォーマンスが良くなっています(「B200」はBlackwell GPUを2個搭載。「GB200」はBlackwell GPUを2個、GraceCPU1個を搭載)。「Blackwell」の人気は、絶対的な性能の高さに加えこのコストパフォーマンスの良さにあると思われます。

 今後の注目点は、「Rubin」の価格です。「Rubin」でもコストパフォーマンスを追求するなら、「Blackwell」と「Rubin」の価格差は、「H100」と「GB300」との価格差ほど大きくないかもしれません。「Blackwell」と「Rubin」の価格差が小さい場合、エヌビディアの2027年1月期、2028年1月期は業績の伸びが鈍化する可能性があります。

3)AI半導体ユーザーの資金問題。

 会社側によれば、エヌビディアのユーザーには2つの流れがあります。一つは大手クラウドサービス事業者(アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、アルファベット、オラクルなど)であり、もう一つはオープンAI、アンソロピック(これまではエヌビディア製AI半導体を使ってこなかったが、11月にマイクロソフトとエヌビディアがアンソロピックに合わせて最大150億ドル出資すると公表した。このため、今後アンソロピックはエヌビディア製AI半導体のユーザーになると思われる)などの大手AI開発・運営会社です。ただし、大手クラウドサービス会社の大手顧客はオープンAI、アンソロピックなどの生成AI開発・運営会社なので、生成AI関連の巨額投資の元をたどれば、多くがオープンAIを中心に生成AI開発会社と言えます。これ以外に企業ユーザーもいますが、規模が小さいと思われます。

 これらの会社は売上高は急増していますが、それを上回る設備投資、開発投資を行っているため、大赤字の状態が続いています。従って、AI半導体、AIサーバー、AIデータセンターへの大型投資が継続するには開発資金が途切れないことが重要になりますが、今のところこの開発資金は集まっています。この中にはエヌビディアがオープンAIに提供する最大1,000億ドルの資金も含まれることになります。

 エヌビディアは、生成AIを使った様々な事業によって、これらのAI半導体ユーザーがいずれは自己資金で巨額設備投資の資金を賄えるとしています。しかし現時点では、生成AI開発・運営会社各社はエヌビディアを含む外部からの資金調達で巨額の設備投資、開発投資を行っています。このことに注意したほうがよいと思われます。

表5 エヌビディアの市場別売上高(年度)

単位:百万ドル、% 出所:会社資料より楽天証券作成

3.今後6~12カ月間の目標株価は前回の180ドルから210ドルに引き上げる。各種のリスクに注意したい。

 エヌビディアの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の180ドルから210ドルに引き上げます。 好業績によって株価が割安になっていると思われるため、短期では戻りが期待できると思われます。

 ただし、長期では前述したような様々なリスクがあります。リスクを付け加えると、エヌビディアは米国の株式市場を代表する超大型株であり、金利、相場動向、株式市場のセンチメント(心理的状況)などにも株価が左右されるようになったと思われます。時価総額(約690兆円)が大きくなりすぎて、成長性だけでは必ずしも評価されなくなってきたのではないかという疑問があるのです。

 長期保有する場合は、様々なリスクに注意する必要があると思われます。

本レポートに掲載した銘柄:エヌビディア(NVDA、NASDAQ)

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