2026年は「スーパーエルニーニョ」発生の可能性、NOAA予測
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エルニーニョがこの春から夏にかけて始まる可能性が高まっているという米海洋大気局(NOAA)の予測を受けて、2026年は強力な「スーパーエルニーニョ」が発生する可能性があるとの見方が予報担当者のあいだで強まっている。このエルニーニョは、少なくとも過去10年間で最も勢力の強いものとなり、一部地域では過酷な干ばつを、また別の地域では激しい嵐を引き起こし、さらには地球の気温を上昇させる恐れがある。
NOAAの4月9日付けの発表によると、太平洋の表面の海水温が平年より少なくとも2℃以上高くなる「非常に強い」エルニーニョとなる確率は25%で、1.5℃超の「強い」エルニーニョ以上になる確率は約50%と見込まれている。
これほど早い段階で、非常に強いエルニーニョが起こる確率が25%もあるのは異例のことだと、NOAAのエルニーニョ・南方振動予測チームの一員である米マイアミ大学の研究教授エミリー・ベッカー氏は述べている。ただし、春に発表される予測では「コンピュータモデルが、熱帯太平洋で実際に観測されるよりもかなり高い数値を出す」傾向があるという。
非常に強力なエルニーニョが起こるかどうかは、秋の始めには判明するだろうとベッカー氏は言う。
一般に2年から7年ごとに発生するエルニーニョ現象は、地球規模の気象を変化させ、過去に例のない極端な現象をもたらすため、しばしば混乱を招くとみなされる。一方、一部にはこれを逆説的にとらえ、今後起こることに備える好機とみなしている科学者もいる。
「エルニーニョが起こると、地球の大気に影響が及ぶため、どこで何が起こるかを予測できる確率が高まります」とベッカー氏は言う。「将来起こりうる事態を見通す力を得られることが、われわれにとって大きなアドバンテージとなるのです」
この自然に繰り返される気象パターンは、大量絶滅が起こったペルム紀末など、数億年にわたって地球の気候を変化させてきたと考えられている。一回の継続期間は一般に9カ月から12カ月だ。
エルニーニョ現象の発端は熱帯太平洋にある。この海域では通常、風が東から西へ吹き、暖かい海水と荒れた天候をエクアドルやペルーから遠ざけ、インドネシアの方へと押しやっている。
この風が弱まると、暖かい海水が東へ移動し、それとともに荒天も移動する。移動した先の海面水温が上がり、地球の大気循環に変化が起こる。
人工衛星はこうした海面水温を追跡している。また、外洋に設置されたたくさんの観測ブイも、水深300メートルを超えるところまでセンサーを下ろして、海面下の水温の上昇がどの程度の深さまで達しているかを監視している。
海面下の暖かい水は数カ月かけて上昇し、エルニーニョが発生する条件を整える。水温がより上がるほど、エルニーニョの勢力が増す可能性がある。
「スーパーエルニーニョ」は科学的な用語ではない。太平洋の表面海水温が平均より少なくとも2℃上回る非常に強力なエルニーニョ現象に予報担当者たちが用いる呼称だ。これは非常にまれな現象であり、前回発生したのはおよそ10年前だ。
スーパーエルニーニョは壊滅的な影響をもたらすおそれがある。NOAAによると、2015年から2016年にかけて起こった直近のスーパーエルニーニョは、北太平洋中部における記録的なハリケーンシーズンやプエルトリコでの水不足、エチオピアでの干ばつ、当時観測史上最高を記録した世界平均地表気温などと関連しているという。
勢力の強さにもよるが、エルニーニョの影響は嵐のパターンや干ばつ、野生生物など広範にわたる。さらには地球が回転する速さにまで変化をもたらすかもしれない。
熱帯太平洋の中部および東部で海水温が上昇すると、一帯で発生する嵐の強度が増し、その嵐が世界各地の気象にも影響を及ぼす可能性がある。
エルニーニョはジェット気流を南へ押しやると、ベッカー氏は言う。過去の例では、米国南東部とテキサスなどでは雨が増えた一方、アフリカ南部などでは気温上がって干ばつが起こり、農作物が打撃を受けて飢餓の一因となった。インドネシアとオーストラリアは降水量の減少と気温の上昇に見舞われ、山火事が増加した(編注:日本の気象庁によると、西日本が冷夏、東日本が暖冬となった)。
太平洋の水温が上昇すると、最終的には気温も上昇する。これまでも、エルニーニョが起きた年は、観測史上でも特に気温が高い傾向にあった。
エルニーニョの影響は、野生生物の数にも波及することがある。ガラパゴス島に生息するペンギンの数は、80年代と90年代に発生した2度の強力なエルニーニョ現象の後、大幅に減少したと、学術誌「Biological Conservation」に掲載されている2006年の研究にはある。エルニーニョによって上昇した海水温のせいで、水中の主要栄養素や魚の数が減少し、その結果、ペンギンが飢餓状態に陥ったと考えられる。
米コロラド州立大学の科学者が4月9日付けで発表した2026年最初の大西洋ハリケーン予測によると、2026年のシーズンに発生する数は平年並みか、それを下回るという。
「平年よりもやや下回る理由は主に、2026年の夏から秋にかけて非常に強いエルニーニョ現象が起こる可能性があるためです」と、同大学でハリケーンを研究するフィル・クロッツバック氏は述べている。
大西洋では、エルニーニョによってウィンドシアが強まる。ウィンドシアとは、水平または垂直方向に生じる風速や風向きの差で、垂直方向の差には嵐を崩壊させる働きがある。さらには、大西洋の一部海域の水温が2025年ほど高くないこともあり、2026年のハリケーンシーズンの威力はやや弱まる可能性があると、クロッツバック氏は説明する。
壊滅的な影響をもたらす可能性があるとはいえ、こうした長期間にわたる気象パターンを追跡できることにより、われわれは備えをより万全に整えることができると、科学者らは言う。
「エルニーニョやラニーニャをよいもの、悪いものと決めつけることには、いつもためらいを感じます」とベッカー氏は言う。「こうした現象はただ存在するものであり、これまでもずっとそうだったのです」
文=Ruby Mellen/訳=北村京子(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2026年4月14日公開)
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