ロシア南部「トゥワ共和国」の現在 観光立国目指すも厳しい現実
ロシアのシベリア連邦管区の南部に位置し、豊かな自然を誇るトゥワ共和国。新型コロナウイルスの世界的流行の拡大前には、日本との間でも民族音楽などを巡る交流が盛んだった地域だ。
南のモンゴルと国境を接するトゥワは、北海道の2倍ほどの領域を誇る。エニセイ川が流れ、大草原やタイガ(針葉樹林)、山岳地帯など変化に富む。人口約34万人のうち、9割近くがトゥワ人だ。チュルク系言語を話す人々で、かつてモンゴル帝国の支配下にあった。そのため、チベット仏教やシャーマニズムが信仰されている。
Advertisement遊牧民の生活体験も
トゥワの豊かな自然は露国内でよく知られている。プーチン大統領が休暇で何度も訪れ、川での魚釣りや遊泳を楽しむ様子が報じられてきたからだ。同行役は地元出身の側近、ショイグ安全保障会議書記(71)だ。
トゥワでは、1人の歌い手が同時に2種類の声を出す喉歌「ホーメイ」など民族音楽も有名だ。また、紀元前の騎馬民族スキタイの古墳や遺跡が多数あり、博物館では繊細な黄金装身具を見ることができる。
共和国の首都クイズィルから南東へ車で約60キロ走ると、なだらかな草の丘に羊毛フェルト製のおわん形テントが現れる。観光客が遊牧民の生活を体験できる施設の一つだ。
主の初老女性が乳製品を多用した伝統的な食卓でもてなしてくれた。「ゆっくりかき混ぜるのがコツ」と、新鮮な牛乳を使ったチーズ作りも披露。民族衣装を着た孫の少女は、子馬を世話する様子を見せてくれた。
復路では聖地の山や泉にも立ち寄った。多くの男性がウクライナでの「特別軍事作戦」に従軍し、戦時色漂う首都クイズィルとは異なる原風景が垣間見えた。
「観光立国」目指すトゥワ
トゥワ当局はこうした資源を生かした観光振興で地域の発展を目指す。その試金石となる一大イベント「国際仏教フォーラム」が8月中旬、露大統領府の支援で開かれた。
露国内の仏教地域で2023年から持ち回り開催されている。今回は「文化の対話」をテーマに公式発表で2000人超が参加し、インド、中国、ミャンマーなど20カ国からも僧侶や研究者が訪れて意見を交換。トゥワ共和国のホバリグ首長は「トゥワ文化の独自性や仏教の伝統とのつながりを世界に示すまたとない機会だ」と意義を強調した。
しかし地域経済の現実は厳しい。石炭や非鉄金属の採掘といった鉱業の比重が大きい。山地が8割を占めるため物流に課題を抱え、製造業の集積は容易ではない。鉄道建設の計画はあるものの、いまだ実現していない。
ホバリグ氏はプーチン氏と5月にモスクワで面談し、過去5年で貧困率が28・5%から18・6%まで低下したことを成果に挙げた。しかし、25年の全国平均6・7%と比べると、およそ2・8倍の高水準にとどまっている。【クイズィルで真野森作】
シベリアの少数民族地域から、多くの男性が戦地に向かっています。ロシア国内で最も戦死率が高いトゥワ共和国から、その背景に迫ります。 ▽多くの男性が戦地に向かうトゥワ プーチン氏側近の出身地の現状 ▽契約兵に志願? なぜシベリア少数民族はウクライナに向かうのか(7日午前8時公開予定)
▽「特別軍事作戦」を仏教界も後押し 背景にはトゥワの複雑な歴史(8日午前8時公開予定)