「分かっていても嫌だろうな」巨人・阿部監督も絶賛のカミソリシュート 対右打者へ秘密兵器右腕の開幕1軍候補浮上
◆オープン戦 ソフトバンク3―4巨人(12日・みずほペイペイドーム)
明らかにテスト登板だった。5回1死、阿部監督がベンチを出て田中瑛への交代を告げた。前の回からイニングまたぎで先頭の柳田を初球で二ゴロに抑えた京本に代わり、あえて右腕から右腕へ継投。これには明確な狙いがあった。次打者は右の大砲・山川。「中継ぎテストしているから。いいところで使いたいなっていうのがあるしね」。武器のシュートの威力を確認するには絶好の相手だった。
捕手の甲斐も意図を理解して初球から3球連続でシュートを要求。148キロでファウル、149キロで空振り、150キロでファウルとグイグイ胸元を攻めまくった。内角を強く意識させて4球目の外角スイーパーに腰を引かせて中飛。昨年のパ・リーグ本塁打王をねじ伏せた。続く正木にはゴロの右前安打を許したが、ダウンズは初球から2球続けてスイーパーで外角を攻めた後、3球連続シュートで遊ゴロ。右打者3人との対戦で「右殺しの瑛斗」を猛アピールした。力強い投球に、阿部監督は「大事なところをいかせたいなと思わせてくれたよね。今日でね。シュートがすごい投手だから。分かっていても嫌だろうなと思って、右バッターは」と絶賛した。
日本ハムから現役ドラフトで新加入。先発候補の一人として競争に食らいついてきた中で、阿部監督はキャンプのブルペンで田中瑛のシュートの曲がりの大きさに注目。「シュートが良い。今は右打者の内角をえぐるシュートを投げる人が少ない。右の強打者に当ててみたい」と話していた。微妙にシュートしながら沈む速球・ツーシームが主流の時代。かつてのプロ野球で輝いた東尾修、西本聖、平松政次のカミソリシュートのような軌道に大きな可能性を感じていた。
ピンチでも動じない強心臓も魅力。杉内投手チーフコーチも「シュートを右打者に恐れず投げられる。しかも結構変化する。そのへんは監督も評価していた」と先発だけでなく、救援起用する案も温めてきたが、ここにきてリリーフでの開幕1軍候補に浮上した。変則左腕の高梨、右の変則サイドの船迫とともに強烈な個性があるのは魅力だ。
「シュートは自信がある球」と得意球を自在に操る田中瑛。ヤクルトのオスナやサンタナ、阪神の大山や森下、DeNAの牧、宮崎、オースティンらセ・リーグに右の強打者は多い。阿部監督が発掘した“右斬り瑛斗マン”が昨年のリーグ優勝を支えたブルペンに新風を吹き込んだ。(片岡 優帆)
◆記録メモ
昨年の巨人投手が対戦した人数は、左打者が延べ2606人、右打者が2594人。左と右で12人しか変わらないものの、対戦成績を見ると
被打率〈本塁打〉 打点
対左・236〈25〉 176
対右・216〈53〉 195
右打者に倍以上の本塁打を許した。細川(中)には本塁打王の村上(ヤ)と並んで最多の5発を献上。左打者を含め30打席以上の対戦があった46人中、最高打率はサンタナ(ヤ)の・361。対戦した20試合のうち16試合で安打されただけに、今年も警戒が必要だ。