Appleが復活したのは「4種類」に絞ったから。シンプルすぎるジョブズの思考術
1997年、破産目前だったAppleに復帰を果たしたスティーブ・ジョブズ。ものの数週間で、350品目あった製品ラインナップを10品目にまで削ったのです。
これは、ジョブズにとって難しい決断だったでしょうか? 従業員にとっては?
科学的知見からすれば、間違いなくそうだったでしょう。
『Journal of Consumer Research』に掲載された研究で、人間の本性が明らかになりました。
こちらの実験の参加者は、手元にあるチケットが、実際に手に入れた価格の10倍で売れることを期待していました。
しかも、同じチケットが元の値段で売られていたにもかかわらず、です。「自分のものだ」というだけで、チケットの価値がまるで魔法のように10倍にまで跳ね上がっています。
なぜこんなことが起きるのか?
社会心理学者はこの現象を、「授かり効果(endowment effect)」と呼んでいます。小難しい学術用語で説明するならこれは、「売却回避(divestiure aversion)」と呼ばれ、以下のように定義されています。
対象となる物を所有していることと、損失を回避したいという傾向が合わさると、売買価格の非対称性が生じる、とするプロスペクト理論の応用例。
もっとシンプルな言葉で言うと、「人は一度何かを手に入れると、よほどの額を提示されない限り手放したくないと思う」ということです。
マイホームを売りに出す際に、客観的な評価額より大幅に高い値段をつける人が多いのも、これが理由です。
経営者にも同じことが言える
さらに重要なのは、企業経営者が、適切でなくなってもなお、製品やプロジェクトにしがみつくのも、これが理由だということです。
Appleがその典型例です。
ウォルター・アイザックソン氏が評伝『スティーブ・ジョブズ』(邦訳:講談社)で振り返っているように、ジョブズはAppleに復帰を果たした際に、4つのブロックからなるシンプルな図を描きました。
購入を検討する顧客はたいてい、2つのシンプルな質問しか考えません。
それは、
「自分は一般ユーザーか、それともプロユーザーか?」
「ノートパソコンとデスクトップ、どっちのモデルが欲しいか?」
という問いかけです。
2つのシンプルな質問から導き出せるのは、この2つを組み合わせた4つの解答です。
であれば、製品も4種類に絞り込めます。この時は「iMac」「Power Macintosh G3」「iBook」「PowerBook G3」の4製品が、それぞれの役割を担うことになりました。
それ以外の製品は、ほぼすべて廃番にする必要がありました。