日銀の利上げ、データに基づき柔軟に進める必要-IMF日本担当
- 不確実性が高まる局面では柔軟性とデータ重視が重要とシュエイリ氏
- 自動車関税が日本経済への最も大きな打撃になると指摘
米関税政策が日本経済の重しとなり不確実性が高まる中で、日本銀行は今後の利上げをデータに基づいて柔軟に進める必要がある。国際通貨基金(IMF)の日本ミッションチーフを務めるナダ・シュエイリ氏が指摘した。
シュエイリ氏は23日、米首都ワシントンでのインタビューで、「不確実性が高まる局面では、柔軟性とデータ重視の姿勢が何より重要になるというのがわれわれの金融政策に関する主要なメッセージだ」と発言。日銀は「あらゆるデータを精査しなければならないし、それをどう解釈して政策を決定するのかを市場に明確に説明する必要がある」と述べた。
IMFは今週、最新の世界経済見通し(WEO)を公表。トランプ政権が引き起こす貿易戦争の影響を考慮して今年と来年の世界経済成長見通しを引き下げた。日本の2025年の成長率予想も0.5ポイント下方修正し、0.6%とした。
シュエイリ氏は米関税政策が日本経済に及ぼす影響について、「自動車関税が最も大きな打撃となるとわれわれはみている。また、貿易政策を巡る不透明感も深刻な打撃をもたらすだろう」と指摘した。
シュエイリ氏の今回の発言は、最近の日銀当局者の見解とおおむね一致している。日銀の植田和男総裁は先週、米国の関税政策に伴う先行き不確実性の高まりを踏まえ、予断を持たずに政策判断を行うとの見解を示した。
大半のエコノミストは4月30日-5月1日の日銀金融政策決定会合で政策が据え置かれると予想している。
日本国債利回りは上昇を続けており、20年債利回りは今月、2004年以来の高水準を記録した。借り入れコストの上昇が巨額の公的債務を抱える日本にとって懸念材料となっている。IMFは日本の債務残高の対国内総生産(GDP)比が今年235%に達するとの見通しを示している。
シュエイリ氏は「今後、高齢化や高齢者医療、気候変動ショックといった要因から、大きな財政圧力が生じるだろう」とした上で、「日本の財政再建にできるだけ早く着手する必要があるというのがわれわれの見方だ」と説明した。
原題:IMF Urges BOJ Flexibility on Tightening as Trump Dents Outlook(抜粋)