苦境の日産支援、日本政府の出方に注目も-英政府保証付き融資案浮上で

経営再建に取り組む日産自動車が英国政府系の機関から保証を受ける形での資金調達を視野に入れていることが明らかになった。日産では国内工場閉鎖の検討も進んでいるが、地域経済への甚大な影響が見込まれ今後は日本政府の出方にも注目が集まる。

  「英国はサンダーランドを守ろうとしている」。東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリストは報道に接しての印象をこのように述べた。

  サンダーランドは日産が工場を構える英国の都市。日産は同工場での電気自動車(EV)生産拡大のため、20億ポンド(約3900億円)の投資を公表、英国でEV用電池工場を建設する計画を進めている。ブルームバーグが入手した内部文書によると、日産は英国政府系の機関である英国輸出信用保証局から保証が付いた10億ポンドのシンジゲートローンを受けることも視野に入れている。

関連記事:日産が1兆円規模資金調達計画、英政府保証付き融資も視野-関係者 (2)    

  日産は世界各地にある車両生産工場について2027年度までに現在の17から10に削減する計画を示しているが詳細については公表していない。事情に詳しい複数の関係者によると、神奈川県にある追浜工場(横須賀市)と日産車体の湘南工場(平塚市)も閉鎖検討の対象に含まれている。

  自動車産業はすそ野が広く、販売や整備など関連事業も含めると550万人もの雇用を担うとされるだけに工場閉鎖が地域の経済に与える影響は計り知れない。杉浦氏はサプライヤーも含めて経済的な影響が深刻になってくると日本でも英国と同様、「政府として動かざるを得なくなるだろう」と指摘。その結果、リストラ計画が先送りされる可能性もあると述べた。

  「日産の事業規模を考慮すると、サプライヤーや物流を含む関連産業に広範な影響を及ぼし、地域経済に深刻な影響をもたらす」と、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の吉田達生アナリストも指摘する。

  英国輸出信用保証局は主に英国からの輸出を支援しており、過去にはトルコの高速鉄道建設やアンゴラのインフラ整備の融資支援などに携わった事例がある。

  日産は1999年の経営危機の際には仏ルノーの救済出資を受けて再建を成し遂げた。ホンダとの共同持ち株会社設立に向けた交渉が2月に破談となり、現時点では出資などを期待できる新たなパートナーを見つけられていない。

  BIの吉田氏は日産の資金確保に助けとなるサポートが政府を通じて得られるのであれば、経営の厳しさが増している日産にとっては「それを拒むという選択肢は残されていないと思う」と述べた。

関連記事 日産再建へフル加速、新社長が矢継ぎ早のリストラ策-株下落 (1)

関連記事: