アングル:マスク氏が政権離脱、苦境のテスラとスペースXに集中へ
マスク氏は複数の課題に直面する一方、多くのアドバンテージも得て自らの帝国に戻ることになる。テスラの売り上げ減少は投資家の忍耐力を試しているが、スペースXとそのインターネット接続サービス「スターリンク」はそれぞれ市場を支配しており、商業目的の打ち上げや衛星通信でデフォルトの選択肢となることも多い。外国政府によるスターリンクの利用も増えており、マスク氏とトランプ氏との緊密な関係ゆえに規制当局の承認もスムーズに進んできた。
テスラの株価は昨年12月中旬以降に約25%下落している。当初はマスク氏とトランプ氏の関係や、同社のロボットタクシーが迅速な規制承認を得られるとの期待から急上昇。だが、販売が落ち込んだ上、マスク氏による極右政治家への支持や米連邦職員の解雇を巡って抗議が巻き起こったため下落に転じた。
アナリストらは、テスラが販売不振から抜け出すためには根本的な経営改善が必要だと指摘している。特に競争の激しい中国市場では、EVの購入者はテスラの競合他社製EVを求めるようになっているからだ。
モーニングスターのアナリスト、セス・ゴールドスタイン氏は「マスク氏のDOGE離脱は市場心理を改善するだろうが、テスラに本質的な変化は見られない」と明言。「テスラの納車台数減少は、現在の製品ラインが市場の飽和状態にあり、米国、中国、欧州という3つの主要市場全てで激しい競争に直面していることを示している」と語った。
ウェドブッシュのダン・アイブス氏らテスラに強気の見方をするアナリストは長年、同社の将来価値は自動運転技術と結びついている主張してきた。アイブス氏は28日、自動運転技術はテスラ単体でも約1兆ドルの価値をもたらす可能性があると述べた。テスラはコメント要請に即座に応じなかった。
<トランプ氏との関係>
ホワイトハウスは29日、トランプ政権が引き続き、さまざまな政府機関でDOGEの職員と協力していくと発表した。ただ、情報筋によると、マスク氏の側近であり、DOGEの業務運営の要となってきたスティーブ・デービス氏はDOGEの指導的役割から降りた。
スペースXは長年、独自の経営チームを擁してきたが、今回の打ち上げ後、マスク氏は自ら同社の経営により多くの時間を割くつもりだと述べた。
テスラ株を保有するグロバルト・インベストメンツのシニア・ポートフォリオ・マネージャー、トーマス・マーティン氏はマスク氏について「政府の公式な構成員ではないが、明らかに政府とのつながりを維持している。したがって、影響力はわずかに低下するだろうが、規制問題に関しては大きな変化はないと思う」と語った。
マスク氏は、EVを標的とする法案の議会審議について数カ月間沈黙を保っていた。ところがテスラ・エナジーは28日遅くにXで、EVの税額控除を廃止する共和党の計画に批判を表明した。
テスラが来月予定するロボットタクシーの始動は、手ごろな価格のEVから、自動運転車および人型ロボット「オプティマス」へと軸足を移すマスク氏の計画の要となる。
マスク氏は政権離脱を表明した直後、テスラがテキサス州オースティンでEV「モデルY」を使った無人での自動運転試験を進めており、6月に自動運転で納車することを計画していると発表。「来月に工場から顧客への初の自動納車を行う」と語った。
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