欧州委員長、世界の科学者や研究者を欧州へ呼び込み
[ブリュッセル 29日 ロイター] - 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は29日、「(欧州の)大学では異論のある議論は歓迎される。私たちは科学と研究の自由を基本的なものだと考えている」と訴え、世界中の科学者や研究者に対し欧州へ移るように呼びかけた。トランプ米大統領がハーバード大をはじめとする米国の大学に対する連邦政府の助成金を削減すると脅している中で、秋波を送った形だ。
フォンデアライエン氏は、スペイン・バレンシアで開催された欧州議会の最大会派で中道右派の欧州人民党(EPP)の年次大会で語った。
トランプ政権は、パレスチナ自治区ガザに対するイスラエルの攻撃に反発する親パレスチナの集会を抑え込む姿勢を示している。また、多様性・公平性・包摂性(DEI)プログラム、気候変動への取り組み、トランスジェンダー政策などに反対し、認めない姿勢をあらわにしている。
対照的に、フォンデアライエン氏は科学と研究の自由は「私たちにとって核となる価値観であるだけでなく、卓越性と革新性を育むことになる」と強調。「欧州は最も優秀な人々に開かれている」とし、「だからこそ彼らが『欧州を選ぶ』ことを支援するために提案する。世界中の科学者や研究者に欧州を拠点にしてもらい、欧州を再びイノベーション(技術革新)の拠点としてもらいたいからだ」と訴えた。
ハーバード大の科学者、ドナルド・イングバー氏は今月、博士号を持つ外国人研究者がトランプ政権下の米国で生活することを恐れ、米国での研究職を辞退する動きが出ていると指摘した。このような研究者は中国や欧州に目を向けている。
フォンデアライエン氏は一方で、トランプ氏が輸入品への関税を引き上げていることにも触れて「世界の市場は米政権の予測不能な関税政策に揺れている。米国の対外関税は過去100年間で最高となっている」と問題視した。その上で「しかし、あらゆる危機にはチャンスもある。今、貿易の世界は私たちの方を向いている。彼らは皆、私たちとの取引を望んでいる。なぜならば私たちは公正で信頼でき、ルールに従って行動するからだ。だから冷静かつ団結し、この道を歩んでいこう」と強調した。
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