「正も負も背負っていきたい」国民民主党が参院選擁立の山尾志桜里氏、「菅野」名乗らず

国民民主党の山尾志桜里弁護士

国民民主党は14日、夏の参院選比例代表に元衆院議員、山尾志桜里弁護士(50)を擁立すると発表した。山尾氏は国民民主の創設メンバーの1人。2021年10月の衆院選出馬は見送ったが、戸籍名の「菅野」で引き続き人権外交や憲法改正に関わってきた。参院選は衆院議員時代に用いた旧姓「山尾」で臨む。政治家としてのキャリアが紐づいている姓は「山尾」だとの判断だという。

スパイ防止法は右の政策ではない

「土地取得規制もスパイ防止も右の政策ではなく真ん中の政策。条約や憲法を理由に諦める必要は全くなし。正しい法律戦で必要な規制をかけ国益を守るべき」

山尾氏は2日、X(旧ツイッター)にこう投稿した。既に国民民主の擁立方針が報じられており、4年ぶりの国政復帰を目指す決意を書き込んだ形となる。アカウント名も14日「菅野」から「山尾」に切り替えた。

衆院議員時代、山尾氏は権力統制を有効に機能させる「立憲的改憲」を唱えた。改憲議論の主導を試みた野党議員は当時、珍しかった。

改憲を党是としながら本腰を入れようとしない自民党の姿勢に加え、教条的な護憲ではないとしながら議論を封じるような旧立憲民主党の執行部に所属メンバーとして不信感を抱いたという。20年3月、旧立民を離党したのは改憲を巡るスタンスの違いからだった。

改憲と人権外交

その後、旧国民民主党に入党する。20年9月の旧立民との合流には加わらず、13人で現国民民主党を結党。党の憲法調査会長を務めた。

衆院議員を辞めて以降も、国民民主や日本維新の会、衆院会派「有志の会」がまとめた緊急事態条項の改憲条文案の作成を民間の立場でサポートした。

衆院議員を辞めた後、「人権外交を超党派で考える議員連盟」の活動をサポートする山尾志桜里氏(左端)

対中強硬で香港政府が敵視

人権外交に関しては日米欧の国会議員でつくる「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」の共同議長として力を入れた。中国に代表される「力の支配」の拡張に対し、人権や民主主義といったコンセプトで対抗する狙いがある。

中国の人権侵害行為に対する制裁法の制定を目指したことで、香港政府に24年1月以降の裁判で香港民主活動家の「共謀者」と名指しされている。衆院議員時代の言論行為を他国が刑事裁判の対象とすることは日本に対する主権侵害と指摘される。

「10年の評価から逃げない」

山尾氏を巡っては民進党時代、待機児童問題で当時の安倍晋三首相を鋭く追及したことで注目を集めた経緯がある。一方、元秘書が多額のガソリン代を計上した問題など自身のスキャンダルが浮上。一連の不祥事はいまなおSNS上などで尾を引いている。

民進党に離党届提出を表明した山尾志桜里氏

2017年9月に週刊誌が報じた既婚男性との交際疑惑を受けては民進党離党に至った。17年10月の衆院選は無所属で出馬。834票差の辛勝だった。

山尾姓は民進党時代の「負」のイメージも薄くはない。

山尾氏は「10年の政治家のキャリアと評価から逃げたくない。正も負も背負っていきたい」と述べる。(奥原慎平)

国民民主に想定以上のSNS反発

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