不法移民の強制送還、費用は年13.6兆円-トランプ氏起用の国境責任者

トランプ次期米大統領が国境担当責任者に指名したトム・ホーマン氏は、史上最大規模の不法移民強制送還という使命を果たすには、巨額の資金が必要になると述べた。ただしその出費によって最終的に納税者の負担は軽くなると続けた。

  「確かに巨額だ」とホーマン氏は6日夜、テキサス州中部で開かれた女性共和党員の夕食会で発言。「しかし今の米国は巨額の資金を永遠に費やしている」と述べた。

  ホーマン氏はレーガン大統領の時代に国境警備隊員になって以来、移民関連の政府職員としてキャリアを積んだ。同氏は強制送還のコストとして860億ドル(約13兆5800億円)という試算を参照したものの、その内訳は明らかにされていない。継続的にかかる居住費や食費、国内での移動費に比べれば大した額ではないと、同氏は述べた。

  「不法移民は全員無料でホテルに宿泊し、3度の食事が与えられる」と同氏は主張。「長期的には納税者の負担を数十億ドル規模で節減するだろう」と述べた。

  ホーマン氏は支出を正当化するために、不法移民の犯行とされた2つの殺人事件を挙げた。

  強制送還の予算に関するホーマン氏の発言からは、トランプ次期政権に突きつけられた重大な課題がうかがわれる。大規模な強制送還を実行する予算を確保しつつ、共和党が薄氷の多数派となっている議会を運営しなくてはならない。ホーマン、トランプ両氏は数百万人もの不法移民を強制送還し、メキシコからの不法な越境に直ちに終止符を打つと公約している。

  送還対象者の拘束から収容、裁判の手続き、チャーター便による移送といったコストは巨額になり、党派対立が深まる議会で政治的に行き詰まる可能性がある。

  国土安全保障省が請求した今年度予算は1079億ドル。米国移民評議会は昨年10月のリポートで、大規模な強制送還プログラムの長期コストは年間880億ドルだと試算。「10年余りかけて積み上がるコストは9679億ドルを超える」という。

  ホーマン氏は強制送還に反対する全米の州や自治体に警告を発した。

  「そこをどけ、われわれの邪魔をするな」とホーマン氏。「シカゴ市長はかつて、私をシカゴでは歓迎しないと述べた。さて、私は就任初日にどこに向かうだろうか」と問いかけた。

原題:Trump Border Czar Sees $86 Billion Cost for Migrant Crackdown(抜粋)

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