「高齢でもヨボヨボにならない人」は絶対に言わない…和田秀樹が警鐘「老人性うつ」になりやすい人の口グセ 60代以降は「老ける思考パターン」に気をつける
健康で長生きするにはどうすればいいのか。医師の和田秀樹さんは「『トシ』と『老い』を結びつけてはいけない。60代以降は年齢をあまり意識せずにすごしたほうが、結果的に長生きできる」という――。
※本稿は、和田秀樹『逃げ上手は生き方上手』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/Nes
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60代以降は「年齢を気にする」ことが多くなるが…
「年齢を気にする」というのは、じつはどんな年代にもあるように思います。
一般的には50代以降の“専権事項”と考えられているようですが、10代の人は20代を目前にして「もうすぐハタチか。時の流れって早いな……」などといった感慨を持つかもしれないし、20代も後半になれば30代を意識し、40代になれば50代を意識し……といった具合に“年代の壁”があるのは各世代共通なのです。
そしてそれは70代、80代になるまで延々と続きます。
とくに「先行きがそれほど長くない」と考えている人が多いかもしれない60代以降の人は、「年齢を気にする」ことが多くなるように思います。
そんな人たちのなかには「もうトシなんだから」と、健康診断の数値ばかりを気にして、食事制限をあれこれ設け、その挙句に心が塞ぎ込んでしまうという人は意外に多いようです。
その結果、健康診断の数値は悪くなくても、自他ともに若さや元気が感じられなくなっていくこともあります。
それでは本末転倒というものです。私の経験上、心が元気で気分が明るければ、数値が多少悪くても生活や仕事上は問題ないものです。元気な自分に意を強くして、数値などあまり気にせず、伸び伸びと暮らしたほうがはるかに健康的で、若々しい人生を送ることができます。
数値は多少悪くても、心は健康なのですから、60代以降は年齢をあまり意識せずにすごしたほうが、結果的に長生きできると思います。
「老人性うつ」に陥りやすい思考パターンとは
また、これといって具合の悪いところもないのに、自分から「もうトシなんだから」と、何事も年相応で考えるのもよくありません。そういう考えの人は得てして、食事だけでなく暮らし方全体に制限を加えたりするので、結果として老いを加速させることになります。
高齢者専門の精神科医の立場から言わせてもらえば、そもそも「もうトシなんだから」と考えること自体が、老人性うつに陥りやすい思考パターンなのです。
「もうトシなんだから」という考えのあとに続くのは「60歳を過ぎたら△△をしてはいけない」とか「70歳になったら○○であるべきだ」という「かくあるべし思考」になる場合が多いからです。
さらに言えば、「トシ」=「老い」という言葉の使い方もよくありません。「トシ」は「トシ」でしかないのに、自分から「老い」に結びつけてしまっています。
でも、「トシ」というのも単なる年齢以外の何者でもありません。自分から「老い」を早める必要もありません。若く見られる人ほど、いくつになっても元気で、トシのことなど忘れているものです。
トシのことなど、「考えない」「口にしない」。つまり、年齢から逃げる。たったこれだけのことで、アンチエイジングであれこれ試みるよりも若さを保つ効果が得られるかもしれません。
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そのとき、いつまでも立ち往生していないで、別のルートに切り替えられるかどうかが重要なのです。つまり、常に一本道ではなく、「そこから逃げる」ことを意識しておく必要があるのです。
たとえば次のような感じです。
「A社で採用されなかったら、B社で働くのもアリかもしれない」 「子供がほしくて不妊治療を続けているけれど、夫婦二人ですごす人生だって楽しいかもしれない」
もちろん、第一志望の会社に受かることや、念願の子供を授かるように頑張るのが悪いと言っているわけではありません。目標や理想、信念を持って努力するのは素晴らしいことです。
でも、残念ながらどんなに頑張ってもそれがかなわない可能性はあります。
そんなときのために「別の人生もある」と別ルートを考えておくことは大切です。代替案を用意しておくということです。
人生で行き詰ったときに、別ルートや代替案という逃げ道があるかどうかで、立ち直り方やその後の生き方が大きく変わってくるのです。
和田秀樹『逃げ上手は生き方上手』(実業之日本社)
なかには、「そんな逃げるようなことはしたくない」と思う人もいるかもしれません。
そんな方には何度でも申し上げますが、「逃げる」というのは卑怯なことでもズルいことでもなく、生きるために必要な知恵なのです。
また、生真面目な人は、別ルートや代替案を真剣に考えてしまいがちです。それだと、“本線”の結論が出ないうちに、気持ちが別ルートや代替案に流れてしまいがちです。ですから、これらのことを考えるのは思いつきでもあやふやでもいいのです。しっかり頭に入れておくというよりも、あくまでも頭の片隅に置いておく程度でかまいません。