純利益71%減のテスラ、形勢は想像以上に不利
ニューヨーク(CNN) 米電気自動車(EV)大手テスラの状況は間違いなく厳しい。販売台数は減少し、利益は株価と同様、急落している。ショールームの外では抗議活動が頻繁に行われ、サイバートラックは失敗作だ。そして実際のところはそれよりもはるかに悪い。
イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が政府効率化省(DOGE)の職から退くと発表したことで、先日発表された純利益71%減の衝撃は薄まっているかもしれない。ただし、この減少はテスラの深刻な財政難を示す一つの兆候に過ぎない。これは、同社初の販売台数減とEVの価格下落によって引き起こされた問題だ。
テスラの根本的な問題は利益の消失だ。1~3月期の決算報告を詳しく見ると、テスラは名目上の存在理由であるはずの自動車販売で赤字に陥っていることがわかる。
同社は、他の自動車メーカーに5億9500万ドル(約850億円)相当の規制クレジットを売却したおかげで、かろうじて四半期利益を4億900万ドル計上できた。
しかし、トランプ政権が望むように事が運べば、黒字化に貢献していた規制クレジットは消えてなくなることになる。
また、トランプ政権が自動車の輸入部品に課している関税により、コスト上昇も懸念される。マスク氏自身も、一部の競合他社ほどではないにせよ、かなりの額になる可能性があると漏らした。
売り上げ減の一因は、特に中国における他社EV製品との競争激化だ。主要市場ではEV販売が全体的に増加しているにもかかわらず、テスラの売り上げは欧州と中国の両方で減少している。
しかし、同社はマスク氏の政治活動によっても打撃を受けている。マスク氏は連邦政府の大幅縮小の主導から、「ドイツのための選択肢(AfD)」のような世界中の極右政党支援まで、さまざまな活動を展開している。同氏がDOGEから退く意向を示しているにもかかわらず、ウォール街のテスラ支持者の中にはブランドイメージの毀損(きそん)が永続する恐れがあると考える人さえいる。
「テスラは死のふちにはない」とマスク氏
マスク氏は、同社が深刻な財政難に陥っているとの見方を否定している。
同氏は22日、投資家に向け、いくつかの課題はあり、今年はおそらく予想外の困難が待ち受けていると思われるものの、テスラの将来については極めて楽観視していると説明した。
しかし、この会議では、トランプ政権が連邦排出ガス規制の撤廃を考えているという事実は議論されなかった。この規制はEVを販売する自動車メーカーに有利に働く。
政権は、カリフォルニア州のほか8州が連邦基準よりも厳しい排出ガス規制を求める権利も奪おうとしている。規制では2035年までにガソリン車の販売を禁止するとしている。連邦および州レベルでの厳格な排出規制がなくなれば、規制クレジットの販売も行われなくなるだろう。
連邦および州の規制に対応したクレジット販売はテスラに多大な利益をもたらし、その収益は販売を開始した21年初頭だけで84億ドルに上った。
テスラは創業当初から、自動車と太陽光発電製品が赤字だったため、こうしたクレジット販売に依存してきたが、21年4~6期以降は、クレジット販売がなくても毎四半期黒字化していた。直近の四半期までは。
利益率の低下
主要製品の利益率も低下している。自動車部門の粗利率は12.5%で、22年1~3月期の30%から大幅に低下した。
モルガン・スタンレーの調査によると、テスラの利益率がこれほど低かったのは12年初頭以来。ただし創業間もない当時の年間販売台数は、わずか5600台、つまり昨年の1日あたりの平均販売台数と同程度に過ぎなかった。
健全な利益率と年間37%から87%の売上高成長率を背景に、テスラの株価はまさに月へと駆け上る勢いだった。これにより、テスラは世界で最も時価総額の高い自動車メーカーとなり、マスク氏は世界最高の富豪となった。
しかし、昨年は販売台数が急落し、同社史上初めて年間での減少を記録した。その一因は、特に中国における他社EVとの競争激化と、保守的な色合いを強め、かつ物議を醸すマスク氏の政治姿勢を嫌気した一部の顧客層からの反発だ。
テスラ株に対する強気筋の中でさえ、同社のブランドイメージの毀損は続くと考える人がいる一方で、テスラが今後、「ロボタクシー」の導入で利益を得られると信じている人々もいる。ロボタクシーは自動運転車による配車サービスで、同社がテキサス州オースティンでまもなく開始するとしている。
運輸省は24日、「自動運転車フレームワーク」を発表し、テスラの自動運転への取り組みを後押しする姿勢を見せた。この枠組みには「不要な規制上の障壁の撤廃」と自動運転車の商用展開の実現が含まれる。投資家はこれをトランプ政権がテスラ支援策を講じている兆候と受け止め、テスラ株は25日に10%上昇した。ただしこれは、テスラが長年約束してきた自動運転開発の成功を保証するものではない。
ロボタクシーの将来性と問題点
マスク氏は、このサービスと、テスラ工場で年内に稼働予定とされる人型ロボットの導入によってテスラの価値は世界で時価総額の高い5社を合わせた額を上回るほどになると主張する。
テスラ株の支持者らは、時間軸についてそれほど楽観的でない人もいるものの、マスク氏が予測する未来を依然として信じている。
一方でゼネラル・モーターズ(GM)は先ごろ、自社のロボタクシー事業を中止した。「事業拡大に必要な相当の時間とリソース、競争の激化するロボタクシー市場」が投資対効果に欠けると判断したためだ。フォードも、自社の自動運転車開発から撤退。近い将来に収益性を確保できないとの結論に至った。
マスク氏は少なくとも6年前から、テスラのロボタクシーの実現は1年ほど先だと約束してきた。しかし本人でさえ、「完全自動運転(FSD)」機能のスケジュールに関するこれまでの見通しについて達成できていないと認めている。