長距離ドローン8000超、過去最大飛来数を3カ月連続で更新:ウクライナ迎撃戦闘2026年5月分の傾向(JSF)

ウクライナ空軍第540対空ミサイル旅団のFacebookよりドイツ供与のIRIS-T SLS防空システムで撃墜したロシア軍のKh-101巡航ミサイルの残骸。2026年5月8日公開

 2026年5月にウクライナ空軍司令部が報告したロシア軍の長距離ドローン・ミサイル攻撃は合計で8278飛来(ドローン8073機+ミサイル205発)でした。これは先月の2026年4月(分析記事)の6726飛来(ドローン6585機+ミサイル141発)を大幅に超えており、過去最大を3カ月連続で更新しています。空襲報告の出典:ウクライナ空軍司令部

※なお対独戦勝記念日の休戦として5月9日~11日の三日間が設定され、これにより5月11日は長距離攻撃の飛来はゼロだったものの、ただし止まっていたのは長距離攻撃のみで、前線での戦闘は全く止まっていなかった。

ロシア軍の長距離ドローン・ミサイル攻撃の飛来数

筆者作成図:ロシア軍の長距離ドローン・ミサイル攻撃の飛来数。青色:ドローン、橙色:ミサイル:2025年6月~2026年5月

※飛来数で見るとドローンが攻撃の主力かと錯覚するが、後述の「突破数の打撃力換算」で年間の推移を見ると、ミサイルの打撃量が攻撃の成果の半分を占めている。

○2026年5月:8278飛来7534排除 

各種ミサイル:205飛来112撃墜23未到達 ※阻止率66%

  • 高速ミサイル:96飛来24撃墜22未到達 ※阻止率48%
  • 低速ミサイル:109飛来88撃墜1未到達 ※阻止率82%

各種ドローン:8073飛来7399排除 ※阻止率92%

  • シャヘド型自爆無人機の推定数は5月3日で報告停止 
  • ジェットエンジン搭載型シャヘド自爆無人機:19回報告
  • バンデロール徘徊弾薬:2回報告(5月14日、5月24日)

※Kh-31Pはカウントせず:5月15日にKh-31Pが5飛来0撃墜5未到達の報告(宇空軍)があるが対レーダーミサイルという戦術用途上、当記事では長距離攻撃から除外する。

※高速ミサイル:超音速以上を発揮する弾道ミサイルと転用ミサイル(地対空ミサイルの対地攻撃転用など)を纏めて「高速ミサイル」と分類する。

※低速ミサイル:亜音速巡航ミサイル。高速ミサイルとの比較の意味での低速。

※排除:ここでは撃墜ではなく電子戦での無力化を指すが、囮無人機の燃料切れ墜落による「未到達」も含む。

※徘徊弾薬:自爆無人機の別の呼び方だが、バンデロールは実質的に小型巡航ミサイル。ただし宇空軍は無人機の枠に入れている。

※シャヘド推定数の報告停止:2026年5月3日を最後にシャヘド136自爆無人機の推定数の報告が停止している。この推定数は2025年7月10日に初登場して2025年9月8日(記事)以降からずっと続いていたが、もともと囮無人機との見分けが困難で不正確な数字だった。

  • 2026年5月24日:合計690飛来(ドローン600機+ミサイル90発)67突破
  • 2026年5月18日:合計546飛来(ドローン524機+ミサイル22発)39突破
  • 2026年5月14日:合計731飛来(ドローン675機+ミサイル56発)48突破
  • 2026年5月13日:合計892飛来(ドローン892機+ミサイル0発)71突破
  • 2026年5月05日:合計175飛来(ドローン164機+ミサイル11発)23突破
  • 2026年5月03日:合計510飛来(ドローン502機+ミサイル8発)33突破※
  • 2026年5月02日:合計390飛来(ドローン390機+ミサイル0発)28突破
  • 2026年5月01日:合計619飛来(ドローン619機+ミサイル0発)41突破

※5月の大規模攻撃。なおドローンは対独戦勝記念日の停戦期間(5月9日~11日)の5月11日を除いて毎日飛来している。

※5月3日の33突破は暫定数値。詳しい説明はリンク先の記事を参照。なお当記事での5月分集計の分析ではこの暫定数値は採用しない。

高速ミサイル5月傾向:先月の2倍飛来も2割が未到達

  • オレシュニク中距離弾道ミサイル×1飛来0撃墜
  • イスカンデルM弾道ミサイル×23飛来1撃墜3未到達
  • イスカンデルM弾道/S-400転用ミサイル×63飛来23撃墜19未到達
  • キンジャール空中発射弾道ミサイル×6飛来0撃墜
  • ツィルコン極超音速巡航ミサイル×3飛来0撃墜

○高速ミサイル合計:96飛来24撃墜22未到達50突破 ※阻止率48%

※S-400:地対空ミサイルを対地攻撃転用したもので準弾道飛行で超音速を発揮する。イスカンデルM弾道ミサイルと種類判別が出来ずに纏めて集計報告。

※5月24日のミサイル未到達19発は種類の報告が無い(宇空軍)が、ここでは全てS-400が外れたものとして扱う。

①北朝鮮製KN-23弾道ミサイルの飛来報告無し

 2026年1月~4月と同じく5月も北朝鮮製KN-23弾道ミサイルの飛来報告がありません。ただしレーダー観測ではロシア製イスカンデルMと見分けが付かない筈なので、実際に未飛来なのかははっきりしていません。

②S-400地対空ミサイル対地攻撃転用の使用

  • 2026年5月:63飛来23撃墜19未到達(4回)
  • 2026年4月:31飛来8撃墜(2回)
  • 2026年3月:33飛来25撃墜(3回)
  • 2026年2月:89飛来38撃墜(4回)
  • 2026年1月:66飛来29撃墜(6回)

 「イスカンデルまたはS-300/400」の飛来が1月から継続しており、最近の特徴となっています。5月24日にはこれが30発も飛来する異例の事態となりましたが、このうち19発が未到達で外れた(推定)という異例続きの事態になっており、おそらく外れたのはS-400だろうと推定されます。本来は対地攻撃用ではない対空ミサイルを転用している以上、効果的な攻撃ができる運用方法ではないのでしょう。

③ツィルコン極超音速巡航ミサイルの飛来

  • 2026年5月:3飛来0撃墜(1回)
  • 2026年4月:飛来無し
  • 2026年3月:4飛来1撃墜(2回)
  • 2026年2月:16飛来10撃墜(4回)
  • 2026年1月:3飛来0撃墜(2回)
  • 2025年合計:2飛来0撃墜(2回)
  • 2024年合計:4飛来1撃墜(4回) ※2月7日初確認

 これまで試験投入レベルだったツィルコンが2月に16発と纏まった数が投入されて量産開始かと思われましたが、再び低調な飛来数に戻っています。しかし昨年までは年間通して数発だけ使用の試験投入レベルだったものが現在は月間数発となっているので、低調ながらも量産には入っている可能性があります。

④オレシュニク中距離弾道ミサイルの飛来

 この戦争で通算3回目のオレシュニクの使用が5月24日に確認されています。なお大きな被害は報告されておらず、使用数自体が極端に少ないので、現状では政治的な威嚇の意味で発射されているに過ぎません。戦局には影響を与えないでしょう。

高速ミサイル(弾道ミサイル+転用ミサイル)の飛来数

筆者作成図:ロシア軍の高速ミサイルの飛来数の推移。黄色:弾道ミサイル、青色:転用ミサイル、緑色:弾道ミサイルと転用ミサイルの混在:2025年6月~2026年5月

※2026年1月から「イスカンデルM弾道ミサイルまたはS-300/400地対空ミサイル対地攻撃転用」という報告が増えているため、これを「混在」と分類する。

※ツィルコンは極超音速スクラムジェット巡航ミサイルだが短距離弾道ミサイルと同等の高速性を発揮する対地・対艦両用の兵器なので、ここでは弾道ミサイルのカテゴリーに入れている。

 高速ミサイルは開戦初期に混乱して正確な集計が出来なかった時期を除いて、2026年2月(143飛来)が最大記録です。なお高速ミサイルの阻止率については敵が高速目標を迎撃可能なパトリオット配備地域を狙ってくるかどうかで大きく変動するので、個別の高速ミサイル飛来地域とパトリオット配備推定地域を勘案しながらでないと迎撃戦闘の傾向は分かりません。また2026年5月分は飛来したミサイルの2割以上が迎撃するまでもなく未到達で外れており、飛来数は多かったものの実質的な脅威数は年間平均以下の数字となっています。

低速ミサイル5月傾向:先月と同程度の規模

  • Kh-101/イスカンデルK/カリブル巡航ミサイル×54飛来44撃墜
  • Kh-101巡航ミサイル×41飛来34撃墜1未到達
  • イスカンデルK巡航ミサイル×8飛来4撃墜
  • Kh-59/69空対地ミサイル×5飛来5撃墜
  • Kh-35空対艦ミサイル×1飛来1撃墜

○低速ミサイル合計:109飛来88撃墜1未到達20突破 ※阻止率82%

※5月24日の巡航ミサイルは三種類まとめて報告されている(宇空軍)が、これは飛行途中で細かい種類の識別の維持が困難になったため。

※Kh-35空対艦ミサイルは対地攻撃転用だが、当記事では亜音速巡航ミサイル扱いとする。

巡航ミサイルの飛来数(撃墜数+未到達+突破数)

筆者作成図:ロシア軍の巡航ミサイルの飛来数の推移。灰色:撃墜数、薄橙色:未到達、桃色:突破数:2025年6月~2026年5月

巡航ミサイル阻止率(%)の推移

筆者作成図:巡航ミサイル阻止率(%)の推移:2025年6月~2026年5月

 巡航ミサイルは先月と同程度の飛来規模で、阻止率はやや下がっていますが年間平均以上の数字です。

各種ドローン5月傾向:過去最大の飛来数、高い阻止率

  • 各種ドローン:8073飛来7399排除674突破 ※阻止率92%
  • ジェットエンジン搭載型シャヘド自爆無人機:19回報告
  • バンデロール徘徊弾薬:2回報告(5月14日、5月24日)

※5月3日の宇空軍の発表では当日の集計報告の発表時点で「攻撃は続いており、数十機の敵ドローンが滞空中」と報告(宇空軍)されている。そのためこの日の攻撃の分析(記事)では暫定的に筆者推定で33突破と紹介したが、後日になっても宇空軍からは正確な数は発表されなかったため、今回の5月分集計記事では暫定数値は採用せず、数十機の滞空中だった機体は全て突破したものとして計算する。ただし実際には報告時点で滞空中だった目標はほぼ全て阻止している可能性が高い。

※シャヘド136自爆無人機、ガーベラ囮無人機、イタルマス自爆無人機、パロディ囮無人機がウクライナ空軍司令部の集計報告にほぼ毎回記載されている。

※ただしイタルマスの報告は実際には同じ特徴を持つデルタ翼フロントエンジン牽引プロペラ式のBM-35自爆無人機である可能性が高い。

※5月初旬からパロディ囮無人機の投入が数カ月ぶりに再開。

※ジェット型シャヘド自爆無人機(仮称ゲラン4)も5月は大半の報告に登場しているが、飛来数の詳細な報告は無く、全体の飛来数のごく一部。

※バンデロール徘徊弾薬は技術的に見れば小型巡航ミサイルだが、宇空軍は集計上、ジェット型自爆無人機扱いとしている。

長距離ドローン攻撃の飛来数(排除数+突破数)

筆者作成図:ロシア軍の長距離ドローン攻撃の飛来数(灰色:排除数、青色:突破数):2025年6月~2026年5月

ドローン阻止率(%)の推移

筆者作成図:長距離ドローン阻止率(%):2025年6月~2026年5月

長距離ドローン攻撃の突破数

筆者作成図:ロシア軍の長距離ドローン攻撃の突破数:2025年6月~2026年5月
  • 2026年05月:674突破:8073飛来7399排除 ※阻止率92%
  • 2026年04月:724突破:6585飛来5861排除 ※阻止率89%
  • 2026年03月:629突破:6462飛来5833排除 ※阻止率90%
  • 2026年02月:649突破:5059飛来4410排除 ※阻止率87%
  • 2026年01月:732突破:4452飛来3720排除 ※阻止率84%
  • 2025年12月:984突破:5131飛来4147排除 ※阻止率81%
  • 2025年11月:886突破:5446飛来4560排除 ※阻止率84%
  • 2025年10月:1077突破:5298飛来4221排除 ※阻止率80%
  • 2025年09月:736突破:5585飛来4849排除 ※阻止率87%
  • 2025年08月:697突破:4132飛来3435排除 ※阻止率83%
  • 2025年07月:723突破:6297飛来5574排除 ※阻止率89%
  • 2025年06月:757突破:5438飛来4681排除 ※阻止率86%

参考:囮無人機が混じっていない2024年6月以前(1年分)

○2023年7月~2024年6月:682突破:4433飛来3751撃墜

  • 1カ月分平均:約57突破:約369飛来約313撃墜 ※阻止率85%

※囮無人機は2024年7月から確認され始め、2024年10月から大規模投入が始まる。

 長距離ドローン攻撃については今月の2026年5月(8073飛来)が過去最大数で、次点は2026年4月(6585飛来)です。ただし長距離ドローンの突破数でみると過去最大は2025年10月(1077突破)であり、次点は2025年12月(984突破)になります。

突破数の打撃力換算(青:ドローン、橙:ミサイル)

筆者作成図:ロシア軍の長距離ドローン・ミサイル攻撃の突破数の打撃力換算(青色:ドローン、橙色:ミサイル):2025年6月~2026年5月
  • 2026年05月:打撃力137.4点(ドローン67.4点+ミサイル70点)
  • 2026年04月:打撃力124.4点(ドローン72.4点+ミサイル52点)
  • 2026年03月:打撃力98.9点(ドローン62.9点+ミサイル36点)
  • 2026年02月:打撃力181.9点(ドローン64.9点+ミサイル117点)
  • 2026年01月:打撃力138.2点(ドローン73.2点+ミサイル65点)
  • 2025年12月:打撃力151.4点(ドローン98.4点+ミサイル53点)
  • 2025年11月:打撃力203.6点(ドローン88.6点+ミサイル115点)
  • 2025年10月:打撃力215.7点(ドローン108.7点+ミサイル107点)
  • 2025年09月:打撃力131.6点(ドローン73.6点+ミサイル58点)
  • 2025年08月:打撃力118.7点(ドローン69.7点+ミサイル49点)
  • 2025年07月:打撃力145.3点(ドローン72.3点+ミサイル73点) 
  • 2025年06月:打撃力143.7点(ドローン75.7点+ミサイル68点)

○1年分合計:打撃力1835.8点(ドローン972.8点+ミサイル863点)

※打撃力換算はミサイルとドローンの弾頭重量差を10倍とする。突破して来たミサイル1発を打撃力1点、ドローン1機を0.1点と計算する。

※「突破数の打撃力換算」では突破して来たドローンは爆発した以上は全て自爆無人機と見做せるので飛来傾向の判断材料として正確性が高い。また実際に与えた被害量の大まかな把握ができる。

 2026年5月は飛来数では8000を超えて過去最大でしたが、突破した打撃量で見ると上位ではないことが分かります。これは5月はウクライナ防空網が善戦して敵ロシアの低速ミサイル・ドローンに対する阻止率が約92%と非常に高い数字を発揮したことによるものです。高速ミサイルに対してはパトリオット未配備地域を狙われたら対処しようがないのですが、首都キーウではパトリオット部隊は善戦しています。今のところは迎撃ミサイルが極端に不測している兆候は出ていません。

パロディ囮無人機が5月初旬から数カ月ぶりに本格投入を再開

ウクライナ国防相顧問セルヒー・フレッシュ・ベスクレストノフ氏のFacebookよりパロデイ囮無人機の報告

※5月3日:ウクライナ国防相顧問セルヒー・フレッシュ・ベスクレストノフ氏のパロデイ囮無人機の報告:出典Facebook

※5月5日:ウクライナ空軍司令部のパロデイ囮無人機報告:出典Facebook

※関連記事:囮無人機「パロディ」について2024年11月11日の記事(その1)(その2

仮称ゲラン4(ジェット型シャヘド)

ウクライナ国防省情報総局が運営するサイト「War & Sanctions」より仮称「ゲラン4」無人機の武器構成要素

MiG-29戦闘機が空対空ミサイルでシャヘド自爆無人機を撃墜

ウクライナ空軍のIRIS-T SLS防空システム

ウクライナ空軍第540対空ミサイル旅団のFacebookよりIRIS-T SLS防空システム

IRIS-T SLSで撃墜したロシア軍のKh-101巡航ミサイルの残骸

上記のIRIS-T SLS防空システム撃墜したロシア軍のKh-101巡航ミサイルの残骸

※ウクライナ空軍第540対空ミサイル旅団のFacebookよりIRIS-T SLS防空システムで撃墜したロシア軍のKh-101巡航ミサイルの残骸。2026年5月8日公開(出典

※ドイツから供与されたIRIS-T SLS防空システムの実戦運用の姿が写真で報告されたのはこれが2回目。

5月24日攻撃時、ロシア軍のKh-101巡航ミサイルを撃墜

※Kh-101巡航ミサイルに携行地対空ミサイルが直撃するも空中では完全に破壊しきれず、エンジンを破壊されたKh-101が墜落していく。この後に地表に着弾するも弾頭は不発だった。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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