NY連銀総裁、GDP成長率は1%未満に-インフレ率は4%に加速も
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、米国の関税政策と移民の減少により、経済成長の鈍化と失業率の上昇、インフレ加速を予想していると述べた。
ウィリアムズ氏は、消費者および企業のマインドが最近急激に低下していることを強調した。米国の貿易相手国に対する関税を巡りトランプ大統領の計画が劇的に変化し、米国および世界の金融市場の変動が激しくなっている。
同総裁はプエルトリコのサンフアンでのイベントで講演。事前に配布された原稿によると、「経済見通しに関する不確実性は多くの要因を反映しているが、関税や貿易政策が経済に与える影響は間違いなくその最たるものだ」と述べた。
同時に、経済データは金利据え置きを正当化するのに十分、堅調だとも話した。
さらに「労働市場が堅調で、インフレ率が依然として2%の目標を上回っていることを踏まえると、金融政策の現在の控えめな引き締めスタンスは完全に適切だ」と主張。「重要なのは、このスタンスによって、今後のデータや動向を判断する機会が得られることだ」と続けた。
トランプ大統領は今週、複数の国に対して上乗せ関税を90日間停止することを承認した一方、中国に対しては関税率を125%に引き上げた。トランプ政権は不法移民取り締まりを強化する政策も実施している。
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ウィリアムズ氏は「移民の減少による労働力人口の伸び鈍化に加え、不確実性と関税の複合的な影響を考慮すると、実質国内総生産(GDP)成長率は昨年のペースから大幅に減速し、おそらく1%を下回るだろう」と述べた。
失業率については、成長鈍化により、今後1年で4.5-5%に上昇するとの見通しを示した。現在は4.2%。
今年のインフレ率については、関税引き上げにより、3.5-4%前後まで上昇すると予想した。米金融当局が重視する個人消費支出(PCE)価格指数は2月に前年同月比2.5%上昇。
米金融当局は今年に入ってから政策金利を据え置いており、トランプ大統領の政策がどのような影響をもたらすのかを明確に把握しようとしている。金融当局はインフレ率の上昇が長期的に続く可能性を警戒し、インフレ期待を抑制することの重要性を強調している。
ミシガン大学の消費者調査によると、5-10年先のインフレ期待は4.4%に上昇、1991年以来の高水準となった。3月は4.1%だった。ミシガン大によれば、消費者の約3分の2はインタビュー中に自発的に関税に言及した。
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ウィリアムズ氏は、長期的なインフレ期待は安定しているとしながらも、データを注視していることを示唆した。
「このような混乱と不確実性の時期においては、しっかりと抑制された長期的なインフレ期待は、持続的な物価安定を確保するために極めて重要だ」と述べた。「最大限の雇用とインフレ率を長期的な目標である2%に戻すという目標を追求するにあたり、インフレ期待をしっかりと抑制し続けることは極めて重要だ」と続けた。
原題:Fed’s Williams Downgrades Growth Outlook, Ups Inflation Estimate(抜粋)