もしアイロボットが倒産したら、あなたの「ルンバ」はどうなる?--「事業継続難しい」と同社表明
かつてロボット掃除機で圧倒的なシェアを誇ったアイロボットが、今や深刻な財務問題を抱え、先行きが不透明な状況にある。いったい何故ここまで追い込まれたのか。そして、もし同社が倒産した場合、あなたのルンバはどうなるのか?
iRobotは、かつてロボット掃除機の代名詞ともなった「ルンバ」シリーズで市場を席巻した。しかし、同社の業績は深刻だ。同社が米証券取引委員会(SEC)に提出した資料によれば、今後12カ月間の事業継続すら危ういことが示されている。
実際、iRobotは2024年に全従業員の40%をレイオフし、採用を抑制し、オフィスの閉鎖や一部をサブリースに回すなど、あらゆるコスト削減策を講じてきた。その結果、約1億2640万ドルの経費を削減したが、それでも財務は安定していない。
そこで同社は、ロボット掃除機での再浮上を目指し、新機軸のルンバを打ち出した。同シリーズでは、競合する中国メーカーのRoborockなどが取り入れている2枚の回転モップパッドなどを搭載し、ユーザーに機能面でアピールしようとしている。
しかし、この新製品がもし期待ほど売れなかった場合、会社の存続が困難になる可能性が高いと書類には明記されている。監査担当者も「iRobotが今のまま事業を継続できるか疑わしい」という見解を示しており、iRobot自身もほかの企業への売却や合併、新たな融資の確保など、さまざまな選択肢を模索している。
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もしiRobotが本当に事業をたたむ場合、ユーザーがすでに保有しているルンバはどうなるのか。
まず、ルンバ自体はオフラインでも最低限の機能で動くため、電源を入れてボタンを押せば掃除は可能だ。ただ、クラウドサーバーに依存するようなアップデートやスマートホーム連携(AlexaやGoogleアシスタントからの音声操作など)はサポートが切れるだろう。アプリのバグ修正やセキュリティ更新が止まるため、ネットワークにつないだままだと脆弱性が放置される可能性もある。
さらに、交換用フィルターやブラシ、ダストバッグなどの部品を入手するのも難しくなり、サードパーティに頼るしかなくなるだろう。
なぜiRobotはここまで経営が苦しくなってしまったのか。大きな要因としては、市場の変化によって借り入れの返済が厳しくなり、ロボット掃除機市場での地位も中国メーカーの台頭によって脅かされたことだ。同社は2023年、Amazonとの合併審査中の資金繰りを支えるため、カーライル・グループから2億ドルの融資を受けた。しかし結局、Amazonによる買収話は破談し、負債だけが残った。
大規模なレイオフを含むコスト削減もむなしく、2024年の収益は2023年比で23.4%減の6億8180万ドルに落ち込み、資金繰りはさらに悪化した。融資条件の一時的な猶予を得るために追加費用や株式ワラントを発行し、現在は2025年5月6日までなんとか延命している状況だ。しかし、もしその期限までに融資先との合意を延長できなければ、デフォルト(債務不履行)に陥る恐れがある。
こうした苦しい状況について同社は、ロボット掃除機市場における中国企業の攻勢、消費需要の低下、さらに世界的な経済動向などが要因だと説明している。iRobotとしては、新製品ラインナップの成功とともに有利な売却先や合併先を見つけることで打開を図りたい考えだ。
結論として、iRobotが今すぐ倒産する可能性は高くはないが、もしそうなった場合、ルンバは最低限の掃除機能は保ちつつもアップデートやサポートが受けられなくなり、パーツ供給も厳しくなると想定される。今後の新製品が市場でどう受け止められるかが、同社の明暗を分けるカギになりそうだ。
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この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。