ゴールドマンがドル予想引き上げ、約5%上昇へ-揺るがない米国経済

ゴールドマン・サックス・グループは、米次期政権下で、金融緩和のペースを遅らせる高関税の導入可能性や、米国経済の堅調さを理由に、ドル上昇の見通しを上方修正した。

  カマクシャ・トリベディ氏らゴールドマンのストラテジストは、リポートで「新たな関税の実施と良好に推移する米国経済により、今後1年でドルは約5%上昇する」との見通しを示した。上方修正をしてもなお、「リスクはドル高方向にみている」という。

  ゴールドマンによるドル予想の上方修正は約2か月ぶり2度目。背景には米国の堅調な成長と、トランプ次期大統領が計画している関税導入がある。これらはインフレ率を押し上げ、米金融当局の金融緩和政策を逸脱させるなどのリスクがある。

  10日に発表された米雇用統計が市場予想を大幅に上回り、労働市場の回復力を裏付ける内容だったことで、ドル高の予想がさらに強まり、ユーロや豪ドルなど他の通貨に対するドルの見通しも上昇した。

  ゴールドマンの最新の見通しでは、ユーロが6カ月以内に対ドルで1ユーロ=0.97ドルとパリティー(等価)を下回る水準まで下落するとみている。これまでは1.05ドルと予測していた。ユーロが前回対ドルでパリティーを下回ったのは2022年。ロシアによるウクライナ侵攻が欧州のエネルギー危機を引き起こし、景気減速の懸念が高まった頃だ。

  一方、ポンドの6カ月までの予測は、以前の1ポンド=1.32ドルから1.22ドルに引き下げた。ポンドは13日に一時0.7%下落し、1.2126ドルと2023年11月以来の安値となった。

  ゴールドマンは昨年9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)が約4年半ぶりの利下げを決定した直後に、様々な通貨に対するドルの予測を引き下げていた。だが、ブルームバーグのドル指数は、昨年9月の安値から8%余り上昇している。

  ドルの優位性は13日、対アジア通貨でも同様に示された。インドネシアとフィリピンの通貨に対してドルは少なくとも0.5%上昇し、インド・ルピーは対ドルで最安値を記録した。また、中国政府が口頭での警告や資本規制の強化を通じて人民元の下支えを強化したものの、人民元は本土市場で最安値に近い水準にとどまっている。

  ヘッジファンドを含む投資家はドルに対して強気の見方をしているようだ。ブルームバーグがまとめた米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、ドルのポジショニングは2019年1月以降で最も強気となっている。

  ゴールドマンのストラテジストらは、今後さらにドル高が進むリスクがあるとみている。リポートではその理由の一部として、関税が引き上げられても米経済が引き続き堅調な可能性や、金利に敏感な経済へのより大きな打撃が挙げられると指摘している。

原題:Goldman Sees Dollar Rallying 5% or More as US Growth Dominates(抜粋)

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