「91日後」トランプ関税再開で日本経済どうなる? データが示す悪影響《楽待新聞》

5/7 19:00 配信

世界経済の不確実性が日を追うごとに高まっている。保護主義的な政策を掲げるトランプ政権の動向に加え、米中による関税戦争の再燃は、グローバルなサプライチェーンや貿易に多大な影響を与える懸念材料となっている。2019年当時、米中貿易摩擦が世界経済に与えた影響を考えると、今回のトランプ関税の動向は企業業績にとって大きなリスク要因となる。帝国データバンクが実施した2つの調査結果から、日本経済の先行きを予測してみたい。■2025年度の倒産件数「5%増」の予測1つめのデータは、トランプ大統領による相互関税が2025年度の日本経済に与える影響を独自のマクロ経済予測モデルを用いて試算した結果だ。日本に対する24%の相互関税発表から91日後に、関税率が当初公表通りの24%に戻った場合(4月上旬発表、現在は90日間の一時停止中)の見通しは、以下の通りだ。2025年度の日本の実質GDP成長率は従来予測から0.5ポイント低下し、前年度比+0.7%が見込まれる。日本全体の企業の経常利益は減少に転じるなか、2025年度の倒産件数も2024年度(1万70件)を約500件上回る1万574件(前年度比+5.0%)となる見通しである。トランプ大統領が公表した「相互関税」は、各国・関係機関に非常に大きな衝撃を与えるものとなった。米国との関税交渉の行方は予断を許さないが、このまま日本にとって不利な状況が続けば、実質GDP成長率を下押しするとともに、企業の倒産件数の上振れが予測されるなど、経済に与える影響は広範囲に及びそうだ。とくに中小企業にとっては、直接的に海外取引を行っている企業だけでなく、商圏や取引先が国内にとどまる企業であっても、裾野の広い自動車関連をはじめさまざまな経路を通じて影響を受けることになる。------------------------------------------------------------【TDB景気動向調査・企業の声】「米国の関税政策など保護主義的な動きが強くなり、グローバル企業の業績が徐々に悪化する可能性がある」(建設)「米国トランプ関税が今後のしかかってくるため、輸出等が落ち込む恐れがある」(鉄鋼・非鉄・鉱業)「1年後にはトランプ政権による関税対策が各方面で整い、状況は好転するものと考える」(専門商品小売)------------------------------------------------------------企業規模を問わず、コスト構造の見直しや業務プロセスの改善、人的資本の強化、新たな事業領域の開拓など、中長期的には持続的な成長戦略を策定する必要があるだろう。■建設業は「減収減益」の見通し2つめのデータは、帝国データバンクが全国2万6000社超を対象に今年3月実施したアンケート結果だ。2025年度の業績見通し(売上高および経常利益)で「増収増益」を見込む企業の割合は24.6%となり、前回調査(2024年度見通し)から1.7ポイント落ち込み、2年連続で減少した。※帝国データバンク調べ(外部配信先では図表、グラフなどの画像を全て閲覧できない場合があります。その際は楽待新聞内でお読みください)他方、「減収減益」は同0.2ポイント上昇の21.2%と微増ながら2年連続で増加した。また、「前年度並み」が22.1%(同0.8ポイント増)だった。業種別にみると、「増収増益」ではAI技術の進化や官民でのデジタル化投資の加速が期待される「情報サービス」(36.4%)が最も高かった。「化学品製造」(34.7%)、「飲食店」(33.6%)、「人材派遣・紹介」(33.3%)、「農・林・水産」(32.5%)などが上位に並んだ。※帝国データバンク調べ(外部配信先では図表、グラフなどの画像を全て閲覧できない場合があります。その際は楽待新聞内でお読みください)「人材派遣・紹介」は、慢性的な人手不足や労働市場の流動化、雇用制度の見直しなどが派遣紹介ニーズを押し上げた。「農・林・水産」は、コメをはじめ農作物の販売価格高騰による収入増が下支えした。他方で「減収減益」では、「再生資源卸売」(31.7%)が3割超で最も高かった。次いで「専門商品小売」(28.5%)、「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(27.0%)、「機械製造」(25.7%)、「建設」(25.0%)が続いた。※帝国データバンク調べ(外部配信先では図表、グラフなどの画像を全て閲覧できない場合があります。その際は楽待新聞内でお読みください)とくに注目されるのは、「減収減益」の上位に卸売業や製造業が多く並んだ点である。これは、コロナ禍前の2019年当時の状況と酷似しているが、第二次トランプ政権下で再び表面化しつつある米中対立の激化が、世界経済の減速懸念を高めている影響といえるだろう。足元の日本経済は、実質賃金の伸び悩みや消費者の節約志向など、力強さに欠ける面が否めない。◇今年度の企業業績は、業種ごとの二極化がさらに進む一年になりそうだ。トランプ関税をはじめ不確実性が高まる経済情勢の中で、各企業の業績が上振れ傾向となるためには、まずもって個人消費の回復が不可欠であり、可処分所得の増加がカギとなる。

しかし、人手不足や物価上昇の圧力は企業経営の重荷となっており、これらの課題に対して柔軟に対応していくことが下振れリスクの軽減につながるはずだ。

不動産投資の楽待

最終更新:5/7(水) 19:00

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