ドイツ首相、ウクライナの長距離ミサイル生産支援を約束

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画像説明, ドイツのメルツ新首相(右)がウクライナのゼレンスキー大統領をベルリンで歓迎した(28日)

レイチェル・ヘイガン(ロンドン)、ジェシカ・パーカー(ベルリン)

ドイツのフリードリヒ・メルツ新首相は28日、ベルリンを訪れたウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対し、対ロシア防衛のためウクライナが長距離ミサイルを製造することを支援すると述べた。他方、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は同日、ロシア政府はウクライナ政府と2度目の和平協議を行う用意があると発言した。

ウクライナにドイツ製ミサイル「タウルス」を提供するのかという記者団の質問に対し、メルツ首相は「我々は製造について話し合うが、詳細を公に協議するつもりはない」と述べた。ゼレンスキー氏との共同記者会見で発言した。

タウルス・ミサイルの射程範囲は500キロで、他の長距離ミサイルよりもロシア領土の奥深くまで到達する可能性がある。

メルツ首相は記者会見の場でタウルスの名前を出さなかったものの、両国の国防相が28日の内に、長距離ミサイルに関する「覚書」に署名する予定だと明らかにした。

クレムリン(ロシア大統領府)は、ウクライナが使用できるミサイルの射程範囲制限を解除するというあらゆる決定が、政治的合意実現への努力に悪影響を与える、非常に危険な政策変更になるはずだと警告している。

これに対してメルツ首相は、西側同盟諸国は数カ月前に、射程範囲制限の解除を決めていたと強調している。

新首相は、ウクライナ支援について前任者のオラフ・ショルツ氏よりもはるかに積極的な姿勢を示そうとしており、 今のところ成功している。

メルツ首相のミサイル協力計画は詳細がまだ不明だが、クレムリンの怒りを買うかもしれない大胆な声明を積極的に重ねるその姿勢は、ショルツ前政権の慎重さと大きく異なる。

メルツ首相はゼレンスキー大統領との共同記者会見で、ウクライナが支援を必要とする限り支援し続けると約束。ロシアに対しては、今後の和平交渉への参加を拒否したりすれば、「具体的な影響」が出ると警告した。

ゼレンスキー大統領は、戦争解決を目指した協議を「トランプ、プーチン、私」の首脳3人が参加する形で実施するよう呼びかけた。ただし、自分はどういう形式にも対応できると付け加えた。

クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、ゼレンスキー氏のこの案を即座に否定はしなかったものの、そのような会談は「両代表団」の間で「具体的な合意」が得られた場合にのみ可能だと述べた。

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画像説明, ゼレンスキー大統領は、ロシア政府が和平交渉を遅らせていると非難している

一方でロシアのラヴロフ外相は28日、ロシア政府は確かにウクライナ政府と2度目の和平協議を行う用意があると発言した。

ロシア国営タス通信が伝えた声明によると、外相は、次回協議は6月2日にイスタンブールで開催され、ロシア側が和平条件をまとめた「覚書」を提出すると述べた。

ラヴロフ外相は、「和平プロセスの成功に、言葉の上だけでなく心から関心を持つあらゆる人が、ロシアとウクライナの直接交渉の新しい開催を支持するよう期待する」と述べた。

外相は、アメリカのマルコ・ルビオ国務長官にもこの提案は説明済みだと付け加えた。

ラヴロフ外相は以前、ロシアはウクライナの「中立で非同盟で非核化の地位」を保証するつもりだと発言していた。

ロシア側の提案に対してウクライナは、次の会合開催に反対はしないものの、「次回の会合では成果が出なくてはならない」と反応した。

ゼレンスキー大統領はアメリカに対し、ロシアの金融部門とエネルギー部門に制裁を科すよう要請したと明らかにした。ゼレンスキー氏は、トランプ大統領とこれについて協議した際、トランプ氏が「ロシアがやめなければ制裁を科すことになると確認した」のだと話した。

外交的な駆け引きが続くなか、ウクライナ軍は27日から28日にかけてロシア領内の標的に対し、過去最大規模のドローン攻撃を実施したと発表した。一方でゼレンスキー大統領は、ロシアが26日早朝までの3日間で900機以上のドローンを発射したと述べた。

地上では、ウクライナ北東部でロシアの攻撃が拡大している。 ゼレンスキー大統領は、ロシア軍が国境沿いのスーミに兵5万人以上を「集結」させていると述べた。

ロシア軍はこれまでにウクライナ国境沿いで複数の村を制圧。ウラジーミル・プーチン大統領は22日、「安全のための緩衝地帯を国境沿いに設置する」と発表していた。

スーミ州のオレフ・フリホロフ知事は、ロシア軍が四つの村を制圧し、同地域の他の集落近くでも戦闘が続いていると述べた。

開戦から4年目に入ったこの戦争では、すでに数万人が死亡し、ウクライナ東部と南部の大部分が荒廃している。

ロシアは、2014年に併合したクリミア半島を含め、ウクライナ領土の約2割を掌握している。

ゼレンスキー大統領は、モスクワが和平プロセスを遅らせていると非難し、イスタンブールでの会談後、約束していた和平条件に関する覚書をまだ提出していないと述べた。ペスコフ報道官は、覚書は「最終段階」にあると強調している。

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