非核三原則見直し「核共有も検討を」 元政府・自衛隊高官が提言
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政府や自衛隊の元高官らが2日、米国の核兵器による抑止力を高めるため日本が検討すべき点をまとめた提言を発表した。米有識者との議論を踏まえ、日本の非核三原則の一部見直しや米軍の核兵器を日本国内に配備する「核共有」の必要性を提起した。
提言には兼原信克元国家安全保障局次長や山崎幸二前統合幕僚長、河野克俊元統幕長、武居智久元海上幕僚長らが名を連ねた。
3月に開いた米国の有識者との会合での議論をもとにまとめた。米国側はデニス・ブレア元国家情報長官、チャールズ・リチャード元米戦略軍司令官らが参加した。
提言では「持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核三原則のうち「持ち込ませず」の見直しを訴えた。「(敵から)撃ち込ませず」への変更を求めた。山崎氏は記者会見で「日本の置かれている状況や非核三原則について国民的な議論をすべきだ。国民の支持がなければ政策は成り立たない」と語った。
提言では台湾有事などで核の使用まで事態がエスカレートした場合を想定した。日本と米国が協力して作戦づくりや装備の運用を話し合うべきだと主張した。
日米で少数の特別チームをつくり、米国の核戦力と日米の通常戦力を組み合わせた具体的な作戦を検討するよう提案した。核を運用する米戦略軍などに日本の自衛官を派遣し、核戦略や作戦計画に精通する専門家を育成する必要があるとも説いた。
核共有にも言及した。核ミサイルを搭載した米軍の原子力潜水艦の寄港や、自衛隊の戦闘機を活用した米軍の核兵器の運用を検討すべきだと踏み込んだ。
米国はアジアの同盟国に「核の傘」を提供する。日本を攻撃すれば、米国が核を含むすべての戦力で反撃すると宣言し、日本への攻撃を思いとどまらせる「拡大抑止」の考え方だ。日本は核兵器を持たず、核抑止を米国に任せてきた。
日本は唯一の戦争被爆国で核廃絶を前面に訴えてきた経緯があり、核抑止に関する論議がタブー視されてきた。提言は「核抑止と核軍縮の議論が普通の国では並立している。日本は二元対立で捉え、核抑止の議論が深化していない」と指摘した。
トランプ米大統領は同盟国の防衛に対する負担に不満を示す。米国がリスクを取って同盟国に核反撃の能力を十分に提供するか懸念が残る。提言では米国の核による反撃について日米首脳間の意思決定の仕組みも整備が必要だと記した。
3月には折木良一元統幕長をはじめとする防衛省・自衛隊の元幹部らも、日本独自の核に関する戦略的な指針(ガイドライン)をつくるべきだとの提言を発表した。安保関係者が最近になって議論を活発化させている背景に北朝鮮や中国の動向がある。
冷戦期に米国とソ連が互いを攻撃するための戦略核を配備したのと違い、北朝鮮は低出力で飛距離が短い戦術核の開発に力を注ぐ。ロシアはウクライナに対し戦術核の使用をにおわせたことがある。中国も獲得を急いでいるとの見方がある。
戦術核の使用を抑止するため、米国側も中朝に近い地域で核を運用する必要がないのか議論すべきだと専門家は口をそろえる。
韓国は2023年に米国と「核協議グループ(NCG)」を立ち上げた。米国の核の運用に韓国が関与する仕組みを整え、24年に米韓両軍のガイドラインを作成した。
現状、核攻撃に対抗する米軍の手段としては、グアムから核搭載の戦略爆撃機を展開することが考えられる。日本に地上発射型の核ミサイルを配備したり、日本周辺の海空域から核搭載のミサイルを撃ったりできるようになれば、米軍の選択肢は広がる。
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