スカイツリー営業再開 中国では「1か月」閉じ込められたケースも…“本当にあった怖いエレベーター事故”
《無事営業再開との事で良かったです。また遊びに行きます》《当分様子見かな》《失礼ながら大丈夫かな?って思っていました。なんなら今週いっぱい休んだら?って思っていました》《1度だけ行ったけど、もう乗る気はないかなー》
2月22日夜、東京・墨田区の東京スカイツリーで、エレベーターが地上約30メートル地点で急停止した事故。これをうけて総点検と安全対策を講じたうえ、3日ぶりとなる26日から営業がはじまった。再開を喜ぶ声や不安の声など、SNS上ではさまざまなコメントが飛び交った。
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今回の事故では、児童を含む約20人の乗客が、翌午前2時ごろまで約5時間半にわたって閉じ込められた。運営会社の発表によると、電力や信号を送るケーブルが滑車に巻き込まれて破損したことが原因だったという。
通常、カゴ内の非常ボタンを押すと警備員と連絡が取れるはずであったが…乗客が乗ったカゴは定員40名に対し半数程度だったとはいえ、密閉空間での5時間半である。一人あたりのスペースは決して広くはない。不幸中の幸いだったのは、内部に非常用の飲料水や簡易トイレ、ブランケットが備えられていたことだろう。しかし、インターフォンまでもが不通になっていたという報道もあり、救助を待つ人々は不安の極限にいたはずだ。
同施設での閉じ込め事案は2015年と2017年にも発生しており、月2回の点検を継続していた中での事故だった。
命を奪う「扉が開いたままの走行」
幸いにも今回はケガや体調不良などの被害こそなかったとされるが、高層ビルが乱立する都市生活において、私たちはエレベーターと無縁ではいられない。過去の痛ましい事例から、私たちはどのように身を守るべきなのか。
日本のエレベーター事故史上、最も社会的影響が大きかったといわれるのが、2006年に東京・港区の公共住宅で発生した事故だ。
16歳の男子高校生が自転車と共に降りようとした際、扉が開いたままカゴが急上昇し、乗り場の枠との間に挟まれて命を落とした。設置されていたのは世界シェアトップクラスの「シンドラーエレベーター社」製。この事故をきっかけに、同社のメンテナンス体制や設計上の欠陥が厳しく問われることとなった。
この悲劇を受け、国は2009年、扉が開いたままの走行を検知して強制停止させる「戸開(こかい)走行保護装置」の設置を義務付けた。
しかし、安全への道のりは険しい。事故から6年後の2012年、石川県金沢市のホテルで清掃員の女性が同様の事故で亡くなっている。さらに2024年には仙台市のマンションで、降りようとした乗客2人を乗せたままカゴが急上昇し、最上階の天井に衝突して重傷を負う事故が発生している。
いずれも原因はブレーキの摩耗に加え、義務化前に設置された古い機体で「保護装置」が未設置だったことにある。
また、機械の欠陥だけでなく、管理者のミスが重大な事故につながったケースもある。2025年、神戸市の商業ビルでは、医師の男性が4階から昇降路の底へ転落し、死亡した。作業員が修理の際に安全装置を切ったまま元に戻し忘れたことで、「カゴがないのに扉が開く」という恐ろしい状況が生み出されていたのだ。
世界のエレベーター事故
世界に目を向けると、杜撰な管理や不運が極限まで重なりより凄惨な事態に至ったケースが散見される。
2016年、中国の西安でエレベーターに閉じ込められた女性が餓死する事件が起こった。マンションのエレベーターが故障した際、整備担当者が「中に誰もいない」と思い込んで確認を怠り、電源を切って放置。春節を挟んだ約1か月後、修理のために扉を開けると、中で女性が死亡しているのが発見された。壁には助けを求めて爪で引っ掻いたような跡が無数に残っていたという。
2017年にはスペインの病院で、出産を終えたばかりの女性がストレッチャーで運ばれている最中に悲劇に見舞われた。扉が開いた状態で、カゴが突然上昇を開始し、女性は体半分がカゴの外に残されたまま引きずられる形となり、体が二つに切断され亡くなった。安全であるべき病院で起きたこの凄惨な事故は、世界中に衝撃を与えた。
また、2018年にアメリカのシカゴで起きたのは、美しい夜景で知られる100階建ての高層ビルでの惨事。ワイヤーの断裂により、エレベーターが84階分を猛スピードで落下。11階付近で間一髪、予備のワイヤーが止まったことで乗客は奇跡的に全員無事生還したが、救出までの3時間、密室の中で死の恐怖と隣り合わせの時間を過ごした。
自分の身を守るために
このような不測の事態に巻き込まれないために、私たちにできることはあるのだろうか。エレベーターは一度乗り込めば、自分ではコントロールができない。だからこそ、乗る前の「違和感」を見逃さないことが重要、と防災ジャーナリスト。
「普段聞き慣れない金属音や、ガタガタとした不自然な揺れ。あるいは、到着したカゴと床の間に数センチ以上の段差がある。こうした異変を感じたら利用を避けるだけでなく、勇気を持って管理会社へ連絡をしてほしい。それが事故を未然に防ぐことにつながります」(防災ジャーナリスト)
また、安全性の大きな目安となるのが前述の「戸開走行保護装置」だという。設置済みのエレベーターには、入り口付近や内部に装置設置済みのマークが貼られていることが多いので、確認する習慣をつけたい。
ただし、2024年時点で全国の設置率は4割に届いていないのが現状だ。装置が未設置の機体も多いからこそ、年に1回法律で義務付けられている「定期検査報告済証」のチェックも欠かせない。有効期限内の表示があるかを確認することは、そのエレベーターが「正しく管理されているか」を判断する基準になる。
「もし閉じ込められても、決してパニックにならないこと。最も危険なのは、自力で扉をこじ開けて外に出ようとすることだ。転落の恐れがあることや、停止していたカゴが急に動き出せば、挟まれて命を落とすリスクがとても高い。まずはすべての行き先階のボタンを押して、非常ボタンやインターフォンで外部に通報した後は、慌てず救助を待つべきです」(同前)
また、自分がよく使うエレベーターの隅に、水や簡易トイレなどの非常用備蓄ボックスが設置されているかを確認しておくだけでも、いざという時の心構えが変わる。設置されていない場合は、日頃からスマホや水を携帯するように心がけると、万一のときの不安を減らすことができる。
今や生活に欠かせないエレベーターだが、私たちができる最善の対策は、「機械を過信しすぎない」こと。日頃から「もしも」に備えた意識を持って、安全確認を怠らない。その積み重ねが、いざという時に命を守るカギになる。
取材・文/天野那果
デイリー新潮編集部