原油価格急落も、為替は「40年ぶり円安水準」のまま…ドル円が「円高」にならない理由とは?

 週明け27日、原油は急落しました。先週には一時90ドルを超えていたウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は81ドル台に下落しました。

 先週末に、「パキスタンは中断している米国とイランの戦闘終結に向けた交渉の再開を模索している」との報道や、米国は11日から23日まで13日間連続でイランへ攻撃していましたが、トランプ米大統領がイランへの新たな攻撃を行わないよう軍に指示したとの報道などで停戦協議再開への期待が高まり、WTIが下落し、金利が低下しました。

 ドル円は163円台後半から163円30銭台への円高となりました。

 イラン側も米軍による連日のイラン攻撃が中断したことを受け、イランも報復作戦を停止したと明らかにしました。しかし、28日に行われたトランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相との米国での会談に懸念を示し、「米国がイラン攻撃に固執すれば、戦域を拡大する」とけん制しました。

 このように両国の緊張状態はなお続いており、先行き不透明な状況が変わらないことや、今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)、日本銀行金融政策決定会合が控えていることからドル買いが続いている状況となっています。

 米紙ニューヨーク・タイムズはトランプ政権が、防空システム「パトリオット」用ミサイルの枯渇を懸念して、当面の間攻撃を停止すると報じています。また、ニュースサイト、アクシオスによると、トランプ大統領の攻撃停止指示は米中央軍司令官の進言が影響したと報じられています。

 米中央軍司令官はイランが船舶を攻撃する能力が著しく低下したことや、軍事目標のほとんどを攻撃し終えたことを指摘し、ホルムズ海峡周辺で続けてきた対イラン空爆の効果が限界に達したとして、ホワイトハウスや国防総省に作戦停止を進言したと報じています。

 弾薬が尽きた、あるいは効果的な使用を模索という状況が米国で起こっているのなら、米国より戦力が劣るイランでも同じような状況の可能性が推測されます。そうだとすると、今回の停戦協議再開への市場の期待は高まるかもしれません。

 トランプ大統領の攻撃停止指示や和平協議再開への期待から原油は急落しました。27日には80ドル近辺まで下落しています。この動きを受けて、28~29日のFOMCでは、米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派姿勢がやや軟化するのかどうか注目です。

 23日の欧州中央銀行(ECB)理事会では政策金利は据え置かれました。ラガルド総裁は記者会見で、「不確実性は依然として高い。エネルギーショックによるインフレへの影響はまだ完全に表れていない。影響を注意深く監視している」と述べました。

 5月に3.2%だった物価上昇率が6月には2.8%に低下したこともあり、今回は利上げを見送りましたが、原油動向にはかなり注視するタカ派的な構えです。ECB理事会があった23日のWTIは92ドル台で終えています。FRBは現在の80ドル近辺に低下したWTIを意識して、タカ派姿勢を和らげるのでしょうか。

 6月のFOMC時点のWTIは74~75ドル台でした。原油価格を比較すると、FRBのタカ派姿勢は変わらないことが予想されます。しかし、米6月コア消費者物価指数(CPI)が+2.6%と、前月(+2.9%)から低下したとはいえ目標の2%を超えており、一部では利上げに踏み切るのではないかとの見方も出てきているため注意が必要です。

日銀会合では金利据え置きが大勢。「利上げペース加速」の行方

 6月のFOMCでは、声明文から将来的な利下げを示唆する文言が削除され、金利見通しが3月時点の年内利下げ1回から利上げ1回見通しになったため、これまでの利下げ姿勢からタカ派姿勢に転じたことが鮮明となりドル高となりました。

 今回のFOMCでは、前回のような劇的なタカ派転換ではなくても、年内利上げが1回ではなく、2回を示唆するような表現が声明文に盛り込まれるのかどうか、あるいはウォーシュ議長の記者会見で複数回の利上げを思わせるような強いタカ派姿勢が示されるのかどうかに注目したいと思います。

 前回より強いタカ派姿勢でなければ、タカ派姿勢が維持されてもドル高の影響は限定的になることも予想されます。ただ、前回、ウォーシュ議長は先行きを示す文言や発言は示さないと主張しているため、期待できないかもしれません。市場は迷うことが予想されます。

 今回金利見通しはありません。前回の金利見通しでは、ウォーシュ議長を除く18人中9人が年内利上げを見込んでいましたが(従来はゼロ人)、8人は据え置きであり、据え置きは前回の7人から8人へと1人増えていることには留意したいと思います。

 据え置き見通しの参加者が利上げ見通しに転じるのかどうか、あるいは据え置き見通しの参加者が増えるのかどうか、FOMC後の参加者の発言を注視して変化が生じるのかどうか注目する必要があります。FOMC外であれば、自由な発言が期待できるかもしれません。

 30~31日の日銀会合では政策金利据え置きとの見方が大勢です。ただ、先週22日、「日本銀行は利上げペースを半年に1回程度の市場見通しよりも加速させることに柔軟な姿勢」との関係者発言が報道され、一時円高に動きました。

 日銀会合で利上げペース加速について議論が展開するのかどうか、植田和男総裁は記者会見で9月利上げを示唆するのかどうか注目です。

 現在、次回利上げは12月との見方が多いようですが、9月か10月に利上げの可能性が高まると、円高に動く可能性が高まります。

「骨太の方針」では日銀の自主性は脚注で記載されましたが、特別国会の閉会を受けて記者会見した高市早苗首相は、足元の物価動向について「デフレを脱却したといえる状況ではない」と述べ、デフレ脱却宣言については「慎重に判断する必要がある」との認識を示しました。

「デフレ脱却の状況ではない」という発言は金融緩和を正当化するために必要であり、デフレ脱却宣言に慎重な姿勢を見る限り、高市首相の金融緩和を維持したい姿勢に変化はないと読み取れます。このような姿勢の中では、利上げペースの加速はかなり難しいかもしれません。

 また、消費税減税も財政悪化懸念の材料として海外勢は意識しており、円売りの新たな材料になりつつあります。160円台という円安下、日銀の「ビハインド・ザ・カーブ(政策が後手に回っている状態のこと)」リスクや積極財政に伴う財政悪化懸念が払拭されない限り、円安地合いは続きそうです。

 ただ、7月に片山さつき財務相が述べた「事前通告なしの介入」には警戒しておいた方がよさそうです。

アプリで投資を学ぼう

【ポイントGET】トウシルアプリにポイントミッション機能が付いた!

トウシルの公式アプリに「ポイントミッション機能」を追加しました。 記事を読むなどのミッションクリアで楽天ポイントGET!

お金と投資の学びをもっとおトクに。

閉じる×

このレポートについてご意見・ご感想をお聞かせください原油価格急落も、為替は「40年ぶり円安水準」のまま…ドル円が「円高」にならない理由とは?

記事についてのアンケート回答確認

原油価格急落も、為替は「40年ぶり円安水準」のまま…ドル円が「円高」にならない理由とは?

今回のレポートはいかがでしたか?
コメント

本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。 詳細こちら >>

※リスク・費用・情報提供について >>

関連記事: