トランプ政権が日本に迫る防衛費増、GDP拡大で2%達成も不透明に
国内総生産(GDP)の拡大は日本にとって朗報に思える一方、防衛費をGDPの2%に増額する目標の達成にさらに支出を増やす必要があることを意味する。トランプ米大統領から防衛力増強を迫られている日本にさらなる苦難が加わる。
内閣府の11日の発表によると、日本のGDPは昨年、名目ベースで過去最高の609兆円に拡大した。拡大が続けば、GDPに占める防衛予算の割合は縮小し、2027年までにGDPの2%を充てるという日本の目標が危うくなる可能性がある。
今回のGDP発表の1週間前、トランプ大統領が国防総省の次官(政策担当)に指名したエルブリッジ・コルビー氏は上院の承認公聴会で、日本は少なくともGDPの3%を防衛費に充てるべきだと発言した。
現在、日本の防衛費の同割合は約1.4%。コルビー氏の主張に従うなら、既に膨らんでいる予算に9兆円以上が上乗せされることになる。先進国の中で最大の債務を抱える日本にさらに追い打ちをかける。
石破茂首相は5日、参院予算委員会でコルビー氏の発言について問われ、「日本の防衛費は日本が決める。他国に言われて日本の防衛費を決めるものではない」と述べた。
日本政府は22年、23年度からの5年間で防衛力強化に向けて43兆円の拠出を約束し、防衛費の倍増を目指している。これは、防衛費をGDPの1%に抑えるという長年の姿勢からの転換となった。
13日にも米国からさらなる圧力がかかった。トランプ大統領が駐日米国大使に指名したジョージ・グラス氏は13日の上院の公聴会で、「われわれは日本が防衛費を増やすことに焦点を当てるべきだと考えている」と指摘。「私はこれについて日本と協議し、何らかの成果を出すことを楽しみにしている」と語った。
岸田文雄前首相は22年に現行の防衛力整備計画を策定する際、27年度に防衛費と補完する他省庁の関連予算を合わせ、当時のGDP比2%に達する予算措置を講じるよう関係閣僚に指示した。防衛白書によると、同年度の予算水準は策定当時に見込んだ22年度のGDP(約560兆円)の2%(11兆円程度)に達するとしている。
昨年の名目GDPは、デフレ脱却による日本経済の正常化を裏付けるものであり、税収の増加と賃上げの機運を高めることにもつながっている。同時に、名目GDPは各国の防衛支出の目安を測る標準的な指標でもあるため、石破首相にとって財政上の課題を浮き彫りにする。
今週初めには、日本の30年物国債利回りが06年以来の高水準に上昇した。アナリストからは、防衛費増額は財政に大きな影響を与えかねないとの懸念が一因との見方が出ていた。
SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは、トランプ大統領のスタンスを踏まえると「高率の関税適用をてんびんにかけられ、防衛費増額に関して日本が譲歩せざるを得なくなるというシナリオもあり得る」と指摘。債券市場の参加者はこの点に細心の注意を払う必要があるとしている。
原題:Japan’s GDP Growth Imperils 2% Defense Spending Target(抜粋)