後回しになった日大三高|広尾晃「野球のことを中心に、そのほかの話題も」
今日、日大三高がメディアに公表した謝罪文を見ると、野球部員が起こしたこの不祥事、事件が、去年の夏に発覚した広陵高野球部寮の暴力事件とは、大きく異なる進展の仕方をしていることが分かる。そのために、学校側の対応も変化せざるを得なくなっている。
直接警察に
今回の事件は、発覚の段階で大きく異なっていた。広陵高の事件は、事件発生直後に学校側が報告を受けて、それを一応手続きに則って「処理」していた。その処理の仕方は事態を結果的に矮小化し、被害者にとっては、大きな不満の残るものになった。だから被害者側がSNSでの拡散をするに至った。それをメディアが後追いしたのだが、日大三高の事件の場合、動画を拡散された女子高生の家族は、学校ではなく、直接警察に被害届を提出している。なぜそうしたのかは明らかになっていないが、広陵高の事件で、被害の報告を受けた学校側が「事件をもみつぶした」かのようになったことが影響している可能性はあるだろう。
被害生徒の側が「被害を受けた生徒を学校は守ってくれない」という認識を持っていたのだとすれば、そのこと自体が日大三高側にしてみれば、ショッキングなことではあっただろう。
いかに無能で、無力であるか
日大三高側は、警察からの連絡で事件を知った。しかし、学校側はこの期に及んでも、そのことを公表しなかった。警察が、加害者生徒の側を「書類送検」したことが、メディアで報じられて初めて、日大三高側はその事実を明らかにした。動画の拡散が明らかになってから、学校側は警察に相談して、拡散を防止するために努力をした、と弁解しているが、そもそも事件を公表することなしに、動画拡散を防ぐ方法などなかっただろう。こうした不祥事に対して、今の高校がいかに無能で、無力であるかを思い知らされる。日大三高側はこの期に及んでも
「児童ポルノ」に当たる画像を暴力や脅迫を 用いて撮影したり送信させたりした事実はないと聞いております。
と加害者の野球部員を擁護するかのようなコメントをしているが、こうした物言いが、世間の反感を買うことさえ、学校関係者は理解できないのだろう。謝罪文からは、日大三高側の狼狽ぶりがよくわかる。結局、学校側は自分たちの生徒が引き起こした事件であるにもかかわらず、警察から限定的な情報しか与えられず、何の対応もできない状態であることがわかる。
愚かな選択はしなかった
昨夏の広陵高校の事件以降、高校野球部でも不祥事が起こっても、学校側に届けない風潮が広まっているのではないか?学校に届けても、彼らがまず考えるのは「保身」であり、「事件の矮小化」であり、「隠蔽」だ。そのことがはっきりしたから、学校外の公権力に判断をゆだねたわけだ。広陵高の事件とは異なり、被害者側はSNSで拡散するなど、愚かな選択はしなかった。「警察」という利害関係がなく、徹底的な捜査権限と能力を持つ機関にゆだねることで、被害者側にとって納得のいく処分が行われることになるのだろう。
これはおそらく「前例」になっていく。
日本高野連の権威揺らぐ
このような状況では、今回の事件について、日大三高側は、東京都高野連に事件の報告を上げることはできないだろう。学校に入っている情報は、警察からの断片的なものであり、被害者、加害者から独自に入手した情報は、極めて乏しいと考えられるからだ。高校野球の不祥事は、従来、高校から地方高野連、日本高野連と上がり、学生野球協会審査室で処分が決まるが、今回はそのパターンにならない可能性が出てきた。日大三高側は、日本高野連に判断を仰ぐことなく自主的に野球部の無期限活動停止を決めている。これまで日本高野連は、高校野球の「法王庁」のようにふるまってきた。公権力や文科省の息のかかった教育委員会ではなく、学生野球、高校野球が学校や生徒の「罪」を咎め「罰」を与えてきた。高校野球は第三第高野連会長、佐伯達夫の強い意向で、自主独立、自治的な組織としてここまでやってきた。しかし日本高野連の「内向き」で「高校野球大事」の価値観は、もはや通用しなくなっている。今後、高校野球の不祥事は、高野連より先に、警察が動き出すのが一般的になるのではないか?そのこと自身は、望ましいことだと思う。コンプライアンス意識の高まりによって、他者に対する暴力や人権侵害は厳しく非難されるようになった。松本人志の事件のように、一部のモラルの低い連中がこれを擁護することもあるが、一般的には「性暴力」「セクハラ」は、許されない社会になった。
日本高野連が今後も、学校や選手を「罰する」つもりであるならば、その報告の仕方も含めて、新たなルールをつくるべきではないか?