トランプ大統領、新たに7カ国に関税通知-フィリピン20%に上げ
トランプ米大統領は9日、新たに8カ国に対する関税通知の書簡を公表した。これまでの送付分と同じく、米国と通商合意が成立しない場合、8月から新税率が適用されることになる。
当初、世界一律10%の基本税率だけで、上乗せ関税はゼロとされていたブラジルの関税は50%の税率が通知され、7日以降に通知のあった関税率の中で最も高水準となった。
トランプ大統領はブラジル宛ての書簡で、2022年の大統領選での敗北後にクーデターを企てたとしてボルソナロ前大統領が起訴されたことを問題視し、起訴を取り下げるよう当局に要求。「この裁判は行われるべきではない。これは魔女狩りであり、直ちに終わらせるべきだ!」と述べた。
これに対しブラジルのルラ大統領は、同国に対する関税率を一方的に引き上げるいかなる措置にも、相互主義的対応定めた法律に基づき対処するとSNSに投稿。「ブラジルは独立した制度を持つ主権国家であり、他の誰からの指図も容認しない」と指摘した。
そのほか、アルジェリアとリビア、イラク、スリランカに対する関税率は30%、ブルネイとモルドバは25%、フィリピンは20%とされた。税率は総じて4月に発表された当初の関税とほぼ同水準だが、イラクに対する関税は従来の39%から、スリランカは44%からそれぞれ引き下げられた。一方、フィリピンに対する税率は17%から引き上げられた。
トランプ氏はホワイトハウスでのイベントで、今後もさらに関税通知の書簡を送る予定だとし、当初発表を控えていたブラジルについては「われわれに対して全く良い対応をしていない」と不満を示していた。
各国に対する関税率20%=フィリピン
25%=日本、韓国、マレーシア、カザフスタン、チュニジア、ブルネイ、モルドバ
30%=南アフリカ共和国、ボスニア・ヘルツェゴビナ、アルジェリア、リビア、イラク、スリランカ
32%=インドネシア
35%=バングラデシュ、セルビア
36%=タイ、カンボジア
40%=ラオス、ミャンマー
50%=ブラジル
トランプ氏は7日から各国に新たな関税の通告を開始。9日に設定されていた上乗せ関税の導入期限は、大統領令によって8月1日へと延長された。各国は、通商交渉に事実上の時間的猶予が与えられた格好となった。
トランプ氏は8月1日の期限について「100%確定ではない」と含みを残していたが、その後「関税の徴収は25年8月1日から開始される。この日付に変更はなく、今後も変更されることはない」と述べ、期限を堅持する意向を示した。
金融市場は今のところ、新たな関税率の発表を受けても落ち着きを保っており、むしろ関税の発動期限を8月1日に延期したことに注目している。
フォルケンダー米財務副長官は9日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「貿易合意の詳細は8月1日を大きく過ぎてから詰められることになるが、8月1日までに一般的な枠組みを取りまとめることが目標だ」と述べ、期限が過ぎて関税発動となった場合でも交渉が続けられる可能性を示唆した。
ブラジルは、トランプ氏が4月に上乗せ関税を発表した際の最初の対象国・地域リストに含まれていなかったにもかかわらず、関税通知を受け取った最初の国となった。ブラジルへの通知は、主要新興国グループ「BRICS」に対する警告の意味も含んでいる。トランプ氏はBRICSについて、米ドルの基軸通貨としての地位を脅かす存在と見なしている。
またブラジルは、トランプ氏の一連の関税対象の中では異例の存在だ。他のほとんどの国・地域が対米貿易で大きな黒字を計上しているのに対し、ブラジルは米国との貿易で赤字となっている。米商務省国勢調査局によれば、ブラジルは24年に約440億ドル(6兆4400億円)相当の米国製品を輸入した一方、米国のブラジルからの輸入額は約420億ドルだった。
トランプ氏の発表を受けてブラジル・レアルは対ドルで急落し、一時約3%安となった。上場投資信託(ETF)のiシェアーズMSCIブラジルETFは通常取引終了後に一時約2%安で取引された。
原題:Trump Unveils New Tariff Rates, Including 50% Levy on Brazil (2)、Brazil Assets Plunge After Trump Hikes Tariff Rate to 50% (2)(抜粋)