焼き肉チェーン食中毒で14歳の息子亡くした父 無念を晴らす闘い続く
食中毒による営業停止処分に従わずに料理の提供を続けたとして、大阪府内の和食店の経営者ら3人が大阪府警に逮捕された。
国内では毎年1000件前後の食中毒が確認されている。半数近くは飲食店で調理された料理などが原因とされ、中には死者が出たケースもある。
「教訓は忘れられたのか」。遺族は食中毒のニュースを耳にするたびに胸が締めつけられる。
富山県の久保秀智さん(62)は14年前、5人が死亡した焼き肉チェーン店の集団食中毒事件で14歳の次男を亡くした。
息子の無念を晴らすために運営会社の責任を問い続けた。だが思いもよらぬ結末に、今も心の整理はついていない。
誕生日祝いの焼き肉店で
2011年4月22日、家族4人で「焼肉酒家えびす砺波店」(富山県砺波市)を訪れた。前日に誕生日を迎えた次男・大貴さんを祝うためだった。
店を選んだのは大貴さんだ。久保さんが「何が食べたい?」と聞くと、「焼き肉えびす」と元気よく答えた。兄と焼き肉やユッケを喜んで食べていた。
翌日、大貴さんを激しい腹痛が襲った。久保さんや兄にも同じ症状が出た。「大人でも脂汗が出るほどの痛みだった」。大貴さんは嘔吐(おうと)や血便など症状が重く、入院となった。
その次の日には「右手に力が入らない」と訴えた。食中毒の合併症の一つである溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症していた。集中治療室に運ばれ、意識がなくなった。
大貴さんは小学校からサッカーを始め、6年の時にはキャプテンを務めた。中学の部活でも次の主将候補とされるなど、「本当に面倒見のいい子で、小さい子や先輩から可愛がられていた」
入院から半年後の10月22日夜、大貴さんは意識が戻らないまま息を引き取った。
「なぜ息子こんな目に」
入院時に約160センチだった身長は175センチ近くまで伸びていた。通学用に購入していた赤い運動靴も…