驚きの光熱費削減を実現した「快適すぎる家」の秘密!電気代高騰でも怖くない(モダンリビング)
建築家の鹿内さんが2024年に完成させた、平屋の自邸。その最大の特徴は、ZEH(ゼッチ)であることです。 ZEH とは "Net Zero Energy House" の略。高い断熱性能と省エネルギーを実現したうえで太陽光発電などを利用した再生可能エネルギーを創出することにより、エネルギー収支をゼロ以下にした――つまり、家庭で使用するエネルギーのすべてを自らまかなえる住宅のことをいいます。 【写真10枚以上】冷暖房費を大幅カット!高気密・高断熱で1年中快適な「夢のエコ住宅」 光熱費の大幅な削減という経済的なメリットが得られるのはさることながら、何より家族の心身の快適さと健康を守る、そしてSDGsにも貢献する家づくりを果たした鹿内さんからお話を伺いました。
千葉県某所の住宅街。家族と賃貸マンションで暮らしていた鹿内さんはある日、散歩をしているときに神社の隣に売地を見つけ、驚くと同時に即「ここに家をつくろう」と決意したといいます。 それまで設計案件で断熱性能の高い空間づくりに取り組んできた成果を形にし、自身がその効果をより深く体得したいという思いと、かねてより平屋暮らしに憧れていた奥さまの夢を叶えるためです。
コロナ禍中、以前のマンションでの暮らしはきつかったと振り返る鹿内さん。だからこそ気づけたことがあるそう。 「ベランダに椅子を置いて過ごしてみたり、照明を設えてみたり、そこでご飯を食べてみたり。元々は意図していなかった場所をつくったら、室内とはまったく違う開放感が楽しくて、ワクワクしたんです」 その気づきが、外で過ごす時間を日常的に楽しめる家をつくろうという構想につながりました。
取材に伺った際の気温は7℃ほど。寒風吹きすさぶなか、凍えた体で屋内へ一歩足を踏み入れた瞬間、一気に暖かな空気に包まれ心身がほっとほぐれました。 エアコンをまったく使わずして、室温はなんと21.5℃。 断熱性と気密性をしっかり高めた室内では、南向きの高窓から差し込む太陽光の日射熱や、家電が使用時に発する熱、そこにいる人間の体温などをなるべく外に逃がさないだけで、ここまで十分暖かくなるのだそうです。 夏はクーラーを利用することがあるものの、クーラーの効きがよい空間のため弱運転で済み、太陽光発電も盛んになるため電力をまかなえているといいます。
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建物は神社がある西側(写真手前側)に大きく開く形で計画されています。 実は、断熱住宅をつくる際の一般的なセオリーは、東西方向を閉じて朝日や夕日の差し込みを防ぐこと。しかし、鹿内さんはこの土地の環境を生かして景色を楽しめるようにすることの方を優先しました。 朝日が昇っていくのを眺めるときの気分のよさもあれば、夕日を眺めたそがれるときのよさもある。そんな情緒的な豊かさを大事にしたい鹿内さんは「断熱住宅を、自然環境を敵視し遮断するものではなく、自然のありがたくいただけるところをいただき、生活に不利なところはカバーできる、ハイブリッドなものとしてつくっていきたい」と話します。
この家をつくり、暮らしてみて、1年が経ちました。その結果「高気密・高断熱の快適性と価値を深く実感できた一方で、実は外で過ごす時間が増えたんです」とうれしそうに語る鹿内さん。 「外のテラスにいると虫やカエル、鳥などの動物がやってくるので子供たちと遊んだり、迷い込んできた野良猫を飼うようになったり。屋内に閉じこもっていたら得られなかった出会いや気づきがあり、季節を感じる時間も増えました。ちょっと寒いときにこそ外でコーヒーを飲む楽しみもあります」 外が寒くても、すぐに帰れる暖かい場所があるという安心感が、気持ちを外へと向かわせてくれるそうです。
高気密・高断熱の家には、室温を快適に保ちやすく、心身のくつろぎのためによい点はもちろん、ヒートショックのリスクを軽減したり、風邪を引きにくくなったりなど、健康面でも数々の利点が。 「高気密・高断熱の効果は、写真で目に見える形にしてお伝えできるものではありませんが、実際に体感すると格別であることがわかり、自宅への導入を希望する方は確実に増えているところです」 鹿内さんは建築家として、クライアントの要望に応えながら、さらにその先の世代まで長く残っていく建築、これから生まれてくる人々にとっても“いい場所”をデザインしていきたいといいます。 未来の人々が、自然を大切にしながら快適で健康に生きていけるための建築を――鹿内さんの自邸は、持続可能な世界を目指してつくり続けていこうと、自身が考える建築の在り方を体現した家です。