トランプ“iPhone関税”の衝撃度、「半導体課税」はアメリカ経済の最重要部分を破壊(ダイヤモンド・オンライン)
● 注目されていたiPhoneへの関税 二転三転、半導体課税でも影響重大 トランプ大統領は、すべての貿易相手国への10%関税に加え中国や日本など貿易赤字の多い約60カ国・地域への上乗せ課税する「相互関税」を打ち出したが、上乗せ課税発動の「90日停止」を決めた直後の4月11日には、アメリカ税関・国境警備局は、スマートフォンやPCなどの輸入に関して、相互関税の対象から外すと通達した。 これはアメリカの電子業界からの要望に応えるものだといわれ、安堵が広がった。 しかし13日、トランプ政権は、通達はスマートフォンなどが関税の対象にならないことを意味するのではなく、「半導体」という枠内で課税されることになると発表した。 この二転三転は、トランプ関税政策の“めちゃくちゃさ”と限界を象徴するものと言っていい。 トランプ政権による関税政策で、中国を中心に海外での部品調達や生産が中心のiPhoneがどのように扱われるかは、大きな注目を集めていた。仮に課税されると、iPhoneの価格は大幅に上昇する可能性がある。それはアメリカ国民にも他の国民にも、大きな影響を与える。 だが問題はそれだけでない。IT・半導体企業のビジネスの最も本質的な部分に重大な影響を与え、アメリカ経済の最も強い部分、アメリカの強さを実現している部分が大きな影響を受ける。 トランプ氏は、もともとこのような課税の方向を考えていたのかもしれない。 重要なのは、政策転換なのかどうかということではなく、電子製品に課税することが、アメリカ国内企業に重大な影響を与えることだ。
iPhoneへの関税賦課は第1次トランプ政権の時にも問題になったが、Appleとトランプ政権の交渉の結果、iPhoneは対中関税の対象から外された。今回もAppleは早くからトランプ政権と交渉を行っており、そのためにアメリカ国内での投資などを約束していた。 しかし、なかなか結論が得られず、Appleの株価は下落していた。 相互関税の具体案が公表された直後の4月4日にはAppleの株価は約9%下落し、時価総額は3兆3600億ドルから3兆500億ドルへと約3110億ドル(約43.5兆円)減少した。 それだけの価値が1日で消滅したのだから、問題の重要さが分かる。 ● AppleやNVIDIAもコスト負担 ファブレス製造業の世界的分業に打撃 iPhoneの頭脳であるロジック半導体は、Appleが設計し、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が製造する。製造されたチップは、ホンハイ(鴻海)が中国などに持つ工場に輸送され、iPhoneの中に組み込まれる。完成したiPhoneは世界各地に輸出される。 工場における製造作業が行われているのは、アメリカの国外だ。そしてそれがアメリカに輸入される。 この点では、他の製造業の製品と同じだ。例えば中国で作られたおもちゃがアメリカに輸入されるのと同じだ。 ところが、iPhoneにはおもちゃと大きく違う点がある。それはロジック半導体の設計を、アメリカ企業であるAppleが行っていることだ。そしてiPhoneの価値の多くは、この過程で生まれている。 つまり、輸入される製品の価値の一部は、国内の生産者(この場合にはAppleによって)生産されているのである。 おもちゃの場合に、その価値の大部分が中国における労働によって生産されているのと大きく違う点だ。 したがって、関税を課した場合の負担者も大きく違う。おもちゃの場合には、中国からの輸入に関税をかければ、そのコストは、アメリカの消費者と中国の製造企業が負う。 それに対して、iPhoneに関税を課した場合には、それらのほかに、アメリカ企業であるAppleも負うことになる。 NVIDIAも同じだ。NVIDIAが設計し、TSMCが製造する。そして、製品がアメリカに輸入される。その価値の中には、台湾企業であるTSMCが付け加えたものもあるが、アメリカ企業であるNVIDIAが付け加えたものも含まれている。だから、これに関税をかければ、その一部は、アメリカ企業であるNVIDIAが負担することになる。