米オプション市場、清算に「集中リスク」-取引急増で懸念強まる

米オプション市場は6年連続で取引高が過去最高を更新する勢いだが、主要マーケットメーカーの取引を保証する銀行がごく一部に偏り過ぎていることを懸念する声が、著名な業界関係者から出ている。

  米上場オプション取引は全て、中央清算機関であるオプションズ・クリアリング・コーポレーション(OCC)で清算される。OCCは忙しい期間には1日当たり7000万枚超のオプションを処理する。OCCの会員は取引を同機関に持ち込むとともに、顧客が破綻した場合の保証人の役割も担う。

  しかしこの体制の上位は一握りの企業に偏っている。2025年4-6月(第2四半期)には、会員数十社のうち上位5社がOCCのデフォルトファンド拠出額の約半分を占めた。

  市場関係者によれば、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、ゴールドマン・サックス・グループABNアムロ銀行の3行が最大の担い手で、オプション取引のほぼすべてで相手方となるマーケットメーカーのポジションの大半を処理している。大量の取引高が少数の企業に集中する構図は、そのうち1社でも破綻すれば損失が広範に及ぶリスクをはらむ。

  シカゴ・オプション取引所を運営する米Cboeグローバル・マーケッツのクレイグ・ドノヒュー最高経営責任者(CEO)はインタビューで、「清算仲介業務にかなりの集中リスクがあると思う。その点について懸念している」と述べた。銀行名には言及しなかった。

  大手行が破綻する可能性は低いものの、まったく前例がないわけではない。ドノヒュー氏自身も、CMEグループのCEOを務めていた2011年10月、先物ブローカーの米MFグローバル・ホールディングスが破綻した経験を持つ。

  より差し迫ったリスクは、上場デリバティブ(金融派生商品)市場の急拡大を支える銀行の余力がなくなることだ。

  OCCでは10月の1日当たりの平均取引高が前年同月比52%増えた。その結果、マーケットメーカーによる「セルフクリアリング」が増えている。すなわち、マーケットメーカーがOCCの直接会員になるということだ。マーケットメーカーは銀行と比べ資本基盤が弱い点を踏まえると、この手法にも固有のリスクがある。

  BofAとゴールドマン・サックスはコメントを控えた。ABNアムロはコメント要請にすぐに応じなかった。

  OCCは約200億ドル(3兆1000億円)規模に上るデフォルトファンドの負担配分方式について、各ブローカーのポートフォリオの市場リスクをより公正に反映させる形に変更することを提案している。この資金は、会員大手2社が同時に破綻した場合でも他の会員を補填(ほてん)できる規模に設計されている。

  一方、14-25年にOCC会長を務めたドノヒュー氏は、「もし魔法のつえを振って、この分野にもっと競争が生まれ、清算能力が今より分散され、多様で幅広い体制を確保できるなら、市場にとっては明らかに大きなプラスになるだろう」と語った。

原題:Options Market Grapples With ‘Concentration Risk’ in Clearing(抜粋)

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