週1回の注射で血糖マネージメント ― 新登場のインスリン『アウィクリ注』とは?

テーマ:インスリン治療

当コラムで、2023年9月に紹介させていただきました1週間に1回のインスリン製剤がとうとう登場しています。1週間に1回のインスリン製剤が登場する?アウィクリ注は、2025年1月30日から発売されている新しい週1回投与のインスリン製剤です。従来のインスリン製剤は毎日注射する必要がありましたが、アウィクリ注は週に1回の注射で済むため、治療の負担を軽減することができます。

アウィクリ注の主な特徴

1. 高濃度処方

従来の製剤(100単位/mL)と比べて7倍の濃度(700単位/mL)で作られているため、1回の注射で1週間分のインスリンを投与できます。

フレックスタッチという専用の注入器を使用

10単位刻みで投与量を設定できます。ボタンは軽くて押しやすい設計となっています。

3. 保管の利便性

使用中は室温保管が可能で、未使用時は冷蔵庫で保管します。総量300単位は6週間以内、総量700単位は12週間以内の使用期限があります。

4. 基礎インスリン(ベーサルインスリン)製剤

食事と関係がないインスリンである基礎インスリン分泌の低下を補うためのインスリン製剤です。食事の時に分泌される追加インスリン(ボーラスインスリン)の代わりには使用できません。

アウィクリ注の留意点について

1型糖尿病を持つ方へ

  • 臨床試験で従来の毎日投与のインスリンより低血糖の発現が多いことが確認されています
  • ライフスタイルの変化により血糖値が変動しやすいため、持続血糖測定(CGM)などによる慎重な血糖モニタリングが推奨されます
  • 適切な血糖コントロールが困難な場合は、毎日投与のインスリンへの変更を検討する必要があります

2型糖尿病を持つ方へ

  • 1型糖尿病を持つ方と比べるとアウィクリ注による低血糖の発現率は低いですが、従来のインスリン製剤と同程度の低血糖の発現率はあるとされています
  • 血糖値の大きな変動がある方や、低血糖を繰り返し起こす方は慎重な投与が必要です

従来の毎日投与インスリンからの切り替え方法

  • 従来の1日投与量の7倍量を週1回投与します
  • 切り替え時の血糖値上昇を防ぐため、初回投与時のみ計算した投与量の1.5倍量の投与が推奨されます
  • 2回目の投与では7倍量に戻し、3回目以降は血糖値を見ながら調整します
  • 投与は毎週同じ曜日に行います

低血糖について

また、全ての患者さんに共通する注意点として、投与後2~4日目に低血糖が起こりやすい傾向があるため(下図参照)、血糖値の自己測定による慎重な管理が必要です。マラソンや登山など運動量が多い時期や、断食などを定期的に行う方は、主治医と相談の上で使用を検討する必要があります。

図:臨床試験では、アウィクリ注を注射してから2~4日後に低血糖が多く認められました。(ノボノルディスクファーマ株式会社のHP参照)

まとめ

このような特徴を持つアウィクリ注は、インスリン治療が必要な方の治療選択肢を広げる新しい選択肢となることが期待されています。ただし、一人一人の生活スタイルや病状に合わせて、使用を検討することが大切です。

松田友和プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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