「政治生命が終わる」と言われたカミングアウトから20年。再びパレードを歩いた尾辻かな子議員が感じる、変わった社会と変わらない政治
政治家の尾辻かな子さんは2005年、東京レズビアン&ゲイパレード(東京プライドの前身)で宣言した。
当時は大阪府議で、パレード直前に出した著書「カミングアウト:自分らしさを見つける旅」で同性愛者であることを公表したばかりだった。
それから20年。2025年6月8日に代々木公園で開かれた東京プライドで、尾辻さんは衆議院議員として再びパレードを歩いた。
「立法府の人間として20年目をここで迎えられて感慨深い」とハフポスト日本版に語った。
尾辻さんが20年前に同性愛者であることを公表したのは「可視化」のためだったという。
当時は同性愛者を公表している議員はおらず、「同性婚は、当時は政策課題にもなってなかった」と振り返る。
「でもオランダでは2001年、アメリカ・マサチューセッツ州でも2003年には同性カップルが結婚できるようになりました。日本でも進めたいとカミングアウトしました。見える化しないと、問題は見えないままですから」
カミングアウトすると決めた時、周囲からは「政治生命が終わる」と言われたという。
「政治家がセクシュアリティを公表するなんて意味がわからないと言われました。そういう時代でした」
それでも、声を上げないと変わらないという思いは変わらなかったという。
「(同性婚の実現は)立法や条例、議会で決まっていく。ちゃんと当事者がいるということを伝えたかった。当事者がいなければ、社会課題にならない。だから声を上げられる人が上げていこうと思いました」
カミングアウトで政治生命は終わらなかったものの、待っていた反応は「沈黙」だった。
カミングアウトは新聞などで取り上げられニュースにはなったが、まるで何も起きなかったかのように時が過ぎていったという。
「みんな何も言えない、言わない。日本の差別って沈黙なんです。触れない、さわらないですね」
尾辻さんはその後、国政でもLGBTQの権利を推進していかなければいけないという思いから2007年に参議院に立候補。2013年に参議院議員に繰り上げ当選し、2017年に衆議院議員に初当選した。
「見える化」のためのカミングアウトから20年。社会は変わったのだろうか。
尾辻さんは「社会は変わりました。世論も変わった。変われていないのは政治だけです」と話す。
2019年には、同性カップルの結婚の実現(結婚の平等)を求め、性的マイノリティ当事者が全国で国を訴えた。この裁判では5つの高裁すべてで、同性間の結婚を認めないのは違憲という判決が言い渡されている。
また、世論調査でも同性婚に賛成すると回答した人は7割を超えている。
それでも、石破首相らは「国会の議論や訴訟の状況を注視する」という発言を繰り返し、結婚の平等を実現するための法改正の議論は進んでいない。
尾辻さんが所属する立憲民主党と共産党、社民党の議員は2019年に、同性間の婚姻ができるよう民法の一部を改正する「婚姻平等法案」を提出した。
しかしこの法案は、2度にわたり廃案になった。立憲民主党は今国会で3度目の提出を行う予定だという。
法案が審議され、可決されるかどうかは「自民党や公明党、国民民主などの政党が乗ってくれるかどうかだと思う」と尾辻さんは話す。
また、これだけ違憲判決が続く中で、結婚の平等を実現することは政治の責任だとも述べた。
「(与党議員は)最高裁の判決が出るまでは注視と言っていますが、裁判所は違憲だと判断しているのです。今は違憲状態で、本来であればいち早く対処しなければいけない問題です。法案を早く成立させることが、政治の意思として必要だと思います」