外国人が銀座の地下で熱狂 相撲ショー急増で年収2.5倍 元力士争奪戦、朝稽古見学ツアーは悲鳴
まずは相撲そのものの魅力だ。インバウンドの伸長を受け、新規事業を検討し始めたのは2016~17年ごろ。リサーチや訪日客へのヒアリングで高い関心を集めたのが日本の国技・相撲だった。2023年にはNetflixで大相撲を題材にしたドラマ『サンクチュアリ -聖域-』が世界配信され話題に。一方で、「SUMO」の名は知られているものの、実際に大相撲を観戦するとなると、本場所は年6回、開催地も限られ、チケットは争奪戦だ。旅行日程に合わせて“必ず見られる”とは限らない。そこに隙間があった。
次に、顧客のターゲットを欧米市場に集中させたことが挙げられる。訪日客数は韓国、中国、台湾が上位だが、同社の調査では相撲に強い興味を示すのは欧米層だった。広告戦略を絞り、英語圏中心に力を入れたことで、想定通りの集客に成功している。
「大阪で1年やって最終的に6割がアメリカとオーストラリアのお客様でした。残りの4割もイギリスやフランスの方々が多い。中国、台湾、韓国は数パーセントですね」
欧米客は滞在日数に余裕があり、夜の体験型コンテンツを積極的に探していた。一方、アジア圏は短期滞在で「爆買い」に代表されるようにショッピング中心だった。
そして最後は大相撲との差別化だ。伝統を尊重しながらも、ショーではエンターテインメントに徹した。軽快なMCを入れ、女性も土俵に上がれる。かといって、相撲の品位を乱すようなことはしない。大相撲は多くを語らない美学があるが、ショーでは丁寧に解説し、オーバーアクションで笑いを交えて盛り上げる。外国人客の嗜好と絶妙に融合させた。
ショーの拡大は力士のセカンドキャリアにも光を当てる。WAKA(元十両・霧の若)は「生活は安定しますよね。インバウンドでも今まで日本人があんまり相手にしてこなかった世界。改めて思うとすごいこと」と語る。ショー出演前は、プロレスラーとして年間100試合に出場し、一時期トラック運転手もこなしていた。昨年はプロレスと平行し、相撲ショーに240回ほど出演したため、年収は2・5倍に増えた。
MATSUは両ひざのけがで30歳の時に引退した。配達員や解体現場の作業員を経て、焼き肉店を開こうと修行中に声をかけられ相撲ショーに合流した。
「本当は相撲の仕事もアルバイト感覚で、こんなにしっかりやるとは思っていなかった。でも、お客さんに喜んでもらえることが楽しくなって、気づいたらもっと試行錯誤していました。自分が今までやってきた相撲がこんなに喜んでもらえるとは」
大相撲とは全く別の世界観だという。
「すごく騒いでくれて向こうの人たちならではの感じがあって、自分たちも楽しいです。『相撲ってクレイジーだよね。でもかっこよかったよ』って言われるとめっちゃうれしいですね」
勤務は週6日。ただ、ショー出演は原則1日1回とあって、時間も有効に使えている。相撲ショーの普及については、「バブルというか戦国時代に入っている」と指摘。現役を引退した力士の争奪戦も起こっており、「どこも人手不足。うちも欲しい。(引退する力士から)『あ、決まっちゃったんですよね』って声もちょいちょい聞きます」と話した。