「落伍してもやり直せる」旅田卓宗氏 最年少市長、逮捕、獄中トップ当選…43年ぶり県議

街頭で支援を呼び掛ける旅田卓宗氏=9月12日、和歌山市

「アイデア市長」として名をはせ、「腰掛け市長」と批判された。暴力団組長との会談疑惑に揺れ、自らを「ハマの大魔神」になぞらえて市長に返り咲いた。逮捕、獄中当選、服役を経て選挙に挑み続けた旅田卓宗氏(81)が、13日投開票の和歌山県議補選(和歌山市選挙区、欠員3)で43年ぶりに県議へ復帰した。「人生に落伍してもやり直せることを示したい」。昭和、平成、令和をまたぐ政治人生に、また一つ「再起」が加わった。

「アイデア市長」「腰掛け市長」

旅田氏は警察官を経て、昭和45年、25歳で和歌山市議に初当選した。県議を経て61年、41歳で同市長に就任。当時、全国の県庁所在地で最も若い市長として注目された。

空き缶やたばこの吸い殻のポイ捨てを禁じる条例を全国に先駆けて制定。独自の施策を次々と打ち出し、「アイデア市長」と呼ばれた。

平成6年の市長選を前に、当選しても翌年の県知事選に任期途中で出馬すると宣言した。そのまま市長3選を果たしたため、「腰掛け市長」との批判を受けた。

暴力団組長と会談、知事選落選

7年の知事選では、元暴力団組長との会談を撮影したビデオを巡る疑惑が浮上。市議会に地方自治法100条に基づく調査特別委員会(百条委員会)が設けられ、知事選では落選した。

元和歌山市長の旅田卓宗氏

旅田氏は「二度と市役所には戻らない」と公言していた。知事選敗退から約1年後には衆院和歌山1区から出馬したが、再び敗れた。

それでも11年の市長選に立候補し、約3年ぶりに市長へ返り咲いた。当選後には「逆風は強かったが、市民は即戦力を選択した」と語った。

2001年に携帯所持義務、出直し市長選大敗

復帰後も独自の施策を打ち出した。13年には、市幹部約270人にメール機能付き携帯電話を自費で持つよう義務付ける方針を表明。「幹部ともなれば携帯電話を持つのは当然という自覚が必要。この指示に応じないなら管理職から外す」と言い切った。スマートフォンが普及する約10年前だった。

一方、市議会との対立は続いた。公立大学の設置関連議案が否決されると、14年に「市民に信を問う」と任期途中で辞職。出直し市長選に臨んだが、約5万票差で〝大敗〟した。

落選翌月からは支援者と市内の清掃活動を始めた。同年12月の産経新聞の取材に対し、「最初の1カ月は恥ずかしかったが、心の整理ができて、逆にさわやかになった」と述べ、「政治家の基本はまずボランティア精神でなければならない」と語った。

ただ、約4カ月後には政治活動の再開を宣言。「市民は大学構想にノーを言ったわけではない。疑惑では死ねん」と再起への意欲を示した。

「疑惑では死ねん」獄中当選

15年には収賄と背任の容疑で逮捕され、勾留中に市議選へ出馬してトップ当選した。1審で実刑判決を受けた後も、市長選、市議選に立候補。有罪確定による失職と服役、公民権停止を経ても、政治を諦めなかった。

かつて自らをプロ野球の抑え投手、佐々木主浩氏になぞらえ、「市政のピンチにはハマの大魔神は何度も登板する」と訴えた旅田氏。

今年8月の市長選で敗れて約1カ月後、県議として約16年半ぶりの公職復帰を果たすこととなった。(奥原慎平)

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