【速報】「紀州のドン・ファン」死亡 2審も元妻に「無罪」 大阪高裁が検察側の控訴を棄却
「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家・野﨑幸助さん(当時77)は、2018年5月に和歌山県田辺市の自宅で、急性覚醒剤中毒により死亡しました。 この死亡をめぐり、元妻の須藤早貴被告(30)が、致死量の覚醒剤を何らかの方法で経口摂取させたとして逮捕・起訴されました。 1審で検察側は、以下の点などを指摘し、“野﨑さんの死は殺人事件で、犯人は須藤被告以外にありえない”と訴えました。 ▽野﨑さんの死亡前に、須藤被告が覚醒剤の密売人と接触し、致死量を超える覚醒剤を注文。実際に覚醒剤のようなものを受け取った点 ▽「完全犯罪」「老人 死亡」「覚醒剤 過剰摂取」「覚醒剤 死亡」など、薬物や犯罪、遺産相続をめぐる多くの検索履歴が確認された点 ▽死亡当日に野﨑さんが覚醒剤を摂取した可能性がある時間帯(約3時間)に、須藤被告が少なくとも8回、1階から野﨑さんがいる2階に上がった点 一方で須藤被告は、「私は社長(野﨑さん)を殺していませんし、覚醒剤を摂取させたこともありません」として、一貫して無罪を主張しました。
2024年12月の判決で和歌山地裁(福島恵子裁判長)は、まず須藤被告と覚醒剤の関連について、被告が密売人に覚醒剤を注文したことは認定し、“野﨑さんから購入を頼まれた”とする被告の供述は信用できないとしました。 一方で、密売人から受け取ったものが、本物の覚醒剤ではなく氷砂糖だった可能性があると指摘。 また、一連の検索履歴についても「野﨑さん殺害を計画していなければ検索することがありえないようなものとはいえない」としました。 野﨑さん死亡当日に、須藤被告が何度も1階と2階を往復した点も、「2階に被告の私物が置いてあったことも事実で、野﨑さんの死亡とは無関係な理由で行き来していた可能性も否定できない」などと指摘。 「須藤被告が覚醒剤を摂取させて殺害したのではないかと疑わせる事情はあるが、殺害したと推認するには足りない」と断じました。
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そのうえで、野﨑さんと覚醒剤との関わりについて「覚醒剤を常用していたとは考えられないが、人脈も行動範囲も広く、経済的な余裕も十分あったため、他者に依頼して覚醒剤を入手することは可能だった」と指摘。 さらに、野﨑さんと長年交際関係にあった女性の、“死亡の約3週間前までに野﨑さんが「覚醒剤やってるで、へへへ」と電話してきた”という旨の証言について、「覚醒剤摂取で死亡していることからすれば、野﨑さんの発言を一概に冗談と決めつけることはできない」と判断。 「野﨑さんが自殺以外の目的で覚醒剤を使用し、その際に誤って過剰摂取した可能性がないとは言い切れない」としました。 そして結論として、須藤被告に無罪を言い渡しました。
1審判決を不服として、検察側は控訴。 去年12月の控訴審第1回公判で、検察側は「状況証拠が示す事実を個別的・分断的に評価し、それらが重なり合った際の推認力を過小評価している」として、1審判決の破棄を求めました。 弁護側は「この程度の証拠で有罪とされる社会であってはならないという、市民(1審の裁判員)からのメッセージをないがしろにしてはいけない」と訴え、控訴棄却を求めました。 検察側は新たな証拠調べや証人尋問を請求したものの、大阪高裁(村越一浩裁判長)は請求をすべて却下していました。
大阪高裁(村越一浩裁判長)は3月23日の判決で、「野﨑さんに不審感や違和感を持たれることなく致死量を超える覚醒剤を、覚醒剤と知られずに摂取させることは、不可能ではないものの、容易にやり遂げることができるものではない」と指摘。 被告の検索履歴についても、「覚醒剤で死亡させることを考えた行動とみることもできるが、少なくとも明確な殺害計画を立てていたとまでは認定できない」としました。 そのうえで「多数の状況証拠が示す事実が複雑に絡み合う事件だが、1審判決は、それらの事実が持つ推認力を慎重に吟味し、被告が犯人であることについて『常識に照らして間違いない』といえるまでの心証には達しないとして、無罪を言い渡したと認められる。1審において、争点をめぐる当事者双方の攻防も尽くされている」として、1審判決を支持。検察側の控訴を棄却しました。 検察側が最高裁に上告しなければ、須藤被告の無罪が確定します。