インドとパキスタン、停戦合意後に互いが「違反」と非難

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画像説明, 被害を受けた車両の様子(10日、インド政府が直轄地とするジャム・カシミール)

インドとパキスタンは10日、停戦に合意したと発表した数時間後、互いが合意に「違反」したと非難した。

インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方の、インドが直轄支配するジャンム・カシミールにおいて、停戦合意後に複数の爆発があり、インド外務省のヴィクラム・ミスリ次官は「お互いに到達した合意が、繰り返し侵害された」と述べた。

インド側のこの発言から間もなく、パキスタン外務省は「インドが一部地域で違反行為を犯しているものの」、「(パキスタンは)停戦の忠実な履行に引き続き尽力する」と述べた。

インドとパキスタン間の過去4日間にわたる戦闘は、両国間で数十年来最悪の軍事衝突となっている。

両国は4日間の戦闘を経て、全面的な即時停戦に合意したと発表した。

ドナルド・トランプ米大統領は10日朝、自分のソーシャルメディアでこれを発表。アメリカが仲介したと述べた。

これに対してパキスタン外務省はこの後、停戦合意はパキスタンとインドの両国でたどりついたもので、外交交渉には「3ダース」もの国々がかかわっていたと述べた。

しかし、発表から数時間後、インドが実効支配するカシミール地方の主要都市シュリーナガルとジャンムーの住民やBBC記者は、爆発音が聞こえ、空に閃光(せんこう)が走ったと報告した。

インドのミスリ外務次官は「ここ数時間、我々が今晩早くに到達した合意に違反する事態が繰り返された」、「これは本日早朝に合意された内容に違反するものだ」と述べた。

ミスリ氏は、インド軍が「適切な対応を取っている」と述べ、パキスタンに対し「これらの違反に対処するよう要請する」と呼びかけた。

これに対し、パキスタンの外務省報道官は「パキスタンは、本日発表されたパキスタンとインド間の停戦の忠実な履行に引き続き尽力する」と述べた。

「インドがいくつかの地域で違反行為を行っているにもかかわらず、我々の部隊は責任と自制心を持って事態に対処している」とパキスタンの報道官は述べ、 「停戦の円滑な実施に関するいかなる問題も、適切なレベルでのコミュニケーションを通じて解決されるべきだと考える」 、「地上の部隊も自制すべきだ」とした。

カシミール地方のインド支配地域では、数十年にわたる対立で何千人もの命が奪われている。

1947年にインドとパキスタンが分離してイギリスから独立して以降、カシミール地方は分割支配されてきた。どちらも互いにカシミール全域の領有権を主張しており、2度の戦争と限定的な紛争を繰り返してきた。インドとパキスタンは共に核保有国。

インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相は10日、停戦に合意したと認め、両国は「発砲の停止と軍事行動について合意に達した」と述べていた。

「インドは、あらゆる形態、あらゆる表現のテロリズムに対し、一貫して断固とした妥協のない姿勢を貫いてきた。今後もそうしていく」と外相は付け加えた。

その後、パキスタンのシャバズ・シャリフ首相は国民への演説で、停戦は「すべての人々の利益のために」達成されたと述べた。

停戦発表後、マルコ・ルビオ米国務長官は、インドとパキスタンが中立的な場所で幅広い問題について協議を開始することで合意したと述べた。 長官は、自分とJ・D・ヴァンス米副大統領が、インドとパキスタンの両首脳を含む両国の高官らと48時間を過ごしていたと述べていた。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は「紛争の緩和に向けたあらゆる努力」を歓迎すると述べた。

イギリスのキア・スターマー首相は、イギリスは「数日間」にわたり協議に「取り組んで」おり、デイヴィッド・ラミー外相が双方と会談していると述べた。

「本日の停戦成立を、うれしく思う」とスターマー首相は述べ、「今やるべきことは、停戦が確実に永続的なものになるようにすることだ」と強調していた。

最近の戦闘は、リゾート地パハルガムで観光客26人が殺害された事件を受けて両国の緊張関係が2週間続いた後に起きた。

カシミールで4月22日に発生した襲撃では、インド人25人とネパール人1人が死亡。生存者は、武装勢力がヒンドゥー教徒の男性を標的にしていたと語った。

インド国防省は、その後の一連の攻撃について、責任者を「追及」するためのものだと説明していた。これに対してパキスタンは、自分たちは何も挑発していないのに攻撃されているとインドを非難していた。

パキスタンは、インドの空爆と越境砲撃でパキスタンおよびパキスタン実効支配下のカシミールで36人が死亡したと発表。一方インド軍は、パキスタンの砲撃により少なくとも21人の民間人が死亡したと発表していた。

戦闘は8日から9日にかけて激化し、両国は空軍基地やその他の軍事施設を標的にしていると互いを非難していた。

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