米社債スプレッド、27年ぶり低水準に縮小-乗り遅れ懸念の兆し
米社債のバリュエーションが過去27年間で最も割高な水準に達した。米連邦準備制度が来月にも利下げを決めるとの観測が広がる中、投資家がなお高水準にある利回りを確保しようと急いでいることが背景にある。
ブルームバーグの指数データによると、米国債に対する米投資適格級社債の上乗せ利回り(スプレッド)は15日、わずか73ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に縮小し、1998年以降で最小となった。
スプレッドの縮小は、景気鈍化や米国が仕掛けた貿易戦争による企業業績へのリスクにもかかわらず、投資家が現在の金利を確保しようと動き、社債が異例なほど割高になっていることを示している。
債券トレーダーは、インフレが予想通りの水準に収まり、労働市場が軟化していることを示す最近の経済指標を受け、米金融当局が9月にも利下げに踏み切ると見込んでいる。
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米金融当局が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後、インフレ抑制のため金利をゼロに近い水準から引き上げたことで、投資適格級社債の平均利回りは過去3年間、5%を上回る水準にあった。これが大手機関投資家や保険会社、年金基金から旺盛な需要を引きつけ、トランプ大統領による関税措置によって生じた経済的・地政学的な不確実性の中でもスプレッドを抑制する原動力となっていた。
それでも、2022年に米金融当局による積極利上げで相場が急落した際に損失を被った投資家の一部は様子見姿勢を取ってきたと、インベスコの北米投資適格級クレジット責任者マット・ブリル氏は指摘。今では、魅力的な利回りを確保する機会が失われることへの恐れから、買いを急ぐ投資家が出てきているという。
「FOMO(乗り遅れることへの恐怖)が少し出始めている」とブリル氏はインタビューで指摘。「投資家たちが長年望んできた利回りだ」と語った。インベスコは6月末時点で2兆ドルの資産を運用している。
こうした需要は、投資適格級社債に投資するファンドへの記録的な資金流入を後押ししていると、JPモルガン・チェースのクレジットストラテジスト、エリック・バインスタイン、ナサニエル・ローゼンバウム両氏は12日付のリポートで指摘した。
「これらのトレンドは、今年の今後3回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利下げがほぼ織り込まれる中で、強い資金流入の時期に入りつつある可能性を示している」とリポートで分析した。
強い資金流入に対し、正味の供給が少ないことも支えとなっている。近く金利が下がるとの期待から、企業が新たな借り入れを控えているためだ。
原題:US Corporate Bond Spreads Sink to 27-Year Low as ‘FOMO’ Sets In(抜粋)