35℃超えの猛暑日に青空駐車で車内温度50℃超! サンシェードでは防げない!! 実証データでわかった効果的断熱5つの習慣
真夏の炎天下、青空駐車した車内はわずか30分で灼熱空間に変わります。ダッシュボードが80℃近くに達するケースも。本記事では、サンシェードや断熱フィルムの実際の効果、そして車内温度を上げないための5つの方法を、検証データとともに解説します。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock(トビラ写真:john@Adobe Stock)
【画像ギャラリー】サンシェードはあまり意味がないのか? 実証データからわかった温度差は?(8枚)外気温35℃で長時間、駐車した場合、車内の気温はどうなる?(john@Adobe Stock)
2025年8月5日に群馬県伊勢崎市で41.8℃を観測し、日本の観測史上最高気温を更新しました。お盆の後も猛暑が続き、40℃を越える酷暑日もあると予想されています。
真夏の直射日光下にクルマを置くと、内部は驚くほどの速さで加熱されます。JAFが行ったテスト(外気温35℃、日なた駐車)では、エンジン停止後わずか30分で車内温度が50℃を突破。さらにダッシュボードは74〜85℃に達しました(引用:JAFユーザーテスト)。
BMW318iのダッシュボードは85.2度まで達した
実際、ベストカーが行った検証テスト(外気温36.4℃)でも、BMW 318iのダッシュボードが85.2℃、シート表面が50℃近くまで上昇。わずか30分程度で「ハンドルを握れない」「座れない」状態になります。
サンシェードなしで直射日光を4時間受け続けると、ダッシュボードの温度は最大で74℃まで上昇するのに対して、サンシェードを使うと52℃とサンシェードなしに比べ22℃も抑えることができたが、車内の温度はたった2℃しか下げることができない
では車内の温度を下げる対策として、真っ先に挙がるサンシェードですが、効果はあるのでしょうか? JAFの比較テスト(外気温35℃、4時間日なた駐車)によると、サンシェード装着車はダッシュボード温度が74℃→52℃(22℃低下)。しかし車内全体の平均温度はわずか2℃低下にとどまりました。
つまり、サンシェードは局所的な熱源(ダッシュボード・ハンドル)には有効ですが、車内空気全体の温度上昇は完全には防げません。また、窓を3cm開けて換気した場合、JAFデータでは最高温度が約5℃低下しましたが、防犯リスクや突然の降雨には注意が必要です。
車内の平均温度はサンシェードありとなしではたった2℃しか変わらなかった(出典:JAF)
濃度の濃いスモークフィルムは断熱効果が高いがフロントウインドウはもちろん、運転席&助手席のサイドウインドウには貼ることができない(透過率70%以上)
後席に貼られるスモークフィルムはメジャーですが、意外に知られていないのが運転席&助手席側のサイドウインドウに貼ることができる透明断熱フィルムです。
気温33度を記録した日に屋外駐車場に1時間ほど放置すると、ダッシュボードの温度は50度、断熱効果のある透明フィルムを貼ったフロントドア上のウインドウは41度、可視効率35%のグリーンのフィルムを貼ったリアウインドウは36度と、効果が大きいことがわかりました。
この透明フィルムならば運転席&助手席側面ウインドウに貼っても、フロント全面、左右側面に貼る場合、可視透過率70%以上だと道路運送車両法の保安基準をクリアするので購入する際にしっかりチェックしましょう。
では業者に頼むといくらかかるのか? カーフィルムを貼る専門店に聞いてみたが、透明断熱フィルムを運転席、助手席側面ウインドウに施工する場合、車種によっても異なるが3万~4万円とのこと。
自分で貼るならおススメの透明断熱フィルムは? と聞いてみると、「3M製の透明断熱フィルム、クリスタリン90」とのこと。車種ごとにウインドウの形にカットされており、価格は車種にもよるが約9900円~。
こうした透明カーフィルムには性能をチェックする項目があるので購入する前に頭に入れておきたい。
まず赤外線カット率。これは暑さの元となる赤外線の指標で、数値が大きいほど熱を遮るので重要な指標だ。可視光線透過率は光を通す割合に関する指標。数値が大きいほど光を通すため透明色に近くなり、明るい車内となります。
紫外線カット率は日焼け、シミ、皮膚の老化の原因とされる紫外線(UV)に関する指標で、数値が大きいほど紫外線(UV)を遮るため、日焼け予防になります。
そのほか、赤外線、紫外線などの太陽光など、フィルムが透過する割合の数値が「日射透過率」、吸収する割合の数値が「日射吸収率」、反射する割合の数値が「日射反射率」。
日射遮蔽(しゃへい)は日射熱を遮る効率を表し、3mm厚の透明版ガラスの遮蔽係数を1とし、それより数値が小さいほど日射熱をよく遮るので、日射遮蔽をうまくコントロールすることは、クルマだけでなく、家の場合でも重要とされています。
3M製の透明断熱フィルム、クリスタリン90は、太陽光からの赤外線により車内温度が上昇し、暑さのもととなる赤外線を92%カットするとともに、お肌の大敵、紫外線を99%カット。シミやしわ、日焼けを抑制し、内装の色あせ、劣化も抑制するという優れモノ。
貼っていないクルマと比較したサーモグラフィ画像では、頭髪部分で17.3℃の温度差が確認されています。そのほか、日射透過率67%、日射吸収率12%、日射反射率20%、遮蔽係数0.81%となっています。
もちろん、3M製以外の透明断熱フィルムも多数販売されているので、このチェック項目を参考にしてください。
隙間ができてしまうので、車種別のサンシェードを装着したい(写真AC)
フロントウインドウに装着するサンシェードだけではあまり効果がないならすべての窓を覆い、直射日光を完全に遮断する全窓タイプのサンシェードはどうなんでしょうか?
工具不要で装着できる吸盤式やマグネット式、車種別のシェードが販売されており、UVカット率99%以上の高性能サンシェードも普及しています。ただ全窓タイプなので8枚のシェードを取り付けるのが面倒くさいという一面もあります。
3時間放置した後のクルマでリモートエアコンを20分作動させ、サンシェードなしと全ての窓をサンシェードで覆った全窓タイプのサンシェードとテストを行ってみた。
サンシェードなしは、20分後でも車内温度は30℃以下にならなかったのに対し、全ての窓をサンシェードで覆った時には15分で設定温度の25℃まで車内温度が下がりました。
実際にクルマに乗り込むと、明らかにサンシェードを付けている状態の方が、車内の冷えは早い。さらにシェードを外して走行を始めた後にも、大きな違いを感じられました。
サンシェードなしの時には、ダッシュボードやステアリング、シートなどが大きな熱を持っており、エアコンの冷気をかき消すほどの熱気を車内に放出し続けています。座っているシートも熱いため、乗っているドライバーはしばらく汗だくでした。
対してサンシェードを全ての窓に付けていた時には、シートやステアリングはほとんど熱を帯びることがなく快適。ダッシュボードだけは、走行中にも日差しが当たるためしばらくすると熱を帯びていましたが、それでもサンシェードをなしの状態よりは熱くなく、放熱が非常に少ない状態で走行することができました。
エアコン+走行がもっとも早く温度が低下している(JAF「夏の駐車時、車内温度を最も早く下げる方法は?(JAFユーザーテスト)」より)
さて、炎天下のなか行楽地などの駐車場にクルマを停め、戻ってきた車内は50℃を超えることが多く、すぐ乗り込むと不快かつ危険です。JAFの検証を含め、以下の方法が効果的です。同じクルマが5台用意され、車内温度55℃から、5台それぞれ下記に示す方法で車内の温度を低下させ、経過時間ごとの温度変化を測定する、という方法で行われました。1:エアコンは使用せず、助手席の窓を開けた状態で、運転席ドアを5回開閉2:エアコンは使用せず、冷却スプレーをシートに10秒ほど吹きかける3:窓は開けずにカーエアコン(オート)をON。外気導入で、温度設定は最低4:窓は開けずにカーエアコン(オート)をON。内気循環で、温度設定は最低
5:窓を全開にしてカーエアコン(オート)をONにて走行。温度設定は最低で、最初は外気導入で、2分後に窓を閉めて内気循環に
その結果、エアコンを使用しない方法では、ドア開閉(1)が47.5℃まで低下したのに対し、冷却スプレー(2)では3分後も50.1℃までしか低下せず、ドア開閉のほうが効果的であることがわかりました。
また、エアコンを使用した3つの手法では、内気循環(4)が10分後に27.5℃に、外気導入(3)が10分後に29.5℃に低下しましたが、走行させた手法(5)では5分後に28.0℃まで低下させることができました。
助手席側のリアドアのウインドウを開けて、対角線上となる運転席のドアを5、6回強めに開閉させると、リアドアの開口部から室内の熱い空気が押し出されて、車内の換気を効率良く行う方法。55℃→47.5℃まで下がったがほかの方法よりも効果が低かった