腸内細菌の最新研究、やっぱり「食物繊維多め、肉は控えめが良い!」との結論に
肉と脂が多くて野菜が少ない、いわゆる欧米型の食事は、体に良くないなんて話を聞きますよね。でも、良くないと言われる具体的な理由はご存知ですか?
実は、欧米型の食事と大腸がんが関係しているところまではわかっているのですが、具体的な理由まではわかっていないんです。
しかし、その理由がわかってきたかもしれません。『Gut』に掲載された研究によれば、両者をつなぐ鍵を握っているのは、どうやら私たちの腸に住みついている細菌らしいのです。
肉の脂を食べると、腸内細菌が動き出す
まず、食べ物に含まれる脂は水に溶けないので、そのままでは消化・吸収できません。だから肝臓は、脂を細かい粒に分解する「胆汁酸」という物質を出します。これは、脂の多いものを食べるほど、たくさん必要になる物質です。
胆汁酸は仕事を終えると小腸で回収され、再利用されます。ただし全部が回収できるわけではなく、回収しきれなかった分が大腸まで流れていきます。
そこで待ち構えているのが、腸内細菌です。
一部の細菌は、流れてきた胆汁酸を材料に、デオキシコール酸(DCA)という別の物質を作り出す能力を持っています。そしてこのDCAには、大腸の内壁の細胞をどんどん分裂させる働きがあるんです。
細胞分裂はコピー作業のようなもので、回数が増えればコピーミスも増えます。ミスとはつまり遺伝子の変異のことで、それが積み重なった細胞がやがてポリープになり、がんになるわけです。脂の多い食事は、この流れのいちばん上流にある胆汁酸を増やしてしまうんですね。
そしてもうひとつ。食物繊維の摂取量が少ないと、腸に住む細菌の顔ぶれそのものが変わります。つまり、DCAを作る菌が幅をきかせやすくなる、というわけ。
欧米型の食事が問題にされるのは、胆汁酸とDCAを作る細菌、そのどちらも増加させてしまうからなんです。
動物実験で胆汁酸との因果関係が明らかに
実は、ここまでは以前から疑われていたものの、決定的な証拠がありませんでした。そこで行われたのが、大腸ポリープができやすいよう遺伝子改変したブタを使った実験。このブタに、赤肉とラードを増やした食事を3か月与えると、腫瘍が悪化し、DCAも増えました。
さらに、一部のブタに胆汁酸を吸着して便と一緒に出してしまう薬を混ぜた食事を与えてみた結果、暴走していた細胞増殖が収まり、大きなポリープも減ったそうです。
菌を入れ替えて、犯人を絞り込んだ
次に、腸内細菌をまったく持たない無菌マウスに、数種類の菌を組み合わせた腸内細菌セットを住まわせます。そのうえで、DCAを作る細菌を入れたグループと入れなかったグループを比較すると、DCA産生菌を入れたグループでは大腸の腫瘍が増加。
そして最終的な決め手になったのは、次の実験です。別のDCA産生菌から、DCAを作るのに必要な遺伝子だけを壊した変異株を用意し、菌はちゃんと腸に住みついているのに、DCAだけが作れない状態にしたのです。
すると、腫瘍は元の菌より少なくなりました。ヒトの細胞から育てた大腸のミニチュア組織(オルガノイド)でも、DCAを作れる菌の培養液でだけ細胞の増殖が増えたそうです。
腸内に菌はいても、DCAを作れないと何も起きない。悪さをしているのは菌そのものではなくDCAであることが、これではっきりしました。
最後に、大腸がん患者と健康な人あわせて2142人分の腸内細菌データを解析したところ、大腸がん患者にはDCAを作る遺伝子を持つ腸内細菌が多いという傾向が見られたそうです。
肉断ちするのが良いの?
こんな話を聞いたら、肉や脂っこいものを食べるのが怖くなりますよね。わかります、わたしも肉を控えようかなって思っています。
ただ、ここで明確にしておかないといけないことがあります。
実験に使われたのは、もともとがんになりやすいよう作られた動物です。しかもマウスには発がん物質を投与して、大腸に炎症を起こさせています。DCAを作る菌を腸内に住まわせただけでは、腫瘍はできませんでした。
つまりDCAは、単独でがんを作るというより、すでに傷んでいる腸に追い打ちをかける存在であるようです。研究チームも、DCAはがんの「でき始め」を後押しするけれど、その後の進行には関わっていないのかもしれない、と書いています。
そのうえで、この研究から導かれる食生活のアドバイスは、拍子抜けするほど普通でした。食物繊維をとる。野菜と果物と全粒穀物を増やす。加工肉と「赤肉」は控えめに。
ちなみにこの「赤肉」とは、脂身の少ない「赤身肉」のことではなく、牛・豚・羊といった動物の種類を指す言葉。赤み魚、白身魚みたいなもので、赤い色のお肉を指しています。つまり、鶏肉と魚は含まれません。
わたしは霜降り肉で胸焼けを起こすタイプなので、赤身肉なら安心だと思っていたのですが、そんな逃げ道はなかったようです。野菜をがっつり食べることでバランスを取ろうと思います。
Source: Science Alert