みずほFG「5000人削減」の衝撃 企業に必要な人間は「トップと役員、少数の営業担当ぐらい」…AIの爆発的な進化がもたらす「人類総“無職”時代」のリアルを気鋭の経済学者が解説
記事によると、みずほFG(フィナンシャルグループ)は全国の事務職員約1万5000人を対象に、今後10年で最大5000人減らす方針を固めたという。大規模なリストラの背景にあるのは、AIの飛躍的な発達だ。 AIを活用すれば人間がデータを入力したり、資料を読み込んだりする必要がなくなる。つまり事務職が担当していた仕事は大半がAIに委譲できる。そのためリストラを進めるという。解雇はしない方針で、配置転換を進めていく。ただし事務職の新規採用は抑制する方針のようだ。 日本でもアメリカのような「AI失業」が現実味を帯びてきた、と再認識させられる。ここで専門家が注目しているのが「SaaS」だ。 SaaSは「サース」もしくは「サーズ」と発音する。「Software as a Service」の略語であり、日本語の訳語は定着していない。一部のメディアは「業務ソフト提供サービス」や「クラウド型ソフト」などと翻訳しているようだ。 駒澤大学経済学部准教授で経済学者の井上智洋氏は、大学生の時はコンピュータ・サイエンスを専攻し、AIに関するゼミに所属していた。その後、マクロ経済学を専門とする経済学者に“転身”した経歴の持ち主だ。
AIと経済学の知見を活かして『AI失業 生成AIは私たちの仕事をどう奪うか?』(SB新書)、『人工知能と経済の未来』(文春新書)などの話題作を次々に上梓している。 そんな井上准教授が注目するのが、アメリカの株式市場で2月、このSaaS関連株が急落したことだ。 株価が下落したSaaS関連株の中には、セールスフォースやアドビといった日本人にもなじみの深い有名企業が含まれている。一体何が起きたのか、井上准教授が言う。 「関連株が下落したのは、アンソロピックというベンチャー企業が『Claude Cowork』というAIエージェントを開発したのが直接の原因です。このAIを使えば、プログラミングの知識がないユーザーでも日常的な言葉で指示を与えることで、データ分析や資料の作成、それから業務プロセスの自動化が可能になります。つまり特定の経理ソフトや業務管理アプリを購入・導入する必要がなくなるため、ソフトウェアサービスを提供する『SaaS企業』は将来性に不安があると判断され、株が売られたわけです」
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では、さらにAIが進化した状況を考えてみよう。より簡単に、誰もが自由に、どんな業務にも対応可能なソフトウェアをAIで開発できる時代が来たとする。どんな社会が到来することになるのだろうか。 「大前提として、今年2026年から2030年にかけての5年間で、AIの技術が爆発的に進化するのは間違いありません。OpenAI社CEOのサム・アルトマン氏が、『2025年が人類にとって最後の普通の年になるだろう』という意味のことを言ったと伝えられています。私も今年以降は、AIの進歩が尋常ではない勢いで加速していくものと思っています。人事、経理、総務、法務、情報システム、マーケティングといった部署では多くの労働者が不要となり、AIが業務を代行するようになります。一般的な企業で人間を必要とするのは企業のトップとAIに指示して新たなモノを生み出すクリエイター、あと少数の営業担当ぐらいではないでしょうか」(同・井上准教授) AIの爆発的な進歩は、短期的なスパンであれば一部の中小企業にメリットをもたらす。井上准教授は「AIの徹底的な活用に成功すれば、中小企業が大企業に勝つことも可能です」と予測する。 大企業がAIによって生じた余剰人員を持て余して苦しむのを横目に、もともと人手不足に悩んでいた中小企業はAIをフル活用することで少数精鋭の組織を構築できる。徹底した省力化で人件費を圧縮し、利潤を最大化できるチャンスになるわけだ。
「とはいえ、社会全体としてはディストピアの到来が懸念されます。AIの爆発的な進化は、ありとあらゆる産業で徹底した省力化、無人化を可能にします。例えば農業はAIに置き換えられないというイメージをお持ちの方も多いでしょう。ところが現在でも『スマート農業』という言葉があるように、農業は実はAIと相性がよい産業です。いずれはAIが管理する無人農場で農作物や家畜が育ち、収穫や出荷を行う可能性は高いのです。AIによる無人化は一次産業から三次産業まで全てが対象になりますから、全世界で確実に失業者が増えることになります」(同・井上准教授) ディストピア社会の到来が、少しだけなら遅くなる可能性も考えられる。例えば少子高齢化が進む国であれば、AIによる省力化は労働人口の減少による人手不足を補うのに適しているだろう。この場合は生産活動の省力化は福音になる可能性がある。 とはいえ、全世界でありとあらゆる産業で無人化がドラスティックに進む余波は大きい。例えば自動車産業を考えてみよう。そもそも原料である「鉄」を作る際も労働者は必要ない。鉄鉱石、コークス、石灰岩はAIが制御する無人鉱山でロボットが採掘を行い、無人のトラックや貨物船で製鉄所に向かう。そして製鉄所にも自動車工場にも働いている人間は誰もいない──。