タレスとハンファが合意、仏製多連装ロケットシステムに韓国製ロケット弾を統合
フランス陸軍は次期多連装ロケットシステムにサフラン/MBDAコンソーシアム提案のTHUNDARTを選択、この競争に敗れたタレス/アリアンのコンソーシアムは「X-FireにChunmoo向け弾薬を統合することでハンファ・エアロスペースと合意した」と発表し、両社はX-Fireを国際市場に売り込んでいくらしい。
参考:Long-Range Precision Strike: Thales and Hanwha sign an MoU to ensure the compatibility of Hanwha Chunmoo guided missiles with Thales launcher X-Fire 参考:Thales et Hanwha Aerospace ont l’intention de coopérer dans le domaine de la frappe terrestre à longue portée
欧州はウクライナとロシアの戦争を目の当たりにして「大規模な地上戦が再び欧州で発生する可能性」と「高度な防空システムの普及で接近拒否が成立する可能性」を認識し、航空戦力に偏っていた火力投射能力を地上戦力に戻す動きが加速しており、自走砲や多連装ロケットシステムの新規取得や追加調達が相次いでいる。
欧州諸国の多連装ロケットシステムの導入動向(枠組み合意の数字も含む) 国 種類 数量 ポーランド HIMARS 506基 Chunmoo 290基 エストニア HIMARS 9基 Chunmoo 9基 ラトビア HIMARS 6基 リトアニア HIMARS 8基 イタリア HIMARS 21基 ルーマニア HIMARS 54基 オランダ PULS 20基 ドイツ PULS 5基 EuroPULS 250基 デンマーク PULS 8基 ギリシャ PULS 36基フランスもウクライナ侵攻の教訓を反映させた軍事計画法案を2023年8月に成立させ、この中で長距離地上攻撃(Frappe Longue Portée-Terre)計画に約6億ユーロの資金を計上、2026年4月に発表された改正軍事計画法案の中でも多連装ロケットシステム×13基の新規取得が予定されており、仏装備総局(DGA)主導でサフランとMBDAのコンソーシアムがTHUNDARTを、タレスとアリアンのコンソーシアムがX-Fireを開発中で、ここにテュルジ・ガイヤールが「迅速に開発が可能」という触れ込みで独自の多連装ロケットシステム=Foudreを提案。
さらに暫定的な解決策の候補としてフランス陸軍はインド製のピナカを視察、仏シンクタンク=フランス国際関係研究所(IFRI)は「長期的な開発ロードマップ、多彩な弾薬ラインナップ、独自弾薬を統合できる自由度、2030年までにポーランドで弾薬の生産が始まるChunmoo(天舞/チョンム)を採用すべきだ」と勧告、ロッキード・マーティンは「18ヶ月でHIMARSを納入できる」と提案した。
出典:Safran
カトリーヌ・ヴォートラン国防相は15日に開幕した防衛見本市=ユーロサトリで「我々は(長距離地上攻撃について)サフラン/MBDAコンソーシアムと独占交渉中だ」と発表し、LRU=M270 MLRSの後継システムとしてTHUNDARTを選択した格好だが、X-Fireを提案したタレス/アリアンのコンソーシアムは19日「X-FireにChunmoo向け弾薬を統合することでハンファ・エアロスペースと合意した」と発表して注目を集めている。
“この合意に基づきChunmoo向けの3種類の弾薬(CGR-080、CTM-MR、CTM-290)をX-Fireランチャープラットフォームと互換性を持つよう技術協力を進めていく。ハンファ・エアロスペースはX-Fireランチャープラットフォームとの互換性を実現することでタレスのソリューションを支援し、ディープストライクにおける作戦ニーズを満たすことができる。この合意により欧州企業と韓国企業の協力関係が強化され、ハンファ・エアロスペースは欧州の現地産業と緊密に連携し、両社は欧州市場におけるさらなる協力機会を模索していくことになる”
出典:Thales
X-Fireに統合するのはHIMARSのGMLRS弾に相当する射程80kmのCGR-080、HIMARSのER GMLRS弾に相当する射程160kmのCTM-MR、HIMARSのATACMSに相当する射程290kmのCTM-290で、タレスは「今回の提携は国際市場に焦点を当てた関係強化だ」と言っており、MLRSの後継システムに選ばれなかったため「販売戦略の方針を仏陸軍採用から海外需要に変更した」と解釈するのが妥当で、フランスのZone Militaireも「X-FireはTHUNDARTに敗れたが、ハンファ・エアロスペースとの提携で巻き返しの可能性がある」と報じている。
“Chunmooは海外市場で確かな成功を収めている。このシステムは仏製ソリューションが要件を満たせなかった場合の代替候補に挙げられていた。このシステムは韓国以外にもポーランド、ノルウェー、エストニア、アラブ首長国連邦、サウジアラビアが採用している。ポーランドとノルウェーがChunmoo調達を選択していることを踏まえると、通常兵器による抑止力強化が両国の優先事項の一つとなっている。アリアンはX-Fire向けに射程150km、1,000km、2,500kmの弾道ミサイル=B-Strikeを供給する予定で、通常兵器による抑止力強化を重視するポーランドとノルウェーから関心を集めるかもしれない”
🌍 At Eurosatory 2026, ArianeGroup, @thalesgroup and Soframe unveiled a sovereign ballistic strike line-up designed to address a broad range of operational requirements, from operational to pre-strategic missions.
At the heart of this new framework is the B-Strike family that… pic.twitter.com/52w7vRDPmS
— ArianeGroup (@ArianeGroup) June 17, 2026
ChunmooにB-Strikeが統合されるならポーランドとノルウェーが興味を示すかもしれないが、B-StrikeだけのためにX-Fireを調達するとは考えにくい。それでもフランス製の多連装ロケットシステムに韓国製弾薬が統合されるのはビジネス上の成否に関わらず大事件であり、ハンファ・エアロスペースがドイツでやろうとしていること=Chunmoo向け弾薬(射程500kmのCTM-X)のEuroPULS統合提案と同じだ。
正直なところChunmoo向け弾薬を統合したX-Fireが成功するとは思えないものの、今回の合意の重要なのは「フランス産業界が韓国製弾薬を受け入れた」という部分で、ここまで韓国製システムが欧州市場で受け入れられるとは想像もしていなかったので非常に驚いている。
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※アイキャッチ画像の出典:Hanwha Aerospace