【検証】 ガザで援助物資の配布拠点を建設、衛星画像で明らかに イスラエルとアメリカの計画に国連は反対

ベネディクト・ガーマン、マット・マーフィー、マーリン・トーマス(BBCヴェリファイ=検証チーム)

イスラエルが、パレスチナ・ガザ地区に人道支援物資の配布拠点として使用できる複数の施設を準備していることが、人工衛星画像で明らかになった。これは、議論を呼んでいる新たな計画の一環だとされる。

イスラエル政府は今年3月以降、ガザへの食料および医薬品の搬入を阻止している。

この措置について、イスラエルの内閣は、ガザのイスラム組織ハマスに人質の解放を迫るための圧力だと説明しているが、国連やヨーロッパ、中東の各国指導者は非難している。また、イスラエルはハマスが支援物資を横領していると主張しているが、ハマスはこれを否定している。

BBCヴェリファイ(検証チーム)が人工衛星画像を分析したところ、ここ数週間でガザ南部および中部の複数の場所で土地が整地され、新たな道路や集積エリアが建設されていることが確認された。

イスラエル政府は拠点の具体的な場所を公表していないが、イスラエル当局から事前に説明を受けた人道支援関係者がBBCヴェリファイに語ったところによると、ガザ南部に少なくとも4カ所と、北部のネツァリム回廊付近に1か所が建設される予定だという。ネツァリム回廊は、イスラエル軍が管理する細長い地域で、事実上、ガザ地区を分断している。

この計画を支援するために設立された「ガザ人道財団」は当初、食料、水、衛生用品を人口の60%弱にあたる約120万人に提供する予定だと発表していた。

同財団は14日、5月末までに活動を開始すると発表し、それまでの間はイスラエルに対し、通常のルートを通じた支援物資の搬入を認めるよう求める姿勢を示した。また、当初の計画には含まれていなかったガザ北部での支援拠点の設置も呼びかけている。

国連機関は、イスラエル政府が以前に承認した内容と一致するこの計画について、基本的な人道原則に反すると指摘。協力しない方針を示している。

国連人道問題調整事務所(OCHA)のオルガ・チェレフコ報道官は、イスラエルが「食料や燃料を軍事戦略の一環として交渉材料にしようとしている」と非難した。

「すべての支援が、軍事化された少数の拠点を通じて提供されることになる」

「そのような態勢では、ガザの広範な地域、特に移動が困難だったり、社会的に周縁化されていたりする最も弱い人々がいる地域が、支援から完全に切り離されてしまう」

国際NGOのオックスファムのブシュラ・カリディ氏も、この新たな計画を「茶番劇」だと表現した。

「どんな物流的な解決策も、イスラエルによる強制移住の戦略や、飢餓を戦争の手段として用いる行為には対処できない。封鎖を解除し、検問所を開放し、私たちに仕事をさせてほしい」

なお、この新たな支援システム案は、イスラエル政府がまだ最終承認をしていないとみられる。

BBCヴェリファイは、限られた位置情報をもとに、人工衛星画像を用いて4カ所の候補地を特定した。

これらの拠点は、ガザ内部にすでに存在する屋外型の配布拠点、たとえばエレズ、エレズ・ウエスト、キスフィムなどと、規模や形状、設計が類似している。中でも最大の候補地は、南部ケレム・シャローム検問所内の施設と同程度の広さを持つ。

人工衛星画像の分析によれば、ガザ南西部の1カ所では顕著な開発が進んでいる。この場所は現在、イスラエル国防軍(IDF)の基地となっている村の廃墟の近くに位置している。

4月初旬以降の人工衛星写真では、この場所に道路が建設され、大規模な集積エリアが造成されている様子が確認できる。このエリアは盛り土による防御壁で囲まれており、エジプトとの国境から約650メートルの地点にある。

5月8日に撮影された高解像度の画像には、約8ヘクタールにわたる土地で、ブルドーザーや掘削機が稼働している様子が映っている。また、近くの要塞化された建物には、IDFの装甲車両が配備されている。

現地で撮影され、BBCヴェリファイが位置情報を特定した写真には、敷地の周囲に照明設備が設置されている様子も確認できる。

さらに、5月11日および12日に撮影された画像では、この場所を含む4カ所すべての拠点で、開発が継続されていることが示されている。そのうちの1カ所は、8棟の国連倉庫群から約500メートル、別の大型倉庫からは280メートルの距離に位置している。

マッケンジー・インテリジェンスの上級画像アナリスト、スチュ・レイ氏は、これらの拠点が安全な物資配布センターとなる可能性が高いと認めた。また、一部の施設が「IDFの前哨ポストに非常に近接していることから、IDFが拠点に対して一定の管理権限を持ちたいという意図と一致している」と指摘した。

別の情報分析会社マイアールのアナリストらは、これらの施設がトラックの出入り用に別々の入口を備えているほか、歩行者用の出入口としても機能する、盛り土に開けられた隙間も確認できると述べた。

BBCヴェリファイの取材に対し、IDFはこれらの支援拠点に関するコメントを控えたが、「ガザでの作戦は国際法にのっとって実施されている」と回答した、ガザで人道問題を担当するイスラエルの軍事組織、イスラエル占領地政府活動調整官組織(COGAT)は、コメント要請に応じなかった。

BBCヴェリファイが特定した4カ所のうち3カ所は、IDFが新たに設けた「モラグ回廊」の南側に位置している。

モラグ回廊とは、南部のハンユニスとラファを分断して設置された、イスラエル軍の軍事地帯だ。

IDFが4月初旬にこの地域に安全地帯を設けて以来、ガザの横幅の約3分の2に当たる幅10キロメートルにわたって道路が建設されている。この道路は防御用の盛り土に囲まれ、IDFの前哨ポストが点在している。

この新設道路は、人工衛星画像で確認された開発拠点の一つと直接つながっている。また、既存の道路がさらに2カ所の拠点と接続している。

この一帯はかねて、IDFによって大規模な土地整備が行われてきた。

BBCヴェリファイは、モラグ回廊およびその南側の地域で撮影されたイスラエル軍の映像や写真の位置情報を特定している。それらには、爆薬や重機を用いた計画的な爆破作業や、建物の大規模な破壊の様子が映っている。

人道支援関係者によると、イスラエル側の説明では、支援物資はガザ南部のケレム・シャローム検問所を通じてガザに搬入される予定だという。

人工衛星画像では、ここ数カ月にわたり同検問所でも建設作業が続いており、倉庫エリアの拡張や新たな道路の整備が進められている様子が確認されている。

下の写真では、中央のバーを左右に移動させることで、2025年2月1日(左側)と同年5月11日(右側)の様子を比較して見ることができる。

イスラエルが3月に新たな支援物資の搬入を阻止して以来、国連は、国際法の下でイスラエルには支配下にある住民の基本的な生活ニーズを確保する義務があると繰り返し主張している。

一方、イスラエル政府は国際法を順守していると主張し、ガザにおける支援物資の不足は存在しないとしている。

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