電動キックボード事故、脳損傷はバイクの3.45倍 ヘルメット着用率は5.9% Nature系列誌
Innovative Tech:
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
英チェルシー・アンド・ウェストミンスター病院や英モリストン病院などに所属する研究者らがScientific Reportsで発表した論文「E-scooter riders sustain more head and internal injuries than motorcyclists and cyclists in England and Wales」は、電動キックボード(e-scooter)の利用者は、オートバイや自転車の利用者に比べて脳や内臓を損傷するリスクが高い可能性を明らかにした研究報告だ。
2020年から22年にかけてイングランドおよびウェールズで中等度から重度の外傷を負った患者1万5247人分の「全国重症外傷登録」(National Major Trauma Registry)のデータを分析した。対象には電動キックボード580人、オートバイ7027人、自転車7640人が含まれる。
分析の結果、成人の電動キックボード利用者はオートバイ利用者と比較して、外傷性脳損傷のリスクが3.45倍、内臓損傷のリスクが1.46倍、動脈または静脈の損傷のリスクが3.24倍高いことが示された。自転車利用者との比較でも、脳損傷1.74倍、内臓損傷が1.36倍、血管損傷が1.66倍だった。
一方で骨折のリスクについては、電動キックボード利用者はオートバイ利用者より20.0%、自転車利用者より10.0%低いという逆の傾向が見られた。
子どもの割合も際立つ。電動キックボードの外傷症例のうち18歳未満が16.2%を占め、オートバイの6.2%、自転車の8.9%を大きく上回った。子どもでも脳損傷のリスクはオートバイの2.39倍、自転車の1.38倍だった。
ヘルメットの着用が確認されたのは、電動キックボード利用者ではわずか5.9%にとどまり、オートバイ利用者の75.7%、自転車利用者の45.0%を大きく下回った。著者らは、この著しく低い着用率が脳損傷リスクの高さにつながっている可能性を指摘するとともに、電動キックボードの構造上、衝突時に利用者がハンドルバーを越えて頭から転倒しやすい点も一因になりうるとしている。
また、自己申告による2万3193件の衝突およびニアミスの追加分析では、男性利用者の衝突リスクは女性利用者より36%低い一方、女性利用者が重傷を報告する確率は2.1倍高かった。その背景として、多くの電動キックボードが男性の体格を前提に設計されていることや、女性利用者が歩道や未舗装路を走行する傾向が高いとする従来の報告との関連を考察している。
Source and Image Credits: Kungwengwe, G., Gach, M.W., Gowda, S. et al. E-scooter riders sustain more head and internal injuries than motorcyclists and cyclists in England and Wales. Sci Rep 16, 23470 (2026). https://doi.org/10.1038/s41598-026-59829-5
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