「法の支配の終わりはならない」人権外交議連、ICC制裁で政府に行動要請「残念は感想」
与野党の国会議員でつくる「人権外交を超党派で考える議員連盟」は24日、国会内で総会を開き、トランプ米政権が国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長を制裁対象に指定したことを「最も強い言葉で非難」する声明案を大筋で了承した。首相か外相による抗議と制裁の撤回要求に加え、赤根氏の資金アクセス確保などを日本政府に求めた。
「残念は意思ではない」
米政府は18日、ICCが米国といった非加盟国に管轄権を行使しようとしているとして、赤根氏とセネガル出身のICC関係の法律家を制裁対象に指定した。
これに対し、高市早苗首相は19日、記者団に「大変残念に思う。米国を含む関係国と意思疎通を継続しながら対応する」と表明。政府は同日公表した談話の英語版で「very unfortunate(大変残念)」と表現した。
欧州各国も19日、米国への正面からの非難は避けつつ、制裁を批判した。フランス外務省は「ICCや職員へのあらゆる威嚇や脅しを非難する」と強調し、ドイツ外務省の報道官は「ICCと赤根所長を支持する」と訴えた。
ICCが本部を置くオランダの外相は20日に赤根氏と会談した。SNSで「ICCを断固支持する」と表明し、赤根氏の統率力を称賛した。
この日の議連の総会には約15人の与野党議員が参加。自民党からは共同代表を務める中谷元前防衛相のほか、石破茂前首相、大岡敏孝衆院議員の計3氏が出席した。
中谷氏は、日本政府の対応について「『残念』は感想で、意思ではない。抗議を求めたい」と述べ、「法の支配は日本外交の基軸で、安全保障政策の根幹だ」と強調した。
資金アクセス確保を要求
議連の声明では、日本政府に対し、ICCと赤根氏を「断固として支持し守り抜く」と表明するよう要求した。駐米大使や日米外相間の協議を通じ、米政府に制裁撤回とさらなる拡大の停止を直接申し入れることも促した。
また、米国の制裁が日本の金融機関などに法的義務を課すものではないと政府が公式に確認し、相談窓口の設置などを通じて赤根氏の資金アクセスを確保するよう求めた。
渡航や通信などの実務面でも、職務継続や家族への影響を最小限に抑える支援を要請した。
人権外交を超党派で考える議員連盟の総会=8月24日午後、国会内オランダや欧州連合(EU)、フランスなどとの連携による「締約国共同声明」を日本が主導することや、米制裁の域外適用から日本国民や法人を守る「ブロッキング規制」の導入検討も盛り込んだ。
出席議員からのICCに対する制裁の具体化を止められなかったのかとの質問に対し、外務省幹部は「米国に対してはラインで申し入れはしていたが、その結果、こういうことになった」と悔しさをにじませた。
共同代表を務める舟山康江参院議員(国民民主)は総会後、記者団に、2002年のICC設立を巡り、日本が極東国際軍事裁判(東京裁判)の経験を踏まえて常設の国際刑事裁判所を強く望んできたと指摘。「その反省を踏まえ、ICCの必要性を日本政府が率先して訴えてほしい」と強調した。
赤根所長「法の支配を守り抜いて!」
声明では「赤根所長は、これを法の支配の終わりの始まりにしてはならないと言った」として、「終わりの始まりになるか否かは、制裁を科した国ではなく、それを見ている国々の行動が決める」と訴えた。
赤根氏も総会にメッセージを寄せ、「はるかに東の空を想いつつ、議連の応援に力をいただいております」と謝意を表明。「これからもICCの存続と世界の法の支配を守り抜いてほしい、それが私からの切なる願いです!」と支援を求めた。
議連は19日、中谷と舟山両氏の共同代表名で、今回の制裁について「法の支配に対する重大な侵害」と位置付け、最も強い言葉で非難する緊急声明を発していた。(奥原慎平)