「世界最強のパスポート」、米国が初めてトップ10から脱落 日本は3位に後退
英コンサルティング会社ヘンリー・アンド・パートナーズが発表した「世界最強のパスポート」ランキングの最新版によると、米国が2006年の調査開始以来初めてトップ10から脱落した。 米国のパスポート(旅券)保持者は世界180カ国にビザ(査証)なしで渡航でき、マレーシアと同等だった。1月時点のランキングでは米国は9位で、7月には10位に後退していた。世界最強のパスポートを持つシンガポール人と比較すると、米国人はビザなしで渡航できる国が13カ国少ない。2014年時点では、米国は英国とともに1位を占めていたが、英国も今回のランキングで8位に後退した。(日本は前回の2位から今回3位へと順位を1つ下げた) ■なぜ国によってパスポートの強さが異なるのか? ヘンリーは、国際航空運送協会(IATA)の情報に基づき、どの国のパスポートが最も高い国際移動性を持つのかを調査している。国際的な移動性は、国民が海外旅行をする際のソフトパワー(訳注:軍事力や経済力ではなく、心理的に他国を味方につける力)を測る重要な指標となる。 ランキング1位のパスポートを持つシンガポール国民は、世界227カ国のうち193カ国にビザなしで渡航できる。世界で2番目に強力なパスポートを持つ韓国人は、190カ国へのビザなし渡航が可能だ。米国のパスポートは、ランキング上ではリトアニアとアイスランドに次ぐ位置にある。 ■なぜ米国のパスポートは力を失ったのか? 米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のアニー・フォルツハイマー上級研究員は、「米国の孤立主義的思考が、今や同国のパスポートの力の喪失に反映されている」と指摘した。具体的に言うと、米国のランキングにおける順位は、同国が相互主義を欠いていることによって押し下げられている。米国民が180カ国にビザなしで入国できる一方、米政府がビザ免除で入国を認めているのはわずか46カ国のみだ。このため、米国はヘンリーの開放性指数では77位に位置し、イラクをわずかに上回るに過ぎない。 ヘンリーによると、米国は4月、相互主義の欠如によりブラジルへのビザ免除渡航権を失った。さらに、中国がビザ免除対象国を急速に拡大する中、米国は同国のリストからも外されたことで順位を下げた。ヘンリーは、ソマリアが最近、新たな電子ビザ制度を導入したことに加え、ベトナムがビザ免除対象国リストから米国を除外する決定を下したことなどが重なり、米国がトップ10から脱落したと説明した。 ヘンリーのクリスチャン・H・ケーリン会長は次のように指摘した。「過去10年間にわたる米国のパスポートの影響力低下は、単なるランキングの入れ替わり以上の意味を持つ。これは世界の移動性とソフトパワーの力学における根本的な変化を示している。開放性と協力を受け入れる国々が躍進している一方で、過去の特権にあぐらをかいている国々は取り残されている」 ■世界最強のパスポートランキング ・1位 シンガポール(世界193カ国にビザなしで渡航可能) ・2位 韓国(同190カ国) ・3位 日本(同189カ国) ・4位 ドイツ、イタリア、ルクセンブルク、スペイン、スイス(同188カ国) ・5位 オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、アイルランド、オランダ(同187カ国) ・6位 ギリシャ、ハンガリー、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、スウェーデン(同186カ国) ・7位 オーストラリア、チェコ、マルタ、ポーランド(同185カ国) ・8位 クロアチア、エストニア、スロバキア、スロベニア、アラブ首長国連邦(UAE)、英国(同184カ国) ・9位 カナダ(同183カ国) ・10位 ラトビア、リヒテンシュタイン(同182カ国)
Suzanne Rowan Kelleher