パウエル議長、物価への関税の影響顕在化を予想-金利の軌道不確実も

米経済や金利の見通しには不明な部分が多い。だが、少なくとも一つだけ確実視される点として、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は先行きの物価上昇に言及した。

  米金融当局は18日まで開いた連邦公開市場委員会(FOMC)会合で、4会合連続となる政策金利の据え置きを全員一致で決めた。トランプ大統領の関税措置に伴うインフレへの影響が一過性のものにとどまるのか、一段と持続的なものになるか見極めようとしている。

  パウエル議長は、米消費者にどの程度の負担が生じるかまだ分からないとしつつも、今夏には関税の影響が一層明らかになるとの見通しを示した。

  議長はFOMC会合後の記者会見で、「最終的に関税の負担は発生し、その一部は最終消費者にのしかかることになる」と指摘。「その到来は分かっており、もう少し確認するまでは性急な判断を避けたいと考えている」と語った。

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  当局者が最新の四半期経済予測で示した見通しは、FOMC参加者の間での見解の相違が広がっていることを浮き彫りにした。金利予測分布図(ドット・プロット)中央値では引き続き年内2回の利下げ見通しが示された一方で、当局者計19人中7人は年内利下げをゼロと予想。これに対し10人は2回以上の利下げを見込んでいることが分かった。

  JPモルガン・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、プリヤ・ミスラ氏は当局者について、「現時点で何も行動しない点で全員一致しているが、リスクをどう捉えるかで見解が分かれている」とコメント。「2025年のドットの分布の乖離(かいり)は、インフレの持続性を巡り、いかに見解の相違があるかに帰着すると考えられる」と話した。

  当局者の金利見通しの隔たりに関する質問に対し、パウエル議長はその重要性を否定。経済についての高度の不確実性を踏まえれば、「金利の軌道に誰も強い確信はない」と答えた。

今後の軌道

  金融当局者は、貿易分野をはじめとするトランプ氏の政策変更に伴う失業率とインフレ率の上昇を予想してきた。パウエル議長ら複数の当局者は、物価上昇圧力が持続的なものとならないようにするコミットメントを強調している。

  米経済はこれまでのところ底堅さを維持。直近の数カ月のインフレ率は予想を下回り、失業率は横ばいで推移している。

  またFOMC声明では、「景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」との判断が示された。

  パウエル議長は、予見的な政策運営の必要性を強調するとともに、関税の影響が多少顕在化し始め、今後数カ月に一段と明確になるだろうとの見通しを表明した。

  また、連邦準備制度内外の予想担当者がインフレ率の「有意な」上昇を見込む状況にあって、労働市場は「利下げを切望していない」とパウエル議長は説明した。

  ミスラ氏は議長について、「彼はインフレ指標が落ち着いている事実から大きな安心感を得られただろう」としつつも、「先行き物価上昇の形で顕在化すると当局者らは予想している」と話した。

最新予測

  今回のFOMC声明では、失業増加とインフレ加速のリスクに関する文言が削除された。それでも当局者は四半期経済予測の中央値で、25年の個人消費支出(PCE)価格指数の伸びを前年比3.0%に上方修正した。また25年の実質GDP(国内総生産)伸び率見通しを下方修正し、失業率見通しは小幅上方修正した。

  金利先物市場の動向に基づけば、投資家が織り込む9月利下げの確率は70%強となっている。一方、ブルームバーグの調査によれば、トランプ政権の貿易・移民・歳出政策の影響を把握するには、少なくとも9月までかかる可能性があるとエコノミストの大半は予想する。当局者も急いでいないように見受けられる。

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  サンタンデールUSキャピタル・マーケッツのチーフエコノミスト、スティーブン・スタンリー氏は「米金融当局は様子見の姿勢で静観している」とし、「9月までには多少の答えが得られるだろう。現時点ではそれが最善のシナリオだ」との見方を示した。

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原題:Fed’s Powell Says Rate Path Unclear But Tariff Impact Is Coming(抜粋)

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