ファラージ氏率いる野党「リフォームUK」が大躍進 英下院補選と地方選
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英イングランド各地で1日、下院補選と地方選挙があり、ナイジェル・ファラージ党首が率いる野党「リフォームUK」が大きく躍進した。昨年7月の総選挙で圧勝して政権交代を実現した労働党のキア・スターマー首相にとっては、国民の支持を問う初の選挙だった。今回の結果を受けてリフォームUKは、労働党と保守党というイギリス政界の二大政党に対抗する、最有力の挑戦者としての地位を固めた。
イングランド西部ランコーンおよびヘルスビー選挙区で行われた下院補選では、リフォームUKの候補が再集計の末、与党・労働党の候補をわずか6票差で破った。
かつて労働党が絶対的に有利だった同選挙区の補選は、労働党の下院議員が有権者に暴行を加えて有罪となり、辞職したことから行われた。
リフォームUKが下院補選で勝つのは初めて。当選したサラ・ポチン氏は同党にとって5人目の下院議員で、初の女性下院議員となる。
ファラージ党首は、「労働党は総選挙に勝ってから10カ月もたたないうちに、支持を失ったのがわかる」、「今や我々が保守党に代わり最大野党になったのだと思う」と強調した。
さらに、「(同日の地方選で)我々が勝たなかった場所でも、保守党に投票すれば労働党を勝たせてしまうことになると、そういう声をたくさん耳にした」と述べた。
各地の地方議会選で争われた約1600議席のうち、リフォームUKは677議席を獲得。その多くが、保守党が多数を占める地域だった。かつては保守党の牙城だったイングランド南東部県ケントや同中部スタッフォードシャーなど8カ所の自治体でリフォームUKが多数党となった。
23カ所で行われた地方議会選は、昨年7月の総選挙で労働党が圧勝して以来、初の選挙で、主にイングランドの農村部や都市の近郊部で行われた。
リフォームUKは、下院補選と地方議会選に加え、自治体の合併で新しく設けられたグレーター・リンカンシャーと、ハルおよびイーストヨークシャーの統合自治体での初の首長選でも勝利した。
保守党は、改選対象となった議席の大半で現職が敗れた。保守党は計676議席以上を失い、16の自治体で野党に転じた。
2021年の前回地方選では、当時の保守党はボリス・ジョンソン氏のもとで勢いに乗っていた。同党は今回の地方選では議席を大きく失うものと予想していたものの、実際の結果は党内の予想をさらに下回る事態となった。
国政を担う労働党は、今回の地方選で現職が争う議席は保守党に比べて少なかったものの、全体で186議席を失った。
首長選では三つの自治体で現職が再選されたものの、すべての自治体でリフォームUKにかなりの得票率を明け渡す結果になった。
労働党の選挙対策関係者はBBCに対して、スターマー政権のさまざまな政策が、有権者に嫌われたことが、今回の選挙結果の要因として大きいと話した。財政健全化の一環として政権が導入した、大半の年金受給者に対する冬季暖房費補助の打ち切りや、障害者手当の削減などが、今回の労働党の苦戦につながったと話した。
「戸別訪問先ではどこでも一緒だった。冬の暖房費と個人自立手当(PIP、障害者給付の意味)の話題ばかりだった」と、この労働党関係者は話した。
リフォームUKに対して労働党が苦戦した結果について、スターマー首相は「わかっている。私たちは変化を実現するために、有権者に選ばれたし、その変化実現に着手している」と反応。「(国民保健サービスの)診療待ち期間を減らし、給料を増やし、金利を引き下げている」と主張した。
「今回の選挙を通じて私は、国民が求めるこうした変化について、我々がもっと踏み込んでもっと素早く、成果を届ける必要があると、有権者から言われたのだと理解している。私はその成果を確実に実現するつもりだ」と、首相は述べた。
労働党に対する最大の挑戦者は今や保守党ではなくリフォームUKなのかという質問に対しては、スターマー首相は「NHS(国民保健サービス)は、利用者が医療を受ける時点では無料であるべきだというのが、私たちの考えだ。それに対してリフォームは、NHSは有料であるべきだという。そのような意見に私は根本的にまったく賛成しない」と答えた。
保守党のケミ・ベイドノック党首は、保守党は(14年間の)長期政権から野党に転じた状態で、再建のための「長い旅路」に直面していると認めた上で、「とても競争の激しい政治状況」において「抗議のための投票がしきりに行われている」と述べた。
保守党のナイジェル・ハドルストン共同幹事長は、最も有力な野党は今や保守党ではなくリフォームUKだというファラージ氏の主張は「理にかなっていない」と批判。保守党の下院議員が121人いるのに対して、リフォームUKの下院議員は今回の選挙で5人になった段階だと指摘した。