米雇用市場、迫る50万人減の足音-DOGE政府改革は民間にも波及へ
米連邦政府の規模を劇的に縮小しようとするトランプ政権の矢継ぎ早の取り組みを受け、エコノミストの間では、2025年も労働市場が堅調に拡大するとの予測を見直す動きが出ている。
ブルームバーグ・エコノミクスは、トランプ大統領就任からの6週間ですでに数万人の連邦政府の雇用が削減されたと推計している。コメリカ・バンク、エバコアISI、バークレイズなどは、年末までに50万人超の雇用が失われる可能性があるとみている。
50万人という数字には民間部門への波及効果も含まれており、2024年の雇用増の4分の1が実質的に消える計算になる。7日発表の2月雇用統計では、連邦政府縮小の影響は限定的なものにとどまるとみられる。しかし、3月と4月の統計では、より顕著な影響が現れることになりそうだ。
Federal government has added jobs in all but two months since 2023
Source: Bureau of Labor Statistics
再就職あっせん会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのデータによると、米雇用主が2月に発表した人員削減数は前年比103%増の合計17万2017人と、新型コロナ禍初期に当たる2020年7月以来の高水準に達した。また別の統計では、連邦政府職員による失業保険申請件数は、利用可能な最新データである2月22日終了週で1634件と、前の週(614件)から急増した。
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イーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」が各省庁に各種契約の見直しや打ち切りを求めているため、政府機関と取引のある民間企業も人員削減を始めている。
科学的イノベーションや国際開発への連邦政府からの拠出停止の動きは、大学や非営利団体(NPO)での雇用計画を変えつつある。首都ワシントンなど連邦政府職員が多く働く地域では、レストランやホテルなどのサービス業者もおそらく打撃を受けるだろう。
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パンテオン・マクロエコノミクスのエコノミスト、サミュエル・トムズ、オリバー・アレン両氏は2月25日のリポートで、民間部門では10月までに10万人分の雇用が影響を受けると予想。「連邦政府の雇用削減による収入減や、DOGEの混乱を招くアプローチが引き起こす不確実性により、支出と雇用の後退が広がる公算が大きい」とした。
州政府には採用の動き
過去2年にわたって米国全体の雇用増の原動力となってきた州政府および地方自治体は、失業した連邦政府職員の採用に積極的だ。
首都ワシントンの玄関口であるユニオン駅では、自由の女神をモチーフにした広告に「DOGEが解雇と言うなら、われわれは採用と言おう」と書かれている。これは、ニューヨーク州が州政府関連の求人7000件への応募を呼び込むために始めたキャンペーンの一環だ。
7日発表の雇用統計は、連邦政府関連の人員削減が本格化する前の2月第2週にデータ収集が行われたため、DOGEが進める措置による影響は限定的だろう。
しかし、その影響は今後数カ月で顕在化するとみられる。ホワイトハウスは連邦政府機関に対し、3月13日までに「大規模人員削減」の計画を提出するよう命じている。
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こうした人員削減の波は失業率の上昇と個人消費の減速を招く恐れがあり、ウォール街にとっては米経済の下振れリスクが増えることを意味する。トランプ大統領の関税政策や移民強制送還も金融市場のセンチメントを支える役割は果たしていない。
パンテオンのエコノミストは「これまでのDOGEの行動は米経済をリセッション(景気後退)に追い込むほどだとは思わない。しかし、労働市場への打撃はすぐに数字に表れるはずだ」としている。
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原題:Half a Million US Jobs Are on the Line as DOGE Fallout Spreads(抜粋)