中嶋常幸から「LINE見てね」 トミー門下生・入谷響のルーツと夢

◇国内女子◇ニチレイレディス 最終日(22日)◇袖ヶ浦CC新袖C(千葉)◇6594yd(パー72)◇晴れ(観衆4060人)

大会最終日の前夜、入谷響の携帯が鳴る。電話の主は師匠の中嶋常幸だった。「LINE送ったから、見てね」。画面を開くと、「明日はなるようにしかならないから、思い切ってやってこい」とあった。4打差首位から4バーディ、4ボギー「72」とドタバタの一日だったことを思えば、まさに的を射た言葉だったといえる。

6歳でゴルフを始め、小学6年生で中嶋が主宰する「トミーアカデミー」に入った。最初の教えは、「ゴルフで一番大切なのはアドレス」ということ。トレーニングの仕方からメンタルの持ち方まで、対話を通して“ゴルフのゴの字”を教えてもらった。「一つのアドバイスを学んで、自分がどういう風にやっていけばいいかを考えられた」と、師匠の指さす方へ走ってきた。

挫折を味わったときも、師の言葉に助けられた。1回目の受験だった2023年のプロテストは合格ラインに1打及ばず。父の勝則さんは、「こんなに泣き崩れるかっていうくらい。練習は毎日していたのに、翌朝声を掛けたら、またブルブル泣き出して」と当時を振り返る。入谷にとっても「一打の重みを一番感じたのがプロテスト」と記憶は鮮明だ。

プロテスト終了後の晩、中嶋と電話をした。「『悔しいはこの日だけにして、切り替えて頑張れよ』と言ってもらえた。翌日の練習はちょっとだったけど、次の日から気持ちを切り替えて」とまた立ち上がることができた。

「響は中嶋プロが大好きなんです。ゴルフを続けてこられたのは、たぶん中嶋プロのおかげ」と勝則さんは言う。歳の差51歳。年齢だけならおじいちゃんと孫という感じだが、信頼は厚い。

愛弟子の勝利を受け、中嶋は「初優勝おめでとう! だけど、おめでとうと言いたくない気持ちもある。何故なら、響の目標に向かって、ほんの一歩に過ぎない。この優勝を足がかりに、更に頑張って欲しい」とコメントを寄せた。

努力が実を結んだ今、「小学6年生から今まで、ここまで長く一緒にいてくれて本当にありがたい」と感謝は尽きない。夢は米国ツアーで女王になること。世界を目指した師匠の血は、脈々と弟子に受け継がれている。(千葉市若葉区/合田拓斗)

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