「ため息」の意外な効果、新研究で明らかに(CNET Japan)
深いため息をつくと、気分が良くなりリラックスできる。そして、こうした深呼吸の後に安堵感を覚えるのには、正当な理由があることが分かってきた。 それは、肺の中にある特別な液体に関係している。その液体、「肺サーファクタント」は肺の働きを助けている。これがなければ、われわれは深刻な事態に陥るだろう。スイス連邦工科大学チューリッヒ校の研究者たちは、深呼吸がこの液体と肺の相互作用に興味深い影響を与えることを発見した。この新しい研究は、科学誌「Science Advances」に掲載されたもので、将来の医療や治療法に重要な意味を持つ可能性がある。 「魔法の」液体が肺を救う 科学者たちは長年、この液体がわれわれの呼吸をどのように助けているのかに関心を寄せてきた。1980年代には、この分野の研究から、肺が未発達なまま生まれた早産児の命を救う治療法が生まれた。 動物の肺から液体を抽出し、それを早産児の肺に注入することで、医師たちは出生直後に発症する呼吸窮迫症候群に対処することができた。この液体は、肺の表面張力を弱める効果がある。 「この表面張力は、肺のしなやかさに影響する」と、スイス連邦工科大学チューリッヒ校のJan Vermant教授は語る。「肺がしなやかであればあるほど、膨張や収縮に対する抵抗が少なくなり、呼吸が楽になる」 深呼吸が緊張を和らげる 研究チームは、この液体が引き伸ばされ再圧縮されるとどうなるかを確かめるため、実験室で通常の呼吸と深呼吸の動きをシミュレートした。 それぞれのケースで液体の表面張力を測定し、データを比較した結果、深呼吸の後には表面張力が著しく低下することが分かった。 この液体が肺に残す薄い膜の最上層は、時間とともに定着し、硬くなる。 「空気との境界線には、少し硬い表面層がある」と、Vermant氏の研究グループの博士課程学生であり、この研究の筆頭著者であるMaria Novaes-Silva氏は述べる。同氏によると、深いため息に伴う肺サーファクタントの顕著な伸縮と圧縮が、この表面層の組成を再編成するという。 つまり、深呼吸をすると、呼吸がしやすくなる。これが、われわれが深いため息をつくと安堵感を覚える理由だ。 スイス連邦工科大学チューリッヒ校の広報担当者によると、臨床現場でも、浅い呼吸が続くと呼吸がますます困難になることが分かっているという。したがって、実験室での測定結果は、現実世界での観察結果と一致しているようだ。 研究者たちは、この研究が成人の肺不全のさらなる解明に貢献する可能性があると考えている。 この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。